きまぐれ社会批評(松尾圭ブログ) RSSフィード

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2014-06-27

無期懲役

この記事は、2007年6月12日にmixiの日記で公開した文章の再録です。

私自身もそうでしたが,一般に無期懲役は長くて10数年で刑務所から出てくると考える人が多いようです(よくいわれる数字は7〜10年).マスコミでもそのようなプロパガンダが行われています.また,「日本には終身刑がない」として「死刑無期懲役の間に大きな較差がある」とか「死刑を廃止するなら終身刑を創設しなければ」とかという意見もよく耳にします.実際はどうなのかを,外国(主にヨーロッパ)の状況とも比較してみていきます.

まず,日本における無期懲役とは「期間の定めがない懲役」ではなく「満期がない懲役」のことです(無期禁錮(*1)も同様).そのため,生涯を通じて刑の執行が終わることはありません.そして,そのような刑罰を「終身刑」とよびます.ただし,たとえば日本の刑法でいえば,無期懲役の場合は10年たった段階で仮釈放することができることが定めてあります(*2).未成年の場合は7年です(*3).これらが,「無期懲役は意外と短い」という根拠になっています.ちなみに,有期懲役は最大30年まで課すことができますが,刑期の三分の一を経過した後で仮釈放ができることになっています(*2).日本では,「仮釈放のある無期刑は終身刑とよばない」とマスコミに宣伝されているため,そう思っている人も多いですが,基本的には無期刑のことを終身刑とよびます.

では,無期懲役の実際の運用はどうなっているのでしょう.実は,そんなに早く仮釈放されることはありません.たとえば,2005年に仮釈放された無期懲役囚は10人いますが,平均在所期間は27年2か月となっています.2000年から2005年の6年間では,仮釈放者数51人のうち,20年以内で仮釈放されたのは3人です.ちなみに2002年の時点で一番長く服役している無期懲役囚は52年10か月で,今も生きていれば58年も在所していることになります.それがどのような人物なのかはわかりませんが,たとえば1946年に20才で殺人を犯したとして,1949年無期懲役が確定,それから今まで刑務所にいるとすれば,現在80才くらい.意外と長いですね.ちなみにこの無期懲役囚は城野医療刑務所(現在の北九州医療刑務所)に入所しています(*5).

最近は,仮釈放自体が認められにくくなっていることも指摘しておきます.1980年から1984年までの5年間で仮釈放されたのは292人となっており,2000年から2004年までの5年間では41人となっています.また,死刑求刑され無期懲役となった者に対しては,検察が「マル特」という通達を刑務所に出すことがあり,その場合は仮釈放自体が難しい状況です.このような中では,さらに在所期間が伸びていくだろうということは容易に想定できます.

次に,「仮釈放(*6)」についても説明しておきます.「仮釈放」とは文字どおり「仮の釈放」のことです.刑期を終えて釈放されるのとはまったく違います.罰金以上の刑に処せられ,または遵守事項を守らないときなどは,すぐに刑務所に戻らなければならないからです.また,仮釈放中も保護観察下におかれ,保護観察官の指導や助言により更正に努めなければなりません(*7).これを刑務所内での「施設内処遇」に対して「社会内処遇」といいます.つまり,仮釈放されても許されたというわけではないということです.

最後に,外国の事例を少しだけあげてみます.最初に書いたように「死刑を廃止するなら終身刑を」ということをよく耳にします.ここでの終身刑とはほとんどの場合,仮釈放のない終身刑(絶対的終身刑)をさしていると思われます.よく知られているようにアメリカでは絶対的終身刑が存在しています.そのほかにはオーストラリア,イギリス,中国などがあげられます.ちなみにデンマークは絶対的終身刑がありますが,恩赦制度が充実しており,平均して16年程度で釈放されます.それ以外のヨーロッパの大部分の国では絶対的終身刑はなく,日本の無期懲役と同様の「仮釈放のある終身刑相対的終身刑)」が最高刑となっています.死刑制度もそうですが,絶対的終身刑もほとんどの国で採用されていないんですね.

まあ,こんなカンジで無期懲役には誤解が多いということがわかってもらえるといいなと思いました.てか,私自身が大きく誤解していて,今回の日記を書いたわけですけどね(笑).


(*1) 懲役とは労役を課す刑で,禁錮とは課さない刑(刑法12条,13条).

