きまぐれ社会批評(松尾圭ブログ) RSSフィード

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2010-08-11

死刑制度についてのまとめ

死刑制度についていろいろと議論できたので,論点をまとめました.

ついでに,これがhatenaでの初めての日記です.

議論の前提

まず、「国家による殺人」という重大な事案を議論するにあたっては、その必要性について明確な検証がなければ、存置すべきではないとしています。

刑罰の意義

私は、刑罰には予防の効果、つまり「抑止」と「再犯防止」の効果を求める必要があると思っています(前者を一般予防論、後者を特別予防論といい、両者をあわせて目的刑論と呼びます)。そして、刑罰とはいわば「国家による暴力」であるので、これらの効果が認められる最小限に抑えるべきだと考えています。それに対し、復讐の効果を考慮する論(応報刑論)は、採るべきでないと考えています。なぜなら、復讐とは被害者感情によるはずですが、下で述べるように、それは一様ではなく、また遺族の有無などによって変化するものであり、刑罰を不公平にすると考えていること、そしてこちらも下で述べるように、とくに殺人罪の被害者遺族は「刑罰の種類」によって納得するものではないからです。

犯罪率の比較

犯罪率の比較は非常に困難です。それは、単に死刑の有無だけでなく、その他の刑罰の重軽や検挙率、文化、宗教、生活、さらには何を犯罪と規定するかにまで及ぶからです。そのため、死刑の有無と犯罪率を単純に国別に比較するのは意味がなく、比較するのであればきちんと他のパラメータをそろえる必要があります。単に,「日本は死刑制度があるから治安がいい」という結論は導くことはできないのは,死刑制度があっても治安が悪い国や地域があるという理由の他,治安の良し悪し自体を比較するのが困難であるという理由があります.

死刑抑止力になるか

死刑抑止力につながるかどうかですが、これを立証する有力な論はまだ見たことがありません。死刑を廃止した国において、有意に犯罪率(または殺人率)が上がったという調査はあるでしょうか?日本について歴史的に見れば、殺人が大きく減ったのが1950年代後半からで、1990年以降は低位で推移しています。それに対して、厳罰化の方向性に大きく傾いたのは主として2000年代です。また、アメリカ合衆国の州ごとの比較では、「死刑廃止をした州の方が存置の州より有意に殺人率が低い」(死刑制度の廃止に抑止効果がある)というものと、「有意な差はない」という論文がでています。

被害者感情

当事者でない多くの人が、勝手に被害者感情を代弁できている気になって「復讐こそ正義」という意識になることは危険であると思います。犯罪被害者になってからも死刑廃止を貫いた人や、犯罪被害者になったために死刑廃止を訴えるようになった人もいるのですが、かれらはそのようなステレオタイプに、逆に苦しめられています。また、被害者に対するアンケート調査を見ていると、加害者が死んで納得ができるということではなく、むしろ死刑を望む人も「加害者の反省と謝罪」を望んでいることがわかります。この件に関しては、被害者遺族である原田正治氏の発言が参考になりました。

被害者の保護

日本において、犯罪被害者に対するサポートは、圧倒的に不足しています。自身が、または身内が被害にあったことで、精神的、経済的な打撃を受けるということが多いようです。このような場合、精神的、経済的に安定するには、時間をかけて、きめ細かに対応することが必要ですが、日本にはその制度はほとんどなく、生活苦に陥る犯罪被害者の方は多くいます。被害者のためのサポート体制を整えることは、緊要な課題であると思っています。

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