水色石の雑記帳

2018年02月12日

[]「ジャンヌ・ダルク歴史を生き続ける「聖女」」

ジャンヌ・ダルク―歴史を生き続ける「聖女」 (岩波新書)

ジャンヌ・ダルク―歴史を生き続ける「聖女」 (岩波新書)

Fate/Apocryphaジャンヌがフィーチャーされていたので、あらためて関心を抱き、勉強用に読みました。筆者は真摯ジャンヌ・ダルク研究者であり、岩波書店らしい真面目な一冊でしたが、読みやすさも兼ね備えている良著です。


僕の知識としてはだいたい一般的な、「“神の啓示”を受けた少女フランス軍に加わってイギリス軍を追い払ったけれども異端扱いされて火刑になってしまったよ」くらいの少々あやふやものでしたが、本書でかなり知識がしゃっきりした感がありますね。


一番なるほどと思わされたのが、ジャンヌの生涯については伝説的な霧の中にあるわけではなく、ほとんどの部分はっきりと解っているということです。異端裁判復権裁判のところできっちりと記録が残されているため、ある意味では同時代の人の中でもトップクラスに判明しているといえるわけですね。無論、その異端裁判不正でっち上げに満ちたものであったわけですが……。


本書で紹介されるその記録、特に復権裁判での故郷の村の人々の証言を読むと、ジャンヌ普通の、真面目で信仰心の篤い少女であり、村の人々から愛されていたという様子が伝わってきて、感慨深いです。それだけに、なぜその後にあれほどの事をなしえたのかということがやはり謎として感じられてくるのですが。


ちなみに僕は、何十年もあとの復権裁判なのだから形式的ものだったのではないかというイメージでいたのですが、上記のように、生前彼女を知る人々にも話を聞き、優秀な裁判官もつけて本格的にやっていたのですねえ。やはりそれだけ当時の人から見てもジャンヌ裁判インチキだったということなんでしょう。この裁判の実現にあたって、ジャンヌに助けられたオルレアンの人々が尽力したというのがまた泣かせる話ではありませんか。


さて、本書は実際のところ、彼女の生涯を追うというよりは、彼女が当時から現在までどのようなイメージで語られてきたかということを主題とした一冊です。中には、ジャンヌが誰かの傀儡であったとか、実は生き残っていたとか、さらにはただの農夫の娘ではなく王女だったのだというなかなか荒唐無稽な説まで出てきたとか。筆者は源義経の例と対比していますが、個人的には「シェイクスピア別人説」を連想しましたね。そう言えばシェイクスピアに関しても先日新書を読みましたが、これもFate/Apocrypha関係なので、Fate勉強させる力はすごいなあ……。


閑話休題。そんなわけで、彼女の本当のところの不思議である、「神の声」とは何だったのだろうかということや、隠れていたシャルル王太子を探し当て、彼の信頼を得たあたりの奇跡的な出来事についての考察は薄いです。その点についてはもっと別の本でも見てみましょうか。

2018年01月27日

[]「ビアンカ・オーバーステップ

ビアンカ・オーバーステップ(上) (星海社FICTIONS)

ビアンカ・オーバーステップ(上) (星海社FICTIONS)

ビアンカ・オーバーステップ(下) (星海社FICTIONS)

ビアンカ・オーバーステップ(下) (星海社FICTIONS)

あの筒井康隆氏がラノベに挑戦ということで、局所的に話題になったらしい「ビアンカ・オーバースタディ」。そのオーバースタディの二次創作にして正統続編にして新人賞受賞作がこちら、ビアンカ・オーバーステップとなります。僕は賞の界隈には詳しくありませんが、そもそも二次創作新人賞取っちゃうって、前代未聞ではないでしょうか? 確かにオーバースタディ(以下「前作」)のあとがき筒井さんは続編のタイトル(だけ)をにおわしていましたが、それに応えて書いてしまう作者も並大抵のものではありません。後書きによると26歳でこれを書いたとか。やっぱりすごい人はすごいもんですねえ。


で、そんな今作の不思議出自はさておき、中身です。前作の主人公にしてヒロインであるところの北町ビアンカが突然姿を消してしまう。姉を心底愛する妹の北町ロッサは、ビアンカを救い出さんと未来へと跳ぶのでした!


一言で言えばかなり面白かったです。下巻なんかもう一気呵成に読んでしまったくらいには。まず主人公ロッサ彼女はオーバースタディではただの可愛らしい妹キャラ的な雰囲気でしたが、本作では意志の強さと行動力喜怒哀楽とがたっぷり付与された、なかなかはっちゃけた感じのキャラになっていましたね。もっとも、前作の時点で多少そういう要素は見え隠れしてましたし、違和感はありません。ただの「良い子」では終わらない主人公らしい魅力が加わりましたね。無論、姉、ビアンカに対する愛情と執着は前作据え置きとなっております。いや、こちらも前作以上かな?


