水色石の雑記帳

2018年10月14日

[][]若おかみは小学生!

全くのノーマーク、というかそもそも作品名すらつい数日前まで知らなかったのですが、何やら評判が良いらしいということをいまさらのように聞きつけ、上映が終わらないうちにとあわてて鑑賞してまいりました。


うん、良かったです。「ものすごく感動」とか「大傑作」というような感じではないですが、全方位オール4的に手堅い、老若男女楽しめること請け合いの一作でしたね。以下ネタバレ含む感想です。


可愛らしい絵柄とは裏腹に、優しい両親をいきなり事故で失ってしまうというシリアスな展開。引き取られた祖母の家で「おっこ」こと織子の若おかみとしての奮闘が始まりますが、なによりもまず、おっこが頑張り屋さんなんですよね。前向きで応援したくなる。


ただ、彼女とて普通小学生女子なわけで、表面上はそれほど見せないものの、心中では両親の死を深く引きずっている。それが夢のシーンとして現れてくるわけですが、おっこの中では「本当は生きているんじゃないか」という希望を捨てきれていないと。だから今作はおっこが両親との別れを受け入れるまでの物語と言えるのでしょう。


そしてそんな彼女を支える役割を担ったのが幽霊のウリ坊や美陽。幽霊ありの世界観とは驚きましたが、おっこが大変な日々の中でもくじけずに進んでいけたのは彼らの存在があったからこそで、両親の代役をウリ坊たちは勤めてくれたと言えるのかもしれません。


若おかみとして様々な客に接し、お客さんに喜んでもらえることの嬉しさを知り、同時にお客さんから教えられる優しさもあって、経験を積んでいくおっこ。彼女が町になじみ、自分は花の湯の若おかみであると言えるようになった時に、両親やウリ坊たちとのお別れの時が来るのでした。そのお別れは全然涙涙なものではなくて、前向きなさよなら。爽やかなラストでしたね。


ただ、ラストについてあえて言うのならば「若おかみ」という公的立場自分を閉じ込め過ぎじゃないか、まだ子供なのに自分を殺し過ぎじゃないか、という懸念もなくはありません。でもまあ、人間、時には私的に、時には公的になるわけで、そこのところを上手いこと使い分けておっこも育っていってほしいものです。


おっとそうそう、アニメ重要作画演出について触れてなかったです。と言っても、マッドハウスなのでこちらも手堅い。超絶作画とかそういうんではなく、良い意味子供向けにわかりやすい作りです。コミカルなシーンでは子どもたちの笑いも起きてましたし。


さて本作。上述のように全然知りませんでしたが、児童文学ベストセラーだったのですね。加えてテレビアニメ版もあったとは。TV版は横手美智子さん構成ということで、そちらも気になるところですが、ともあれ劇場版はおなじみ吉田玲子さんです。相変わらずというか上手いなあ。考えてみれば今年見たアニメ映画は「リズと青い鳥」以来ですから、どっちも吉田さんということに。おそらく長い原作をうまくダイジェストしてるんでしょうが、完成度高いです。こうなると原作も気になってくるなあ。


なお、旅館ものといえば「花咲くいろは」を思い出すところ。もちろん、おっこと緒花とでは年齢も境遇も違うわけですが、とりあえず出だしの働き出すところは、半ば強制だった「花いろ」に比べ、一応本作のほうが自由意志でやってる感はあってよかったですね。いやまあ、実際は半分以上ウリ坊に言わされてるんですが、とりあえず周囲の目線としては、おっこの意志尊重するというベースが感じられる。とりあえずそこだけでほっとしますよ。

2018年05月01日

[][]「リズと青い鳥

http://liz-bluebird.com/


瑞々しくて、少し痛くて切ない、少女たちの青春物語


90分という時間的にも、内容的にも決して大作という感じではなく、中編良作という言葉が当てはまりそうな映画でしたが、心に染み入るような一作でした。


鎧塚みぞれと傘木希美。二人の微妙距離とそれぞれの歩みを、「リズと青い鳥」という童話と重ね合わせて描くセンスが素敵です。


さらにそれを生かしていたのが、京アニらしい作画力もさることながら、音の良さでしょう。映画館で観るという行為において、自宅のテレビと最も違うのは音響じゃないかと思いますが、最初の登校シーンでの足音と、それに合わせた音楽だけでやられたって感じです。もちろん、一つのクライマックスと言える吹奏楽演奏シーンでも、劇場メリットは存分に感じられました。家だとあん大音量再生できませんしねえ。


