雑種路線でいこう

2008年12月31日

タクシー規制に関する論点整理

年越しエントリーを書く前に、タクシー問題について頭の整理を終えておきたい。僕の基本的な認識としては、タクシー乗務員待遇改善目的とした需給調節は筋が通らないが、最低賃金など基本的な労働者としての権利、安全確保のために必要な労働環境を確保するための規制は必要と考える。

規制緩和が必ずしも需要増に結びついていない背景として、新規参入や増車が自由化された割に、料金やサービスの多様化が進まなかったことがあり、その背景に旧態依然とした大手事業者、業界文化にどっぷり浸かってからでないと独立できない参入規制がある。

共有地の悲劇市場が機能しない理由の一つではあるが、料金規制の更なる緩和や業界慣行の見直しによって市場競争を通じた需要喚起策を講ずることも考えられる。安易な需給調節に走ることは、タクシーが構造不況業種として成長の機会を投げ出すことにならないか。

GPSなど乗務員の経験を補う技術が増えており、国際化や高齢社会、救急車不足といった新たな社会的課題に応えるべく多様な高度人材が求められており、サービスの高度化と料金体系の多様化を通じた需要拡大を図り、乗務員生産性向上とキャリアパスの多様化を実現すべきではないか。

提案:

現状認識:

  • タクシー参入規制の緩和は、1990年代から2000年代にかけて先進各国で行われている。豊川氏はNYCの例を挙げているが、米国の場合は州毎に規制が異なり、64%が参入規制、76%が運賃規制を行っている。
  • タクシー運転手の賃金低下は、長期的な景気下落で企業がタクシーチケットを縮小・廃止するなどの影響を受けて1990年代後半から進行したのであって、必ずしも規制緩和による増車の影響ばかりとはいえない。需給調節を復活させたとしても所得水準が元に戻るとは考え難いのではないか。
  • 国土交通省の統計は法人タクシーを中心としているが、特に首都圏繁華街では長距離客を個人タクシーに食われている分も大きいと考えられる。つい最近まで深夜割増運賃が個人2割、法人3割と差があり、ベテラン運転手が多く道に迷うリスクが小さいなど、明らかに個人タクシーが安かった。車両のグレードが高く、運転手の私物として丁寧に扱われ、タバコ臭い車両に当たることも少ない。しかし個人タクシーは昼間に見る機会が非常に少なく、長距離客のいる夜間だけ流しや呼び出しに応じる業態は、公共交通としてはクリームスキミングに当たるとも考えられる。不採算時間帯の営業について、個人と法人とのイコール・フッティングは検討すべきかも知れない。
  • 地方では運転代行業との競合もあろうと推察される。
  • 平均賃金ばかり議論されているが、流しの巧拙などで水揚げには大きな差があると推察される。増車を最低賃金規制で抑えたとしても、優良ドライバーは相応の賃金を得ることが出来るだろう。最低賃金法を厳格運用した場合、生産性の低いドライバーは事業者からみて赤字となるため、無線配車を優先的に回したり、増車を抑制するなどの措置を取ると考えられる。

いくつか個人的な体験:

  • 前のエントリで書いたとおり、三男出産のとき病院までタクシーを呼ぼうとしたが、どの会社からも断られた。確か「世田谷 タクシー」でグーグル検索し、みつけたリストに載っている法人タクシーの配車センター電話したのだが、いずれの配車センターからも断られたと記憶している。
  • 規制緩和前の状況が望ましいとは思えない。終電後の繁華街で30分とか1時間も待たされたり、近距離だからと何度も乗車拒否されたことを思い返すに、あの状態に戻されるのはゴメンだ。
  • 昼間、新宿で拾ったタクシーに「合同庁舎2号館へ」とお願いしたら「はぁ?」と返され、「あのー、霞ヶ関ですが」というと「えっと、霞ヶ関って新橋の方でしたっけ」「お客様に道を案内していただけるようでしたら、行けますが」と返されて驚いた。急いでいたが、仕方なく他を探した。
  • やはり新宿から霞ヶ関へ行く途中、国会議事堂の周りを3周くらいした挙げ句、目的地に辿り着けなかった。しびれを切らして別のタクシーに乗り換えたが大事な研究会遅刻してしまった。こちらは電車じゃ間に合わないからタクシーに乗っているのに、けっきょく電車よりも時間がかかってしまった。後から聞くに目的地に辿り着けなければ料金を支払う必要はないらしいのだが、しっかり取られた。
  • 著しく出来の悪い乗務員日本語がちゃんと通じない乗務員は、2002年規制緩和前からいた。規制緩和ではなく、不況で異業種からの流入が相次いだことが原因と推察される。しばらく経って、景気が悪いままの割に非常識乗務員に当たることが減ったので聞いてみたら「流しが下手だと儲からなくて生きていけないから、出来の悪い運転手は商売替えしたんですよ」といわれたが本当かは分からない。しかし景気が徐々に回復した昨年くらいから、また非常識乗務員にぶつかる場合が増えた気がする。

