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2011-01-18

Innovation Sprint 2011 野中郁次郎先生の基調講演メモ

「Innovation Sprint 2011」 基調講演 野中郁次郎先生の講演メモです。

テープ起こしをしていませんので、間違っているところもあると思いますし、補った言葉が間違っているかもしれません。また、編集の過程で順序が変わってしまったところもあると思います。

会場の風景およびスライドなどは、スクラムの生みの親が語る、スクラムとはなにか? たえず不安定で、自己組織化し、全員が多能工である 〜 Innovation Sprint 2011(前編)の記事に載っています。僕の記事より読みやすいです。


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基調講演 「Roots of Scrum」一橋大学 名誉教授 野中 郁次郎

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今日は、イノベーションを生み出す組織について話をします。

ドクター・サザーランドと会うことができて光栄です。

20年近く眠っていた論文をジェフ・サザーランドが蘇らせてくれた。

感謝しています。


彼のキャリアをみると、パイロットなんですね。ベトナム戦争で実戦経験あり。


スクラムの話も軍事組織の研究からなんです。

スクラムの源流は、軍事組織の研究。

なぜ負けたのか? どういう戦い方をしたから負けたの? 失敗の本質は?

こんなことを防衛大学校で4年間ぐらい研究していたんです。

日本軍の敗戦の原因を探っていました。


私は何冊か本を書いていますが、一番のベストセラーは「失敗の本質」で、

次が「アメリカ海兵隊」。

本業の本は売れてない。副業で儲けていると。(笑)


過去の成功への過剰適応。成功は失敗の元。

日露戦争の成功体験が消えない。

これがしみこんでいて、自己否定できなかった。

人は成功することで、そのやり方が正しいと信じ込んでしまって、

その後の環境の変化に対応できないもの。

それが組織の研究にどのようにして繋がるのか。


真珠湾攻撃はイノベーションをやったわけなんです。

だまし討ちとか言われていますが、真珠湾攻撃というのはイノベーションなんです。

山本五十六が、大艦巨砲の時代に航空戦力重視。


彼は頭の中で描いたのではなく、航空隊の実体験がある。

航空隊のところに行っているの彼。

その経験から飛行機が重要になるのではないか。

航空母艦を中心とした、飛行機と組み合わせをした、

そういう戦い方をして、大きな戦果を挙げた。


でも、山本五十六という人は非常な寡黙な方で、

きちんとしたコンセプトにまとめていなかったんです。

残していないんです。


このような戦い方を概念化して、ハード、ソフトを作りあげたのがアメリカ海軍。

失敗は成功の元。


「失敗の本質」の次に売れている本は、「アメリカ海兵隊」という本です。

太平洋島々の攻防が大事になってくる。

そのとき、最初に島を取りに行く組織が海兵隊。

水陸両方を持っている軍隊。

海から陸を攻めて島をとるという大事な部隊。

これは難しい。水陸空があるということは大変困難な概念なんです。


アメリカ海兵隊の例。

歩兵隊を戦闘機が支援します。

陸上の歩兵が敵の大部隊に強襲されても、空から支援があれば大丈夫。

陸海空のタスクフォースで組むのです。


空と陸と海という違う人たちがチームを組み、あらゆる関係部隊が協力します。

様々な部隊が一体となってプロジェクトを遂行する。


何が大変かって、時間軸が違う。

空と陸という、時間軸の違う人たちが一緒に戦うということ。

歩兵は時速5キロ、戦闘機乗りはマッハ。

飯の食べ方からして違う。


一般の組織に当てはめますと、製造、マーケティング、開発という目的も時間軸も違うチームが一体となって動いているということ。


このような問題意識で、日本の新製品開発の研究を始めました。

そこから、出てきたのがスクラムアプローチ。


それぞれのファンクションがサイロ状態になっている。

一部分が一緒になるのが刺身。

刺身状態からガッチリ組んだスクラムへ。

最後に一体になるのがスクラムだ。


典型的なスクラム開発はホンダのシティ、富士ゼロックスの複写機。


このスクラムにカオスの理論や複雑系などの関連分野をいれて理論化したのが、

ドクター・サザーランドです。

私は知らなかった。

俺はソフトのこと知らないんだ。

コンピュータ使わないから。パソコン触るのは秘書の仕事。(笑)