で、物語についてですが、もう余計な口を挟めないような密度でしたので、あらためて語ることもないような気が。でもあえて言えば、二人が「友人同士」であることは間違いなくとも、みぞれにとっての希美と、希美にとってのみぞれは重みが違っていた、ということなんでしょうねえ。それは「大好きのハグ」のところで明確に、そしてみぞれにとっては少々残酷にあらわれてしまっていて。でも、だからといって希美が悪いというものでもなく、二人が喧嘩するわけでもない。みぞれが希美の少し後ろを歩くのも変わらない。ただ、みぞれが少し、希美から離れて羽ばたくことを決めた、そんなお話。良い「ハッピーエンド」でした。



それにしても、なぜスタッフはこの作品に「響け! ユーフォニアム」の名前を冠さなかったのだろう、というのが興味深いところで。最初にこの「リズと青い鳥」のタイトルだけ聞いたときは、まったく別のオリジナルアニメかと思ってましたよ(まあ、それでも山田監督京アニなら見たでしょうが)。ユーフォ名前を関しておけばより分かりやすくTV版のファンを引き込めたでしょうに。


ただもちろん、制作だってそんな事は分かっていたことでしょう。それでもあえて外した。あくまで別作品として存在させたかったということと、加えて、ユーフォのTV版を見ていない層にも見てもらいたかったからでしょうか。


考えてみれば、「違う層に見てもらいたい」という思想キャラデザにもあらわれていますね。どちらかと言うと男性向けの萌え要素が多めだったTV版から少女小説的な、雰囲気の落ち着いた本作へ。平たくいえば、男性向けのTV版と、女性向け、それもキャラと同年代である少女向けの作品にチェンジした、ということなのでしょう。


興行的にはなかなか大きな賭けであるようにも思われますが、良作なのは間違いないので成功してもらいたいものです。ただまあ、全体的には地味めなお話なので、大ヒットというのは難しい気もしますが……。いや、ほんとに頑張ってほしい。

2018年03月18日

[]結城友奈は勇者である -結城友奈の章- 一気感想

Dlifeで始まった再放送が自動録画されていたのを機に視聴です。そもそもこれまで、Dlifeなるチャンネルが有ることすら知らなかったですが、作品自体は知っておりました。「ゆゆゆ」こと「結城友奈は勇者である」。リアルタイム放送時には多分まるっきりスルーしてたと思います。多分、「勇者である」というタイトルコミカルものをイメージしてしまったんでしょう。実際は全然そんなことなかったわけですが。ええと、2014年10月ということはSHIROBAKOと同じ時期ですか。SHIROBAKOってもうそんなに前なのか、と軽くショックを受けます。


1話を見て、おお、これは良作な感じだ、とばかりに毎週待っている気になれず、取り出しましたるはAmazonプライムビデオ。本格的に使用したのは初めてですが、これまでは「PCとかスマホとかじゃないと見るの大変なんでしょ?」という先入観がありました。しかし、PS4のアプリを使用すればTVでも簡単に見られる。しかも、比較の結果Dlifeよりも明らかに画質が良いということで、すっかり感心でしたよ。やるなAmazon。聞くところによるとNetflixはもっと画質が良いとも聞きますが、どうなんでしょうかね。いずれにしてもAmazonプライム会員のコスパの良さは圧倒的ですが。


で、お話です。「讃州中学校勇者部」の面々が世界の危機に本当に変身して戦うことになってしまったよ、というところから、しだいに世界の仕組みが明かされるシリアスな終盤まで。全12話にして中身が濃かったです。しかし、タイトルからはこんなに魔法少女的な話とは想像してなかったですよ。


まず勇者部という物々しい名前は何かと思ったら、実際にはボランティア活動的な部活であったということが冒頭で示されつつ、実はそれは隠れ蓑で本当に勇者となるための人材を集めていたんだよとくる。上手いですね。そして、「神樹様に拝」とか西暦とは違う暦とかで、はっきりとはしないまでも少し不穏な空気を出していくのが良いです。


順調にパワーアップして敵を倒していってというところで、体の不調が出てきたところから一気に不穏な空気に。「大赦」からは治ると知らされつつも、いかにも「これは治らないな」的雰囲気を醸し出していきます。こう言ってはなんですが、風みたいに片目だけならまだしも(とは言え、実際片目が見えなくなったら大変でしょうが)、友奈の味覚とか、樹の声とかは相当にきつい。特に味覚がなくなっては辛いでしょう。