結論から言います。べき論はいいので、タクシーをまともにする具体的な政策のセットを示してください。需給調整よりも優れた対案です。それが示せないのならあなたの意見には何の意味もありません。

現実に多くの人が苦しんでいることを忘れないで下さいね。

コメント - 素人としてはタクシーが特別か分からない - 雑種路線でいこう

豊川博圭豊川博圭 2009/01/01 01:38 もう、何と言うか、非現実的過ぎて論評のしようがありません。たとえば多様化した運賃が好きなら大阪に行ってみればいかがですか? 利用者はたいして喜んでませんし、実際に需要も増えてませんけど。

タクシー政策の目標は「質のいいサービスを、安く、あまねく利用者に提供する」という、ある意味で背反する目標を最大限のレベルで成立させる最適解を探すことです。

そのための手段として、需給調整がよければ需給調整をすればいいし、別の手段が良ければ別の手段を採ればいい。それだけです。最初から「需給調整はダメ」とオプションを封印する論理的な必然性が全く分かりません。世界のほとんどの都市がそれを最適解として採用している現実があるにもかかわらずです。

あと、あなたの提案を実現するために具体的にどういう制度にし、どういう社会投資をしたらいいのか、そこまで書いてくれませんかね。

私から見て、あなたの提案は実務的に不可能です。たとえば単に銀座の乗禁規制をなくしたら、夜の銀座がどうなるか想像できないのかなあ。配車の場合に上限運賃をなくすというのもどうかと思いますねえ。タクシーに乗る時にいちいち価格.comで運賃を比べるなんてことを利用者が欲しているのでしょうか。全く疑問です。PCが使えない老人は、その老人が悪いという議論ですか?

現状認識も、本質的なところで正確さを欠いていますね。第二項はお得意の部分否定と全部否定の意識的混同がありますし、第五項は完全に嘘です。

本件は以上

あと、あなたの他のエントリーも読みましたが、ハッキリ言って妄想系という印象です。「自分に知識が足りないことを知らな過ぎる」感じがします。あとは自由競争の貫徹を過度に重視して全体バランスを見失っている印象です。「自由競争を貫徹させるためには消費者が損してもいい」という類の議論をしてますね。目的と手段がでんぐりがえっていることに気づかない。規制改革会議脳と私は呼んでいるんですけれど。

まあ、失礼なことを書きましたが、いろいろ面白かったです。また突っ込みに来て下さい。

通りすがり通りすがり 2009/01/01 04:59 タクシー会社が多すぎるんじゃないの? 合従連衡しなさいよ。経営者が無能なだけでしょ。

あと、増車を規制しても、労働者の頭数を規制しないと賃金問題は解決しないと思うけどね。そもそも運転手増やしすぎてるのが悪いんじゃないの? あ、それも経営者の問題か。

豊川博圭豊川博圭 2009/01/01 13:09 タクシーの運転手の質が落ちている「体験談」がありますが、なぜ落ちたか分かりますか? この仕事を長くやる運転手が減って新人の率が増えたからです。なぜそうなったか分かりますか? 収入が低過ぎて長くやってられないからです。なぜそうなったか分かりますか? 需要に対して供給が増えすぎたからです。

要するに需要に供給を合わせればタクシーの質は上がるんですよ。簡単な話です。

タクシーを支配する市場原理には、需要に対して供給量を調節する能力はありません。ラーメン屋と違うという話はしましたよね。

市場原理が機能しないなら別の方法で需給を調節しようと考えるのは極めて自然な話です。目的は「警視庁の並びの合庁2号館」と言えば安心して到着するタクシーを維持することです。

通りすがり通りすがり 2009/01/01 14:02 給与の高いベテランが給与の安い新人に replace されるのはどの業界でも同じです。政府に泣き言を言う前に己の頭を使っていただきたい。それが嫌なら公務員になることです。

サービスのクオリティがある程度下がっても、価格が下がるのであればそれはそれで結構。GPSを使う? 「私は」構いません。それでも結構。要は、必要なときに、安く、早く、安全に目的地に着ければそれでいいわけです。

> 要するに需要に供給を合わせればタクシーの質は上がるんですよ。簡単な話です。

常識的には、通常は業界や企業の戦略としてやるものです。それが通用しないのであれば、タクシー会社が多すぎるのではありませんか? それを先に指摘したわけですが。

経営者の無能を棚に上げて、「職人」の高い給料を保証するために政府の規制で保護されるべきほどの業界だとは、残念ながら私には思えません。

> 目的は「警視庁の並びの合庁2号館」と言えば安心して到着するタクシーを維持することです。

そんなものはいらない。GPSがあれば十分です。

通りすがり通りすがり 2009/01/01 14:27 私は普段は楠氏と論を異にする者だけれど、あなたの議論には辟易する。

給料の安い新人によってベテランが駆逐されるのは、結局のところ、サービス(労働)の付加価値がそのレベルでしかない、という証左に他ならない。どの業界でもそれは一緒だ。

