深呼吸する言葉・負い目がファンファーレを消した
夕暮れ、終の棲家で息を引き取った老媼。
負い目の夜、屍を引き取る息子夫婦。
大往生のファンファーレは消音されたまま、
寂しき缶詰部屋から魂は脱出する。
深呼吸する言葉・冬なのに夏の回想/小学生の散歩
夏の動脈の中を滾るように鳴いていた蝉。
夜風求めれば、賑わうネオンみたいな虫の音。
月光!月光!と蛙がクラクションを鳴らす。
暗黒の天に粉々のガラスが散らばって涼しい。
手を繋ぐ母に安心感の輪郭が見えた。
深呼吸する言葉・新年に
ときめく心が、色づく命が、
2013年を健やかにするのでしょう。
皆様にご多幸を!!
深呼吸する言葉・嬉嬉
気持の「き」が、
希望の「き」から剥がれないよう、ジェンカを踊る。
どれだけ跳ねたら「きき」となるのだろう。
深呼吸する言葉・水玉風船を放る介護士
ばしゃん!!
しぶきを上げる汚い愚痴の水玉風船。
老人の糞尿を浴びるよりも心にシミがつく。
深呼吸する言葉・野性の証明
日本列島の根元でせめぎ合う四つのプレート。
いちばん自由で奔放な地球の野性は、
いつか此処を「失われた列島」と呼ばせるのだろうか。