そして明かされる世界の真実。壁の外は人類の敵であるバーテックスたちの領域であり、人類は神樹に「勇者」を捧げることにより生き延びていたのであったと。勇者たちは力を得る代わりに体の感覚を神樹に奪い取られ、いつまでも戦いに明け暮れるだけの日々が待っていると。


この重苦しさと絶望感と言ったら。風が大赦に殴り込みをかけようとしたのも理解できます。というか、むしろそのまま突っ込んでほしかったくらいで。しかし、さらに過激な美森の行動で物語クライマックスへ急展開。それでも、勇者の活躍により世界の危機は救われ、皆、また笑って過ごせるのでした。めでたしめでたしと。


正直、このままバッドエンド、バッドまでは行かないにしろビターエンドに収まるのかと思っていただけに、最後に一気にハッピーエンドに持ってくる力技には驚きました。嬉しい反面、ご都合主義という言葉がでかけますが、よく考えるとこれは、神樹が美森の反抗に肝を冷やしたということなのではないか、ということで僕の中では納得しております。つまり「まずい、こいつらを怒らせると何をされるか分からん」と恐れた神樹が彼女たちのくびきを解いたのではないかと。身も蓋もない発想ですが、辻褄は合うはず。そう考えれば、いたずらに危機を招いただけに見える美森の軽はずみな行動も、ラストの幸福につながっていたんですなあ。


やっぱり勇者の物語にはハッピーエンドがよく似合うのです。勇者部五箇条! なるべく諦めない!


さて、そんなこんなで存分に楽しませていただきました。全体的な印象としては(散々言われているでしょうが)「ああ、これはまどか後の作品なんだなあ」というもの。まどかを意識というか、影響を受けているのは間違いないんでしょうね。ただ、その上で違いを上げるのならば、彼女たちの絆の強さでしょうか。まどかの場合、割と個々に分散しちゃってましたし。あ、あとキュゥべえがいない(笑)。精霊はいましたが、直接的な悪さはしてませんから


あえてキュゥべえ的な存在を挙げるのならば大赦ということになるのでしょうが、ここについてはちょっと描写薄かったですね。一応海&温泉旅行をプレゼントしたり、夏凛の転入を認めたりと、最低限の善意はあるようですが、風の言うとおり、システムのことを伝えないで戦わせるのはひどい話と言わざるを得ず。ここは改革してもらわないとですな。


なお、大赦に限らず、大人の存在感の薄いアニメではありました。友奈の両親とか何やってるんだか全然からない。もっとも、これは狙ってそうしているのでしょう。あくまで中学生女子たちの勇気こそが主題ということで。


原作がタカヒロさん。「アカメが斬る!」好きなんでそういう意味でも波長が合ったかもしれないです。


さて、主人公の話になりますが結城友奈ちゃん。さっき、両親が何をしているかわからないと書きましたが、このネーミングセンスはなかなかです。一見「ゆう」がかぶって下手なように見えますが、韻を踏んでいて呼びやすい。


結局物語を最後に締めたのは勇者の適正値が一番という、彼女の心の強さでした。最初から最後まで良い子でしたねえ、友奈。これが良い子すぎると逆に不自然で嫌味になってしまうものですが、そうならないラインを上手いこと押さえていたような気がしますよ。まあ、一度くらいは一人で落ち込むようなシーンがあっても良かったかなとは思いますが。「おめでとう、そしてありがとう、友奈」です。


さて、これで感想も書けたことですし、次の「鷲尾須美の章」もいってみましょう。幸いそちらもAmazonにあるようですし。それにしても、美森の足とか精霊の数とか記憶とか、上手い伏線だったなあ。うならされましたよ。

2018年01月07日

[]カードキャプターさくら クリアカード編 第1話「さくらと透明なカード」

そのハイクオリティな出来栄えとさくらの可愛らしさで一世を風靡したカードキャプターさくら。1期放映より約20年の時を経てまさかの新作開始とは!


