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みやきち日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2015-01-11-Sun

"Je suis Charlie"を「私はシャルリーだ」と(だけ)解釈するのは変(※追記あり)

以下、上記リンク先から引用。

フランスではJe suis charlie、和訳すると『私たちはシャルリー(・エブド)だ(追記4:私はシャルリー(・エブド)だ、が正しい訳です。Jeは一人称単数です。失礼いたしました。)』というスローガンが、あの凄惨なテロ事件以来掲げられている。

【イスラム・パリ銃乱射】“Je suis charlie”を掲げることは卑怯な行為だ

はっきり言って、今回の標語は、黒人に対してレイシストスピーチを行ったKKKがテロを受けたときに私たちはKKKだ、ユダヤ人に対してレイシストスピーチを行ったネオナチ団体がテロを受けたときに私たちはネオナチだ、そして、これも極端な話、在日に対してヘイトスピーチを繰り返し行ってる在特会がテロを受けたときに、私たちは在特会だ、と言ってるも同然な話なのだ。

表現の自由を守るための標語として、特にヨーロッパにおいて、これ以上ふさわしくないものはない。

【イスラム・パリ銃乱射】“Je suis charlie”を掲げることは卑怯な行為だ

"Je suis Charlie"を「私はシャルリーだ」と直訳して、そこから論を組み立てるのはおかしいよ。まず、ここでいう"Je suis"の"suis"は、必ずしも「は〜である」を意味する動詞"être"(英語で言うところのbe動詞的なもの)の1人称単数形とは限らないの。動詞の原形が"suivre"(〜の後について行く、来る)でも、1人称単数形は"suis"になるの。つまりこのフランス語は、英語で言うと"I am Charlie"とも"I follow(support) Charlie"とも受け取れる、1種の掛詞になってるわけ。このあたり、非フランス語話者に向けてワシントンポストがくわしく説明しています。

で、ここでfollowまたはsupportされているものとは何か。「シャルリー・エブド」でもないし、ましてやその風刺画でもないですよ。マリ・クレールに端的な説明があります。(以下、大雑把な日本語訳および太字強調はみやきちによります)

"Je suis Charlie"というのは、必ずしも「シャルリー・エブド」のコンテンツに賛成しているという意味ではない。これは、出版されたものや描かれたものに同意しないときでさえ、報道の自由に、表現の自由に、不敬をはたらく自由に賛成するということを意味しているのだ。

que « Je suis Charlie », ça ne signifie pas approuver forcément le contenu de « Charlie Hebdo ». Ça signifie être pour la liberté de la presse, pour la liberté d’expression, pour le droit à l’irrévérence, même quand on n’est pas d’accord avec ce qui est publié ou dessiné.

Lettre ouverte à ceux qui proclament « Je ne suis pas Charlie », et à ceux qui les likent - Marie Claire