昨年、平鍋さんがアジャイルの中にスクラムというのがあって、

このスクラムは、あなたがいったことが元になっているんですよって教えてくれまして。

アジャイルスクラムというシステムをドクター・サザーランドが開発しているんだと。

1986年の論文、20年以上眠っていた論文が復活したんです。


スクラムは何のために組むのか。

それはイノベーション。

知の創造だ。

知識創造理論ということを開拓して、世界に発信しています。


ドラッカーが21世紀は知識社会だと言っています。

富の製造過程の中に、知を入れる。

会社は知識創造体、知識を知恵にまで高めるまでマネージする必要がある。

しかし、経済資源として、知識がどのように蓄積・配分・使用するかは、

まだ完全にはわかっていない。

それを研究しています。


企業とは金儲けのマシンではなく、知識の創造体なんだ。

このような主張をしたわけです。


最近、マネージングフロー「流れを経営する」という本を書きました。

一言でいうと、「知識を磨いて、知恵化する」

電車の中では読めないように、意図的に400ページの本にしました。

世の中ハウツーばやり。

まじめに正座をして読んでくれよ。そんな気持ちもあって。

売れないよと言われましたが、それはわかって出したんですけど。(笑)

やはり売れてない。時代の流れには逆らえなかった。(笑)


レスター・サローが知識主体に移っている。米国の方に移っている。

米国の方がイノベーションに向いているよと。

産業主体から知識主体の経済に移っていると。

日本にはゲイツ、ジョブズみたいなのがいないじゃないかと。

わくわくするものは米国が作っている。

わくわくするものは日本にないではないか。

と言っていまして、


しかし、私はそれに賛同しているわけではない。

一点だけ言えるのは、日本は変化をしかけるスピードが、他国に劣っているように見える。


イノベーションの本質は何か。

イノベーションは、技術やモノではなく新しい価値。

モノを媒介としたコト。

イノベーションは、新しい価値の提供。

モノや技術を提供することではない。

モノの関係性を構築するコト。

価値を組み込んだモノを人は買う。


iPadはCPUやディスプレイの集合体ではない。

それを使うことの価値を組み込んだ商品である。


コトというのは関係性をつくると。

新しい関係性を生み出す。


iPadを使って自慢する。コミュニケーションする。

このような価値を組み込んだプロダクトだから買うんだ。


知識というのは関係性。

関係性を読み取るには想いがないとだめ。

それは情報とは違う。

知識の最大の特質。関係性の中で作る。


人やモノや環境などとの関係性で作るものであって、そのときの文脈が大事。

それによって価値が変わる。


コト作り。

それはモノが重要ではないと言っていない。

知識創造とはコトを作り出すことですが、モノが大事でないとは一言も言っていない。

モノを媒介としたコト作り、と言っています。


知の創造のプロセス。知の創造力。

暗黙知。スパイラルアップ。

そのような考え方をモデル化したのがSECIモデルです。


イノベーションはSECIモデル。

顧客になりきり(共同化)、

その本質を考えぬき(表出化)、

体系化し(連結化)、

コトにする(内面化)。

SECIを高速でまわすこと。

┌─

│共同化 = 気付きが起こる

│表出化 = 言語化していく

│連結化 = スペックに落とす、分析する

│内面化 = 実践を通じて言葉を形に

└─


SECIの高速回転が創造性と効率性をダイナミックに創出させる。


現実を共感する。

自己を越えて、顧客になりきって、

本質、エッセンスは目にみえない。

気づきが必要。

そのコンセプトを関係づけて、理論化する。

それを技術・サービスに価値化していく、

内面化していく。


企業の理論の中に組み込みますと、駆動させる価値命題。

知識資産。

絶えず環境と相互作用していく。