嬉しいような怖いような心地で1話を視聴しましたが、これが予想以上に良い感じであり、至福の一時でした。時の流れを感じさせないキャラクターたちに、良い意味で時代の変化を感じさせる画質の高さ。1期も十分に高い画質だったんですが、それを遥かに超える美麗さではないですか。TVアニメでこれだけ精細度の高い映像って、ひょっとしたら初めて見たかもしれません。


さて、お話の方は原作未読なのでまだなんともですが、中学生になったさくらと小狼と知世たちでした。正直、小学校の制服とあまり見分けがつきませんが……。なぜか透明になってしまったカードをどうにかしていくということで、しっかり知世ちゃん製コスチュームに身を包んだカードキャプターの活躍を堪能できそうでありますね。


OPとEDもグッド。OPは1期を彷彿とさせる部分があり、EDは本編とは一味違う画風が素敵です。


浅香監督はじめ当時のスタッフが揃っているので期待はしていましたが、これなら文句なく、今期一番楽しみな作品となりそうです。


それにしても、中学への通学はローラースケートなしですか。まあ、もともと危険そうではありましたが。

2017年10月15日

[][]Fate/stay night [Heaven’s Feel]

我々は13年待ったのだ―――とでも言うべきところでしょうかねえ。とうとうこの時が来たか、と感慨深いFate・桜ルート、Heaven’s Feel編の開幕です。原作プレイ時に桜はかなり印象に残ったといいますか、応援したくなるキャラだったので、ここでようやく日の目を見ることになるのは嬉しいですねえ。もっとも、このルート自体は長くて鬱陶しくてグログロしいので一度しかプレイしておりません。適度に忘れているのが映画鑑賞上、さらにプラスになりそうです。


てことで、映画の内容ですが、3部作とは言えやはり多少のダイジェスト感はありましたかねえ。そこは原作の長さを考えればしょうがない。もっとも、UBWの劇場版と比べれば全然ゆっくりですが。逆に言えば、ケチを付けられそうなのはその程度で、全体的には大変力の入った素晴らしい出来栄えでした。監督のパンフレットコメントからしても、桜への愛を感じますよ。


構成として、最初に士郎と桜の出会った時期から描き出しているのが良いですね。だんだんと絆が深まっていく二人の姿があるから、桜がヒロインであるということが観客にもすんなりと入ってきます。そして、物語はおなじみの聖杯戦争開幕へと流れていくわけですが、セイバー召喚やランサーとの戦いをほぼすっぱりと省略したのは大英断でしょう。もうそのへんの共通ルート部分はFateファンなら何回も何十回も見ているところですからねえ。初見の人には優しくないかもしれませんが、そこで尺を取っちゃうのはもったいないという判断もあったことかと。


予想以上の迫力だったのがアクションシーンでした。もちろんZeroやUBWでもおなじみのufotableさんなので期待値は高めでしたが、期待以上のすごい画面。特にランサー対真アサシン戦はハイライトでしたね。これが劇場版の力ということでしょうか。「Heaven’s FeelもTVで見たかったなあ」などとぼんやり思ってもいたのですが、こんなクオリティを見せつけられては文句の言いようもありません。あとufotableさん関連で言うと、イリヤとセイバー、そして切嗣絡みのシーンでは、同じ本作がFate/Zeroの正統な後継作品であることを感じさせられたりもして、上手い演出でした。


さて、主人公である士郎と桜。士郎はあの災害のトラウマによって少しねじ曲がった性格になってしまっているわけですが、本ルートでの彼は一番人間味があるというか、比較的普通に見える気がします(まあそれでもバーサーカーに突っ込んでいったりするわけですが)。そしてそんな士郎に思いを寄せる桜ですが、普段の健気さの中に、時折見せる暗さと危うさがなんとも桜なわけです。士郎と慎二のケンカを止めるところの叫びが、普段の、「士郎の前で見せておきたい自分から外れてしまった辛さが垣間見えて切ないといいますかねえ。境遇的にも人気的にも不憫な印象の彼女ですが、とにもかくにも本作メインヒロイン。全力で頑張ってもらいたいものです。


間桐臓硯と真アサシン勢の暗躍、「影」に飲み込まれていくランサーやセイバー。本ルートらしい不穏な空気を残しつつ、物語は次回へ。第2部は来年公開ということですが、来年のいつ頃なんですかね。第3部となるとさらに先になってしまうわけで、気の長い話です。まあ、冒頭に記したようにここまで13年待ったのですから、それに比べればどうということもないですか。まさか本作がここまで寿命の長いブランドになるとは、恐れ入りますよ。