また、今作は前作よりも相当SF色が強くなってました。タイムトラベル異世界旅行つき。宇宙人未来人、異世界人、超能力者バッチリ出てますね。前作からしてそうでしたが、ハルヒ意識しているところはあるんでしょう。イラストいとうのいぢさんですし。


「最未来人」の魔の手に追われつつ姉を求めるロッサの辿り着く先とは? 読み応えある一作でした。フィクションでこれほどはまり込んだ本も久々かもです。


正直、僕は前作・オーバースタディはそれほど評価してません。筒井さんが書いたという話題性以外はとりわけ見るべきところはなく、まあ、つまらないとまでは言わないまでも、凡庸だったなと言うくらいです。ただ、そのオーバースタディが今作のような傑作を生む土壌になったとあらば、その功績は大きいと言えましょう。う〜む、さすが筒井さん、なのか。


その一方で、本作はどうしても「続編である」ということで敷居が高くなるのがもったいない作品でもあります。一応前作抜きでも読めなくはなさそうですが、普通はしないでしょう。ああもったいない。この内容ならオリジナルでもいけただろうにと思えてしかたないのですが、そこはきっと作者のモチベーションの根幹に関わる部分だったのでしょうねえ。


ともあれ、前作込みでも抜きでも読んで見る価値のある作品だと思いますよ。おすすめです。



で、こっからネタバレ感想なのですが。


実はラスト理解しきれてません。ここがスッキリ頭に入れば掛け値なしに超傑作認定できたのですが、何回読み直しても分かったような分からないような? 「玉虫色彗星」がビアンカ異世界での姿であって、彼女危機ロッサを助けるために急いでいたってことなんでしょうか。でも、だったらその彗星をなんでビアンカが見てるんだろう。もしかしたらそのビアンカビアンカになったロッサだったんだろうか? でも彗星の話は異世界なんじゃなかったっけ、という感じでモニャモニャしております


あと、スカルラットたちが可哀想過ぎてどうもね。彼らを殺し、世界消滅させていくいくロッサについていけない感もありました。いくら創造主であってもねえ。ロッサには、多少性格がくだけても根底のところで「良い子」であってほしかったという読者の願望も込めての感想ではありますが。


から本作で一番楽しかったのは、ロッサアルト未来世界観光しているところだと思うのです。短い間でしたが、ほのぼのでしたね。


作中でも言及されてましたが、紫色のクオリアを思い起こさせる物語でもありました。どちらも傑作ですが、なぜ主人公がそんなに根気と信念と記憶を持ち続けられるのかという点では紫色のクオリアのほうが説明できていたと思います。量子世界でたくさんいる自分たち能力拡張してくれるということで。ロッサ普通人間だったはずなんですが、どこでこうなったのか。僕が読み取れてないだけかもですが、そこがちょっと不思議でしたね。

2017年11月09日

[]「撫物語

撫物語 (講談社BOX)

撫物語 (講談社BOX)


いやあ、本書に出会えて良かったなあ。そんな思いに至らせてくれる「物語」でありました。


とにもかくにも千石撫子です。物語シリーズをほぼアニメで追っていた身としては気になってました。なにせ彼女、なでこメドゥーサとかひたぎエンドとかで散々なことになってしまったではないですか。多くの人を傷つけて、自らも傷ついて。何より暦への恋心すら本当ではなかったようなまとめ方にされて。


これで終わりではあまり可哀想すぎる、という後味だったのですが、ふとしたことでアフターストーリーである本書の存在を知り、急ぎ手に取ったわけなのですよ。


のっけからキャラがブレブレ」とのメタ的自虐ネタが入りつつの撫子の一人称。考えてみれば自分はこれまで彼女の一人称を読んだことが無かったので、新鮮でした。やっぱり一人称だと、阿良々木君目線とかで見た時の第三者感とは近さが違って良いですね。そして、いつのまにやら彼女の友人になっている斧乃木余接。今作ではまさに頼れる名パートナーでありますが、考えてみればいきなり月火をなぎ倒したこともあって、余接の最初の印象は悪かったものです。その後出番が増えつつも基本はただの脇役くらいに思っていたのに、さらに続くこの存在感の上昇はなんとしたものでしょうか。西尾さん余接が好きなんでしょうねえ。


「次の完成原稿に、お前の顔写真を貼った上で、投稿することだ。そうすれば編集部がお前を美少女マンガ家として、祭り上げてくれることだろう」


本筋とは関係ないのに名ゼリフです。


……それはさておき。いろいろあって開き直ったらしく、堂々とマンガ家を目指すことにした撫子。これだけでも以前の撫子とは違うぞというところですが、式神のトラブルを通して過去のいろいろな自分達を向き合い、乗り越えていく、あるいは受け入れていくという展開は、感慨深いものがありました。


まだまだ彼女は未熟で、だめなところもたくさんあるのかもしれません。でも、誰に頼ることもなく自分の力と意思でピンチを乗り切り、そしてあらためて失恋を受け止めた。間違いなく、一歩大人になったお話なのだなと思わされました。