さまざまな組織体が、知のグローバル・エコシステム。

知を総動員する。


同時に、ホワイトヘッド。

世界は関係性、動詞である。

世界はコトからなる。関係性で成り立っている。

コトのことをイベントといいます。

プロセスということが大切。


創造のために、

ただ「ある」だけではない、時々刻々「なる」んだ。

我々は絶えずbecomingな存在。


なにがしか変わってくると、多少貢献したのかな。


モノは重要だよね。

プロセスは見えないからね。

モノを媒介して、プロセスが生き生きしてくる。

経験の質を高める、知の総合力を支援していくプロセスの質が大切。


イノベーションは、研究開発費との相関はない。

プロセスのクオリティと相関がある。

時々刻々変化する中で、リーダーがどのような判断をするのか。

このような点と深く関わってくる。


我々は場と言っていますが、場とリーダーシップをまとめてみたい。

場を絵にするとこのようになる。


イノベーションを支援する場作り。

場を繋ぎながら「知」を総動員する。

プロセスの本質は未来に向けた創造的統合。


場と言えば、我々は世界で発信するとき、BAで発音しています。


私の発音ですと、Barに聞こえるようでして、イギリスなんかで話をしていますと、

「おまえはよくわかっている」(笑)


Barで知が生まれる。生きた文脈を共有する。

俺達の仲間だ。(笑)

と、こうなるわけです。


場であります。

場とは、共感された文脈、共有されたモノ。

生きた文脈の共有の状態。

異なる想いや主観を共有して客観化する。


知というのは真空では作られません。


同じ組織内の人間、顧客、サプライヤ、競合、大学、行政などとのやりとり、関係性の中で、

異なる主観の人達と、主観の限界を超えて知を創造していく。

みんなの主観を作るのが場。

みんなの主観を共有していく、客観化していく、総合していく、

そのような社会的な仕組みの中で知は作られる。


想いが言葉に、言葉が形に。

社会の知が創出されていく。

組織的に知を作る。


総合はまとめるではなく、弁証法でいう総、より高い次元で、アウフヘーベン、スパイラルアップ。


難しい話ではありません。

他者との関係性の中で、自分とは異なるそれぞれの主観をみんなの想いにする。

相互主観性、インターサブジェクティビティ。

みんなの主観にしていく。一人の主観を超えていこう。

これを実現するのが場です。


場というのは重要な役割を果たします。


みんなの主観性を作り出すには、身体が触れ合わなければだめ。

身体が触れることが重要。

身体と身体が共感する。

メルロポンティが言っていましたが、身体知。

身体が共感するということ。


右手が左手に触れている。でも時間が経つにつれて、左手が右手にタッチする。

右手が左手に触れる経験、左手が右手に触れるに変わる。

相互に変換できる。

タッチング、触れ合いが重要。


「ミラーニューロン」によって、同じ動作をすることで相手の意図が読める。

ソシアライゼーションが大事だというのが科学的にもわかってきたと。


たくさん知があって組み合わせるというのは、単なる情報であって知ではない。

人それぞれの主観、その主観がそれぞれ主観であるかぎり、知ではない、

客観を心がけ、限りなく近づいていく。

互いに話をしながら、共有化していく。

自分の心を通じて他人を発見できる。


ホンダのワイガヤがそのような仕掛け。

場を身体的、精神的に共有することが大事。

三日三晩泊まりで飲むとうわべがなくなって人同士が向き合う。

よい宿とよいご飯とよい温泉。

重要なことは、よい宿、よい食事、よい温泉。これ絶対必要。

高い宿でなければダメ。

ちまちましたところでは、高質な知は生まれないよ。

直感だけどね。(笑)


浅はかな知、うわべの形式知は2時間がせいぜい。

枯渇します。

形式知の専門家である学者だって、2時間が精一杯。

無理だもん。(笑)


