雑種路線でいこう

2008年01月03日

ポータルブラウザの終焉

大学が決まってライター駆け出しの頃、最初に書いた記事は98 Magazineコラムで、IE 3.0とブラウザ戦争の足音を告げるものだった。当時はNetscapeの優勢を疑う者はおらず、時代を先取りする記事だったと今も自負している。今年2月でNetscapeブラウザサポートが終わり、年初からYahoo! Japanリニューアルでトップからディレクトリが消え、ひとつの時代が終わったと実感した。

気付いたらブラウザポータルコモディティ化してしまった。素人目にYahoo!NiftyMSNトップページを見比べても違いは分からない。世界で最も成功しているYahoo! Japanが、どうして好調とはいい難い米Yahoo!デザインを追っかけなければならないか理解に苦しむが、もはやポータルは将来へ向けた競争領域ではなく、トラフィックを少しでもマネタイズするために広告スペースを大きくすることの方が重要なのだろうか。

ところでブラウザポータルを並べたのには理由がある。多くの人は忘れてしまったかも知れないし、Wikipediaをみても歴史は載っていなかったんだけど、もともとポータルサイトという概念は、ブラウザIEに追われてシェアを落とし、無償のApacheSSLサポートしたことで高額なSSL Webサーバーの販売という収益モデルを断たれたNetscape経営を建て直すため、Netscapeブラウザを立ち上げたときに表示されるホームページページビューを、活かされていない経営資源として再発見したところから始まっている。残念なことにNetscapeポータルサイトとして成功しなかったが、無事AOLに売り抜けることができた。そしてこのアイデアは大手検索サイトISP各社を魅了することになる。

今も結構な数の企業がポータルサイトという概念に縛られたページ構成を取っているが、それが必ずしも成功しなかったことは、最大手のGoogleポータル概念と真っ向から対立するシンプルサイトで成功し、Live等もそれに追随していることからも明らかだ。結局のところ希少なのは画面スペースではなく利用者のアテンションで、ページの中でアテンションを分散させる幕の内弁当的なレイアウトは、インフォマーシャルへの誤配的なクリックから広告収入を得る土足マーケティングには有効でも、サイトの機能を利用者に印象づけ、頼ってもらうには向かないということか。

これは同僚の社会学者から聞いた話なので定かじゃないけれども、最近学生ってコミュニケーションケータイで事足りていて、そもそもネットを使うという発想はないらしい。けれどもニコニコ動画はみているらしく、それは彼らの頭の中で、ネット上のニコニコ動画というサイトではなくて、いきなりニコニコ動画なのだ。メールからURLを叩いたり、ブラウザの検索窓から入ったり、ともかく最初からニコニコ動画を使っているのであって、それがインターネット上のサイトであるとか、表示しているソフトブラウザというのだとか、そういった意識は全くないらしい。技術屋としては脱力してしまうところだが、それはそれで健全という気がする。空気のように意識しないで使えれば、それに超したことはないのだ。

親から持たされたケータイ学校裏サイトとかモバゲータウンから入って、後から2chニコ動のようにPCを使った方が便利なことはPCでという子たちの行動特性は、子供ケータイを持たせる日本独特のものだ。米国ではまだ日本ほど子供ケータイを持たせていないし、大学Facebookデビューとか、Live Messengerやtwitterで繋がりっぱなし的な世界もあるのだろう。

どちらにしてもネットが空気のような世界ではポータルが主戦場でなくなっていて、シンプルな単機能サービスと、生活密着性の高いソーシャルサービスとに二極化していく。そして画面構成は大きく異なれど、どちらも利用者のアテンションを利用者にとって本当に必要な情報に割くことで、信頼と依存を勝ち取ろうという魂胆は共通しているのだ。

利用者にとって関心のないことを排除しなければならない。そのためにはGoogleのようにページの機能そのもの以外を徹底的に省くか、mixiFacebookといったSNSのように、利用者にとって関心のありそうな事柄だけでページを埋めるくらい利用者について深く知らなければならない。携帯電話カーナビのようにパソコン以上に画面の小さなプラットフォームでは、いまのWebサイト以上に、利用者視点で情報を取捨選択する技術勝敗を左右することになるだろう。GadgetとかPodcastingとかARとかも、そういった観点から情報重要度に応じた控えめのアテンションという観点で捉え直してみると面白い。

国内で今も圧倒的な影響力を持つYahoo! Japanが、トップページレイアウトで時代に日和ったことは、"Portal doesn't matter"という積極的な意味合いよりは、彼らの手詰まり感を反映しているのかも知れない。ただ彼らの輝かしい業績は旧態依然としたトップページ構成の独自性よりは、トップシェアを誇るオークションや数ある魅力的な日本で開発されたサービスに支えられているのだろうから、トップページの刷新も気張ることのない自然な選択であったのかも知れない。