あと、やっぱり撫子の暦に対する想いは恋心だったんですよねえ。軽々しく「恋に恋してただけだ」なんて切り捨てられて良いものではない、と。このことがはっきりしただけでも本書の意義は深い、と思うものでありますよ。


いつの日かきっとひたぎにも、暦にも再会して謝ることができるのでしょう(他の物語でもうしてるのかもしれませんが)。心配ばかりだった彼女未来でしたが、明るさが十分に見えてきました。良かった良かった。


これで本書を読む前は言いにくかった言葉がはっきり言えますよ。


「頑張れ、撫子」と。

2017年08月31日

[]「ラストゲーム」祝・完結(遅い)

ラストゲーム 11 (花とゆめCOMICS)

ラストゲーム 11 (花とゆめCOMICS)

久々に見たら完結してるじゃないですか。あわてて読みました。この作品については以前一度感想を書いてますが、好きなんですよ。


で、最終巻。良いハッピーエンドでしたねえ。いや、本作がハッピーエンドになるのは誰がどう考えても明らかなのでネタバレにもならないと思うのですが、それでも良い。


柳尚人と九条美琴。もう事実上両思いだったことは明らかなんですが、これ以上こじれずに上手いこといって良かった。真面目なところもありつつ深刻にしすぎないのが本作の長所。作者さんも欄外で書いていますが、これは担当さんの力によるところも大きいのでしょうか。


最後は「ゲーム」にこだわらず柳の方から告白するのかなとも思いましたが、やや意外にも美琴からの告白とはね。柳くん大勝利でした(10年かかりましたが)。美琴の照れた笑顔が素晴らしいよお。頑張った甲斐がありましたなあ。もっとも、デレ期が短くて嘆いていた柳でしたが。いや、美琴は表情になかなか出ないだけで心の中では柳のことを大好きで大切に思っているんですよ。きっと、多分。


大団円の結婚式。柳は美琴に新たな「ゲーム」を提示するのでした。美琴を幸せにできたら勝ちかあ。正直、もしかしたら今作最大の問題は「ラストゲーム」というタイトルが無意味になってきていることかもしれないと思っていたんですが(最初は読み切りの予定だったのでしょうがないとは言え)、それすら最後に料理してくるとはねえ。恐れ入りました。末永くお幸せに。


以前にも書いたことですが、少女マンガでありつつも少年マンガ的な魅力もあり、老若男女楽しめるであろう傑作。そもそも少女マンガのラブコメで男子が主人公というのも珍しいですかね。柳の性格が味があってよかったです。他のキャラも悪い人がいなくてほのぼのでした。桃香様は苦労しそうですが……。


それにしても、良い作品を読み終わると、感無量とともにお別れが寂しいです。これ、アニメ化したら人気出ると思うんですけど、どうでしょうかねえ。現段階で話を聞かないってことは見込み薄なんでしょうが、密かに期待してしまます

2017年03月21日

[][]ソードアート・オンライン プログレッシブ(コミック版)


さて、先日見た映画でSAO熱が高まったので買ってきましたよ。「プログレッシブ」のコミック版です。原作小説は読んでないので「そもそもプログレッシブとはなんぞや?」という感じでしたが、どうも最初は飛ばしていた1層から順にアインクラッド編を進めていく企画のようで。


ただし、今作は単なるコミカライズではなく、主人公がアスナになってます。もちろんキリトもたくさん出てきますが、基本的にアスナが中心というのはゆるぎません。そこが良い。


僕はアスナというキャラは好きではありますが、どうも彼女が「完璧なヒロインでありすぎる」ところに少々食い足らなさを感じておりまして。マザーズ・ロザリオ編を経てその感覚は多少緩和されたとは言え、こうしてアスナ視点から物語を見ることで、彼女人間性により深みが出るものと期待しておるのですよ。


もっとも、今作のアスナはどうもツンツンしすぎていて、本編と印象が違う感は否めません。一応理屈的には「デスゲームに巻き込まれたばかりで余裕がないため」ということになるんでしょうが、それを考慮したとしても「もはや別人じゃないの?」という気も。だいたい、最初からキリトと仲良すぎるよなあ、というのも本編設定上からは引っかかるところです。まあ、このへんは原作者も承知の上で矛盾しているらしいんですが、どうしたものか。あくまでパラレルワールドってことなんですかねえ。


なお、妙に印象に残ったシーンは、5巻でアスナがキズメルと入浴するとき、彼女のプロポーションを見て「これは男性が創ったファンタジーだ」と認識するところ。なるほど、NPCだからキャラデザ入ってるはずですもんね。セリフは自動生成かもしれませんが、声についてはやっぱり声優もいるんでしょう。SAO事件の最中、「自分が出演した作品がこんなことに」と嘆く声優もいたかもしれません。メタ的にはアスナ自身のキャラデザも男性だと思うので、「君が言うな」的話であるのがなんとも。アスナのプロポーションも十分良いですからね。


このペースで最後までどれだけかかるのか分かりませんが、のんびり追っていきたい作品です。