雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

画質とデバイス対応でYoutubeを急追するDivX Stage6

DivXYoutube対抗とも取れる動画アップロード・サービスStage6を発表した.雨後の竹の子のように様々な動画配信サービスが立ち上がる中,Stage6を際だたせる優位性は画質だ.
SDでさえ酷い画質のYoutubeに対し,Stage 6はHDに引き延ばしても鑑賞に堪える画質となっている.いくつか高画質なコンテンツをピックアップして調べたところ,HD鑑賞に耐えうるアニメ・コンテンツでビットレートは約500Kbps程度と,オンデマンド配信に耐え得る軽さを誇る.*1
動画圧縮技術をFlash Videoに依存するYoutubeに対し,DivXは自社でエンコーダ・デコーダ技術を持つ.Stage6のビジネスモデルは広告だけでなく,この配信サービスが普及することで自社コーデックのライセンス販売など波及効果を織り込んだものになるだろう.DivX社はDVDプレーヤなど家電製品向けのライセンス供与にも力を入れており,Stage6の売りのひとつは,ここでダウンロードしたコンテンツをCD-R/DVD-Rに焼けば,DivXをサポートしたDVDプレーヤで再生できる点にある.公式にはファイルでのダウンロードを認めないYoutubeとは対照的だ.
Stage6の登場を受けて,競合各社は画質の向上など対抗策を打つ必要に迫られる.けれども配信をAkamaiにアウトソースするなど満を持してインフラを打ったDivXに対し,他社はビットレート改善に必要な回線・サーバー増強といった対応策を採ろうにも,コスト増が課題となる可能性がある.*2また抜本的な画質改善については,基盤技術を提供するAdobe / On2 Technologiesの対応を待つ他ない.短期的な対応としてはコンテンツの囲い込みや,Flashの強みを生かしたユーザー・エクスペリエンス追求となるのではないか.
CGMの宿命としてコンテンツは利用者からの登録に大きく依存する.従って長期的にはコンテンツのつくりやすさが重要となる.いまのところカムコーダやデジカメからのトランスコードが主流で,画質を考えるとHDV等で使われているMPEG2,デジカメで使われているMotion JPEG / MPEG-4AVCHDで今後の普及が予想されるH.264との親和性が重要だ.
いずれはカメラに内蔵した無線LANやMobile WiMAXから直接アップロードできるようになる可能性もある.この点で自前のCodecを持ちロゴプログラム等でIHVとのチャネルを持っているDivX社が先行する可能性が高い.既にペンタックス・カシオなどがDivX対応のデジカメを製品化している.とはいえデバイスによるサポートの進むDivXにせよ,特定企業による独自技術に過ぎず,MPEG-LAやSMPTEで標準化されたH.264VC-1とは状況が異なる.YoutubeStage6をPCという極めて柔軟なプラットフォームでは使えても,ビデオカメラやテレビといった家電で幅広くサポートされるかはどうかは未知数だ.
いずれにせよ雨後の竹の子のように動画配信サイトが立ち上がる中,Stage6DivXが画質やデバイス対応といった新しい競争軸を提示したことで,動画配信サービス市場での競争は新たなフェーズに入った.今後,コンテンツホルダ,ポータル,家電メーカーなどを巻き込みながら映像配信のロングテールを事業化する試みは加熱することが予想される.

*1:アニメのバッチエンコードという好条件あってのことで,この技術がIPTVで必要とされる実写・リアルタイムエンコード・CBRといったシビアな環境で,DivXがどれくらい実用的な技術であるかは分からない.

*2:自前でCDNを組むか他社にアウトソースするかは本質的な問題ではないかも知れない.とはいえ何らかのカタチで地理的・トポロジ的な負荷分散は必要となるのではないか.Youtubeはその辺をどうしているのか未知数.