貧乏版元のビラ、それと書肆アクセス閉店問題第4報。

mizunowa2007-07-26

【写真】
宮本常一写真図録第1集 瀬戸内海の島と町――広島・周防・松山付近」(周防大島文化交流センター編著/森本孝監修)のビラ。B5判両面刷(写真は周防大島文化交流センター蔵)。いちばん薄くて安い紙を使った。去年の夏頃から、ウチの書店ビラはこのやうな作りになっている。経費をもっとケチる場合には、昔ながらの手貼り版下→コピーもしくはリソグラフで済ませることもある。
夕刻、周防大島文化交流センターのOさんから電話が入る。本の刊行を間近に控えて、町のサイトにビラのまんま掲載しようと思ってスキャンしたところ裏写りして使えなかった、と。そこそこ小綺麗に作ったつもりだが、いかんせん紙が薄いからなー。監修者の森本さん曰く、某河出書房新社の昨年末の書店向けビラと比較して「金力の差」と……。それは事実。あちらは特殊紙に両面2°刷、間違いなくデザイナーも入っている。そりゃあカネかかってまっせ。出版に地方も中央もあるか、と云う人もいるが、やっぱりそれは厳然としてある。
周防大島文化交流センターもウチもないない尽くし。それでも、残るモノを作り上げるために事に仕えるっつーところがミソですがな。何ぞあった時に役場の補助金とか他人の懐をアテにするやうなさもしい根性こそウンコ召し上がれ、だ。そんなのがこの国を覆っている。

ついでに云うと、件の河出書房のビラとは――。宮本常一生誕100年記念企画とて鳴り物入りで事前宣伝しまくった挙げ句、無責任な「責任編者」である木村哲也学芸員(当時)による、小社企画「宮本常一離島論集」(2008年以降順次刊行予定)からの盗作ならびに勤務先の周防大島文化交流センターからの宮本資料無断持ち出しがバレて全6巻刊行中止に至った「宮本常一エッセイ・コレクション」を指す。当然だが、彼のクビはすっ飛んだ(宮本資料持ち出しについてはあえて伏せているが、盗作事件の詳細は1月8日・10日付当blogを参照)。


【さて、書肆アクセス閉店の件】
書肆アクセスの、11月17日限りでの閉店が確定した旨、けふ、お江戸の同業者から聞いた。家主とそのへんで合意した、ということだらう。
今のところ、契約版元や関係者から個別で抗議が寄せられている段階と聞く。小社も、21日付当blogのプリントアウトを「抗議文」として23日朝ファクス送信した。それに対し「みずのわ出版御中 前略「書肆アクセス」閉店に対する、ご意見うけたまわりました。ありがとうございます」という、川上社長による、本文わずか2行の簡潔かつ事務的なファクス返信が返って来ただけ……である。あらゆる抗議や意見に対し、すべからくこのような対応をとっていると聞いた。まず書肆アクセス閉店ありきなのだから、こうなったら契約版元の側の、次なる展開が不可欠になってくる。

兎も角、今の場所で、今のままの書肆アクセスを続けるという芽は、ここで断ち切られた。しかし、一契約版元として何度も云うやうだが、ただ単に赤字を理由に書肆アクセスを閉めてそれで問題は解消されるのか、それにかわりうる新たな展開を用意しているのか、といえば地方小は何一つとして提示していないわけである。まさしく紙切れ一枚、まったくもって説明責任を果たしていない。
ある同業者と電話で話をした。それをもとに私なりに大雑把にまとめたのが、次の箇条書き。

(1)現実的に、今の店舗の場所で書肆アクセスを続けるという選択肢は消えた。
(2)「書肆アクセスの機能」の代替を大型書店に求めるのは無理。アンテナショップを閉ざしてはならない。
(3)地方小のアンテナショップは、神保町にあらねばならない。都内でも、他の地域では決して成り立ちえない。
(4)現実策として、一旦市ヶ谷の地方小倉庫に引っ込むという形にしたうえで、可及的速やかに神保町で現在地より安い物件を確保して書肆アクセスを再開しなければならない。
(5)赤字を騙しだまし運営しているのは、書店、版元とも変わらない。地方小の説明はまず書肆アクセス閉店ありきで、それでも書肆アクセスを維持するという努力をしてきたとは到底思えない。
(6)兎に角、先の展望すらない「書肆アクセス閉店ありき」の姿勢は、断固として容認できない。(4)に記したとおり、書肆アクセスを神保町から消し去ってはならない。
(7)それを維持するためにも、地方小の売上を増やす必要がある。契約版元の売上増は、地方小の売上増とも繋がる。そのためのフェアを各地で企画し、書店に足を運んでもらう状況をつくるべき。


これまたしつこいやうだが……書肆アクセス閉店→大型書店を以てしてその機能を代替……という論は、地方出版、零細出版、そして町の本屋の全否定にほかならない。同時に、それは「地方小」自体の全否定にもつながる。身も蓋もないけれども、極論してしまえば地方・零細の版元なんて不要なんですワ。市場に大量にタレ流すことだけ考えたら、大手の方が絶対にええんだから。ぢゃあ、何でウチみたいなボロ家が持ちこたえとるんや。さあ、そこぢゃ。問題は……。