(*2) 刑法第28条.「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。」

(*3) 少年法第58条.「少年のとき懲役又は禁錮の言渡しを受けた者については、次の期間を経過した後、仮釈放をすることができる。 一  無期刑については七年」

(*4) 刑法第14条

(*5) 第154回国会法務委員会,山花郁夫議員の質問に対する鶴田政府参考人の答弁.

(*6) 刑法29条

(*7) 犯罪者予防更生法第33条

2011-05-19

福島みずほと市民の政治スクール「沖縄基地問題・普天間基地のゆくえ」

夜は、福島みずほと市民の政治スクールに参加。前宜野湾市長の伊波洋一氏を講師に「沖縄基地問題・普天間基地のゆくえ」について伺いました。都会のために地方に押し付けるという意味で、基地と原発の共通点があることを再認識しましたが、原発は法的に手続きを取られたのに対し、基地は戦時の混乱時に米軍に接収されたという相違点もあるという話もあり、沖縄における基地問題の根深さを考えさせられました。

2010-08-11

死刑制度についてのまとめ

死刑制度についていろいろと議論できたので,論点をまとめました.

ついでに,これがhatenaでの初めての日記です.

議論の前提

まず、「国家による殺人」という重大な事案を議論するにあたっては、その必要性について明確な検証がなければ、存置すべきではないとしています。

刑罰の意義

私は、刑罰には予防の効果、つまり「抑止」と「再犯防止」の効果を求める必要があると思っています(前者を一般予防論、後者を特別予防論といい、両者をあわせて目的刑論と呼びます)。そして、刑罰とはいわば「国家による暴力」であるので、これらの効果が認められる最小限に抑えるべきだと考えています。それに対し、復讐の効果を考慮する論(応報刑論)は、採るべきでないと考えています。なぜなら、復讐とは被害者感情によるはずですが、下で述べるように、それは一様ではなく、また遺族の有無などによって変化するものであり、刑罰を不公平にすると考えていること、そしてこちらも下で述べるように、とくに殺人罪の被害者遺族は「刑罰の種類」によって納得するものではないからです。

犯罪率の比較

犯罪率の比較は非常に困難です。それは、単に死刑の有無だけでなく、その他の刑罰の重軽や検挙率、文化、宗教、生活、さらには何を犯罪と規定するかにまで及ぶからです。そのため、死刑の有無と犯罪率を単純に国別に比較するのは意味がなく、比較するのであればきちんと他のパラメータをそろえる必要があります。単に,「日本は死刑制度があるから治安がいい」という結論は導くことはできないのは,死刑制度があっても治安が悪い国や地域があるという理由の他,治安の良し悪し自体を比較するのが困難であるという理由があります.

死刑が抑止力になるか

死刑が抑止力につながるかどうかですが、これを立証する有力な論はまだ見たことがありません。死刑を廃止した国において、有意に犯罪率(または殺人率)が上がったという調査はあるでしょうか?日本について歴史的に見れば、殺人が大きく減ったのが1950年代後半からで、1990年以降は低位で推移しています。それに対して、厳罰化の方向性に大きく傾いたのは主として2000年代です。また、アメリカ合衆国の州ごとの比較では、「死刑廃止をした州の方が存置の州より有意に殺人率が低い」(死刑制度の廃止に抑止効果がある)というものと、「有意な差はない」という論文がでています。

被害者感情

当事者でない多くの人が、勝手に被害者感情を代弁できている気になって「復讐こそ正義」という意識になることは危険であると思います。犯罪被害者になってからも死刑廃止を貫いた人や、犯罪被害者になったために死刑廃止を訴えるようになった人もいるのですが、かれらはそのようなステレオタイプに、逆に苦しめられています。また、被害者に対するアンケート調査を見ていると、加害者が死んで納得ができるということではなく、むしろ死刑を望む人も「加害者の反省と謝罪」を望んでいることがわかります。この件に関しては、被害者遺族である原田正治氏の発言が参考になりました。

被害者の保護

日本において、犯罪被害者に対するサポートは、圧倒的に不足しています。自身が、または身内が被害にあったことで、精神的、経済的な打撃を受けるということが多いようです。このような場合、精神的、経済的に安定するには、時間をかけて、きめ細かに対応することが必要ですが、日本にはその制度はほとんどなく、生活苦に陥る犯罪被害者の方は多くいます。被害者のためのサポート体制を整えることは、緊要な課題であると思っています。