徹底的にやりますと、みんなぶつかり合います。

そこまでくると、お互いの違いがわかる。

全身的な知で向き合います。

逃げ場もない。

全人的に向き合う。


想いは同じ、哲学は一緒、やろうじゃないか。

自己を超える相互主観の創造性、自己の枠を越えた相互主観。

知を出し合って、このような仕組みを作った。


場から生まれた発想を昇華させるのが大事。

場に参加し、他人との関係性の中て自己認知をすることが知の創造につながる。

もっともクリエイティブな状況が生まれる。

でも、そのような環境を作ったからと言って100パーセントの保証はない。

リーダーとか、メンバーとかの問題はある。


さらにそういう場を全社にひろげる、

組織間に広げて大きな知に持っていくのが知の重層的展開。

場を全組織的に広げる。

このような中からトヨタのプリウスが生まれたんだ。


新しいアイデアを横展開する。


日本の企業もサイロをぶち破るようになってきた。

クロスファンクション、水平型リーダーの重要性。

グローバル展開も、プロジェクトベースでやっていく。

ハードとソフトが同じ部屋でわいわいやっていく。


ちょっと前まで元気がなかった日立も、最近は元気でして。

知的創造社会、現場の知をどのように活用するか。

これが豊かなイノベーションの源泉だというようになってきています。

それをいかにシステム化できるか。

人間中心設計など、トップ主導でやり始めました。


日本企業は、中長期の経営が特色。

膨大な知が蓄積されている。

ポテンシャルはあるんだ。

そのポテンシャルを追求していく。これが課題であろう。


もう一つ。リーダーシップ。

フロネシス。フロネティックリーダー。

最初、フロネシスって言ったら、

「風呂に入って死ぬのか(風呂、寝、死す)」って言われまして。(笑)


フロネシスというのは、賢人の思慮、賢慮のことであります。

個別のその都度の状況とコンテキストの只中で、最善の判断・行為ができる。

これが実践知。

フロネシスは、個別具体な、万物流転の中で最善のジャッジメントをする。

単なる経験ではなく、哲学が重要になる。実践のみならず教養が必要。


関係性の中で判断する。

タイムリー、時間軸の中で考える。


コモングッド。世のため人のため、真善美。

コモングッド・世のため、人のため、きちんとした想いを提案していく。

マイケル・サンデルという人がいまして、

彼はコミュニタリアン(共同体主義)でありまして、共通の価値を追求していこう。

グッドということを議論しよう。

青臭いことを議論しよう。

俺たちの主観、いいと想ったらやろうよ。

彼の原点はアリストテレス。


トップミドルを含めまして、プロジェクトリーダーを分析しましたところ

今のところ6つぐらいの能力が必要なのではないか。

1.「よい」目的を作る能力

2.場をタイムリーに作る能力

3.ありのままの現実を直観する能力

4.直観の本質を概念に変換する能力

5.概念を実現する能力

6.実践知を組織化する能力


現実を直視して本質をつかみだし、本質を概念化していく。

関係性を変えていく。

このような人間力です。


このような能力を備えた人、典型的には本田宗一郎です。

まさに、現実を直感して本質をつかみだし、そこから未来の構想を描く。


この写真を見てください。

絶えず目線を同じにしています。


現場に立って、ライダーの目線を合わせながら、直接経験をしています。

同時に、ある種の意図、仮説、次の創造力といいますか、

まさに、仮説生成の前段階として、個別の本質を洞察するということを

日常よくやっていたと。


そのような考え方、それぞれ、場のマネジメントが大切。

すべてを関係性で考える、

モノではなくコトで考える。

有機的な関係を作る。

関係性を読み解く、これが大切。

thing と event

アブダクションを使っている。

言語能力を問われる。


現実歪曲空間。


できないんじゃないかと思っていることをできると錯覚させる能力、

曲げて引き込むという能力がある。

不屈の精神で進む。

全身で語る。カリスマ的レトリック。

できないと想っているけど、ひょっとしたらできるんじゃないか、そう思わせる能力です。

本田宗一郎の口癖「やってもみんで。」

やってみなければわからない。


「大丈夫か?」が流行っていますが、

「大丈夫か?」は、論理的に答えられないんですね。(笑)

リーダーはホラを吹いてでも、大丈夫だと言おう。

「大丈夫だ、やりながらわかるんだ」と。

やっぱ明るく行きたいよね。


組織的総合力。


どうしたらそういうリーダーになれるのか。

修羅場経験が重要になります。

リーダーには、困難を乗り越えた経験や失敗した経験が必要。

学問としては教養。

優れた人間と働く。

アジャイルスクラム、近代的な徒弟制度ではないか。

しかもチャレンジ。


スクラムを組むというのはいいんじゃないですか。


ミドルアップダウン

トップダウンとボトムアップが同時に動くこと。中間に位置するのがリーダー。

概念と現場を行き来する、ミドルアップダウン


最後にまとめます。もっと簡単に言いますと

知的体育会系

Embodied Mind

動きながら考える。