図らずもYahoo! Japanトップページ刷新はディレクトリの終焉だけでなく、ポータルそのもののコモディティ化を印象付けた。そしてポータルコモディティ化は、ブラウザコモディティ化とも強く結び付いている。ブラウザという矩形スペースでの陣取り合戦は時代遅れとなって、もっと本質的な利用者の注意を惹く度合いをファインチューニングすることが求められるようになった。ポータル発想の幕の内弁当式レイアウトは、アテンションを叩き売っている点で決定的に時代遅れなのだ。

その点でシンプルに徹するグーグルレイアウトはパラダイムシフトを先取りしたが、iGoogleカスタマイズ型のサイトを展開していることは、彼らもなお次の展開を悩んでいることを示唆している。自分好みにサイトカスタマイズできる利用者は、ほんの一握りに過ぎない。カスタマイズ機能を提供することは、CGM的に利用者ニーズを把握することには繋がるけれども、それ自体がマスから受け入れられることは期待しがたい。あくまで過渡的なテストマーケティングと考えた方がいい。それ自体としてアテンションを管理しつつアプリケーションの開発と流通を支援する仕組みをつくったFacebookは先を行っているが、これが本当に使いやすいかというと判断し難い。友人が試したアプリケーションを勧められる度に、土足マーケティングと感じることもある。

ポータルブラウザの亡霊は暫くネット上に留まるにしても、主戦場は移りつつあって、そこでは利用者を中心にアテンションを管理するというパラダイムシフトや、ケータイ世代によるPCパッシングが起こっている。ガジェットFacebookアプリといったプログラマビリティは、ブラウザという矩形の枠を超えるとともに、エコシステム形成とテストマーケティングの役割を担いつつある。これらの動きは未だ過渡的で、誰もが自分の強みを敷衍して勝ち抜こうとしているが、本当に何が大事かということは、まだ誰にも分かっていないのではないか。一方で重要でなさそうな領域については、時代を追いつつも差別化からマネタイズへのシフトが進んでいるようだ。

ロンチキヨクロンチキヨク 2008/01/04 14:42 俺もAOL=インターネットだった頃がある。。

通りすがり通りすがり 2008/01/24 03:09 いつも楽しく拝見しています。
気まぐれに書いています。(失礼でしたらすみません)

感想:対象読者の想定が違うからだと思いますが、専門用語が難しかったです。

・アテンション=注目
・ファインチューニング=微調整
・CGM的に=消費者主体による情報発信という観点から言って(?)

意味は自分で調べたのですが、初見では分かりませんでした。多分、もっと独特な意味合いがあるのでしょうが、教養が無いので^^;流し読みしました。

以下の言葉は分かりました。文脈上、ぴったりな表現だと思いました。

・コモディティ化
・マネタイズ

同僚に社会学者さんがいるなんてうらやましいですー。ではでは。

通りすがり 2通りすがり 2 2008/03/22 02:11 最近の学生というか義務教育の子たちの範疇においては
教育レベルとか環境によって携帯とWebの利用に大きな差が
出てきていると思います。

Google利用者の多くが所得が高いとかいうあの結果に類する物が
ティーンの間にも存在していると感じています。




実際リアルとのコミュニケーションは携帯。
不特定多数(たとえば ”あみぐるみ” の”おたま”など)
との繋がりはWebでとなりますが、これは小学生の頃から
パーソナルなPCを持っているに限ります。

そうなると10才の女の子がお誕生日にドメインを
欲しがったりもします。携帯だけでは到達できない
高校入試前の中学生向けの掲示板もあります。
(すでに6年も稼働。しかし収益無し。にもかかわらず
都内に関してはほぼ全ての都立・私立の高校を網羅)

情報の鮮度は折り紙付きで翌朝の新聞に出る倍率、もしくは
答案の答えをを早くに知ることができます。

(それによって志望校の絞り込みをいち早く決定など戦略的に利用している様子)

まさにコンテンツがグラビティを生み出している様子がわかります。

本当に何が大事かは実際今後もわからなそうですね。

ただ基本は江戸時代から変わってないと思っています。
あまり知られていないけど当時だってSNS風な行為があったわけですから。
(数学の難問解答(趣味)を不特定多数に見せ合い、数学でつながるみたいな)

あと、Facebookよりcraig list の方がより自然ポータルっぽいと感じています。

それこそ入り口はあんなにかっこわるくても
いっぱい人が集まって合理的な収益を生み出している様子などは。

乱文失礼しました。

なまえなまえ 2009/04/06 21:07 ・インフォマーシャル
・アテンション
・ファインチューニング

カタカナ連発はわかりづらいです。

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