これは元記事についた、「パリ在住者」さんの以下のコメントとも一致してますね。

"Je suis charlie”は、シャルリー紙を支持しているわけではない

http://anond.hatelabo.jp/20150110214339

パリ在住者です。

"Je suis charlie”(私はシャルリー)は、私の理解では(そして、それは友人と話していても、またこちらの報道でも)、

「私はシャルリー紙の書かれていた内容を支持します」という意味ではなく、

「シャルリーはここにもいます。シャルリーの編集者を殺したとしても、シャルリー(に代表される表現の自由)は生きています」

という意味だと認識しています。

シャルリーの通常の販売部数を考えると、それほど内容が支持されていたとは到底思えません。

*

こうしたニュアンスを無視して、"Je suis Charlie"を「『私はシャルリーだ』と(だけ)言ってる」と一面的に受け取って、

私たちは在特会だ、と言ってるも同然

【イスラム・パリ銃乱射】“Je suis charlie”を掲げることは卑怯な行為だ

と決めつけるのはあまりにも乱暴すぎ。

上記のようなズレた解釈のもとに、"Je suis Charlie”という標語を「表現の自由のabuse」とまで決めつけ、「真に標語において活用されるべき存在」とやらについて指図し始める元記事筆者の意見には、あたしは同意できませんな。だいたい、どんな人物や物事を標語に掲げるのかもまた、「表現の自由」で保証されるはずなんじゃないの。もちろん、その標語の有効性や適切性に関する議論や批判もまた自由におこなわれてしかるべきですが、"Je suis Charlie"が元記事筆者が想像しているようなネガティブな効力を持つとは、少なくともあたしは思わないです。

追記(2015年1月12日)

元記事にこのようなコメントがついているのを発見。

アラブ人も持てるようなスローガンにしなくちゃ意味ないよ。

持ったら持ったで、他のアラブ人から標的にされそうで怖くて持てなくない?

これほとんど「フランスの文化を守ります」って意味でしょ。

*

ここでいう「アラブ人」の定義が今ひとつわからない(『(フランス在住者も含めて)アラブ系の人全般』? 『アラブ国籍の人』? 『フランス以外のアラブ諸国に住んでる人』?)んですが、もしもこれが「イスラム世界の人々」という意味なのであれば、"Je suis Charlie"というスローガンを掲げてる人はいますよ。論より証拠、まず写真をどうぞ。

「ル・フィガロ」の以下の記事もどうぞ。これはイスラム教徒の読者たちの声を集めたもので、タイトルからして「わたしはイスラム教徒でシャルリーだ」(直訳)です。

「わたしはイスラム教徒で、このような行動(訳注:テロリストたちによるシャルリー・エブド襲撃事件のこと)には反対です!」と、Abdelmounaam Bは宣言した。Lahed Aは、インターネットを席巻しているスローガンをことばに含めてこう言った。「わたしはイスラム教徒で、わたしはシャルリーだ」。Aziz Eは彼の悲しみをこのように表現している。「この編集部で起こった悲劇を大声で非難します。ご遺族に哀悼の意を表します」。

«Je suis musulman et je suis contre ces actions!», proclame Abdelmounaam B. Lahed A reprend le fameux slogan qui a fait le tour d'Internet: «Je suis musulman et je suis Charlie». Aziz E partage sa tristesse: «Je condamne haut et fort le drame survenu dans cette rédaction. Toutes mes condoléances aux familles endeuillées.»

«Je suis musulman et je suis Charlie»

また Les Echos.frは、モンペリエでのテロ抗議デモについて以下のように報じています。

モンペリエでは、地域のジャーナリストと警察が開催したデモ行進で、4万7千人が列を作った。スローガンの中には、「わたしはイスラム教徒だ、わがフランスに手を出すな」、「わたしはシャルリーで、イスラム教徒だ」、「(テロ行為は)アッラーの名の下に許されない」などがあった。

A Montpeliier, 47.000 personnes ont formé un cortège ouvert par les journalistes régionaux et les syndicats de police. Parmi les slogans, "Je suis musulmane / Touche pas à ma France", "Je suis Charlie et musulman" et "Pas au nom d'Allah".

Charlie Hebdo : plus de trois millions de personnes dans les rues ce week-end en province, Politique

というわけで、もしコメント主が「アラブ系(のイスラム教徒)は"Je sui Charlie"というスローガンは掲げられない」と想像しているのだとしたら、「それ、なんか違ってるっぽいですよ」と申し上げるよりほかなさそうです。そもそもこの事件を「アラブ対フランス」という単純すぎる二項対立でとらえるのは無意味なばかりか危険だし、アラブ人(って、具体的に誰?)がフランスの文化を守るアラブ人(誰?)を「標的に」するというステレオタイプも偏見そのものだと思います。

なお、イスラム教徒と"Je suis Charlie"の関係について日本語で書かれたものとしては、以下がたいへんわかりやすくておすすめです。

あと、こちらも必読。