その限界を乗り越えるために、経営者は知恵を使っているのであるし、労働者も知恵を使っている。企業の合従連衡もしている。場合によっては、自分が創業した会社を売らざるを得ない場合もある。当人たちにとっては苦渋の決断かもしれないけれど、それが「普通の経済」というものだ。

そういう現実を差し置いて、「職人」の給与を保障するために規制を導入せよ、というのは、オッサンの寝言にしか聞こえない。

もともとの職業柄、弁は立つみたいだが、「世の中」というものに対する基本的な認識が間違っていると感じる。

規制業界でしか仕事をしたことがなければ、そうなってしまうのかもしれないが。

うんざりうんざり 2009/01/02 16:15 >豊川博圭氏

議論の中身はさておき、あなたの攻撃的な物言いは読む者を不愉快にさせますね。
専門家同士のWGや貴ブログで激論を戦わせるならともかく、楠氏は門外漢ですよ。
素人の思いつきを喧嘩腰にやっつけたところで得る物は少ないでしょう。
せっかく業界外の人間がこの問題に目を向けたこの機会を生かしましょうよ。
やれやれ素人が…とここはぐっとこらえて、応援者を増やすような活動をしてみちゃどうですか。
いい年なんだから、相手を言い負かす以外に持論を通す方法を知らないわけじゃないでしょう。

豊川博圭豊川博圭 2009/01/02 20:57 > 給料の安い新人によってベテランが駆逐されるのは、結局のところ、サービス(労働)の付加価値がそのレベルでしかない、という証左に他ならない。

タクシー乗務員の給料が新人とベテランで違うという前提でしゃべっているようですが、それがそもそもの間違いです。知らないのに語るのはやめましょうよ。

走ってるタクシーの乗務員が新人かベテランかなんて判断できないでしょ。乗って初めて分かるんですけど… 道を知らない新人の車に乗りたいんですか? 意味分かりません。

> 、「職人」の給与を保障するために規制を導入せよ、というのは、オッサンの寝言にしか聞こえない。

私は「消費者に対して良いサービスを安く提供するため」と明記してるんですがね…。人の発言を捏造して批判するってのはいかがなものかと思いますよ。

カーナビで運転すればいいとか言ってる人も居るし、もう、何というか…

> あなたの攻撃的な物言いは読む者を不愉快にさせますね。

何も知らないのに滅茶苦茶な議論をして他人の業界を批判するのは人を不愉快にさせないんですか?

これだけ滅茶苦茶な議論をされたら攻撃的にもなりますよ。頭から「タクシー事業者とタクシー運転手がが悪い」という議論じゃないですか。

> 議論の中身はさておき

さておかないでくださいな。納得できる中身の議論をしてください。

熟読すると熟読すると 2009/01/03 02:29 >豊川博圭氏

自分と違った意見を言われると、その中身が何であれ単純に批判攻撃されていると思ってしまう輩なのですね、わかります。
議論に向いてない人ということがよくわかります。


自分の方が確実に経験あるがあることを良いことに、「素人が!」「そんなの実務的に無理だ!」と言ってすべてを拒否し、話し合いによる中身の充実よりも「参りましたあなた様の言う通りですすいませんでした」と言わせたいのですね、わかります。
議論に向いてない人ということがよくわかります。


頭に血が上って勢いつけて、関係ないところである人格攻撃して、相手を叩きのめして優越感に浸りたいだけですね、わかります。
議論に向いてない人ということがよくわかります。



あなたのやっていることは議論ではありません。ただ単に威嚇行為で優越感に浸っているだけの激情家です。
そんなあなたが「納得できる中身の議論をしてください」と人様に要求するのはおこがましいです。
見ていて非常に滑稽です。滑稽なだけに、見てる分には非常に面白いのです。ごちそうさまです。


以上が、コメントとトラックバックのやり取りを熟読しての感想です。
次いで、あなたのブログの直近表示のエントリ及び構造計画書を熟読させていただきました。
趣旨として、会社数も台数も乗務員数も収益を上げるという意味でのビジネスモデルも強烈に規制して監督して強制しろというものとお見受けしました。
業界としては自主規制にみせかけた談合ですね。確かにこれで既存の従業員の(失った)既得権益はばっちり守られますね。
タクシーを起点にして生まれるはずだった新事業からの便益を消費者から奪い取り、反対に規制と天下りのコストを消費者に押しつけるんですね。
わかりますわかります、失った既得権益を取り戻したいだけなんですもんね。


それと、共有地(の悲劇)、需要、供給、市場の失敗、(情報の)非対称性などの経済学用語の使い方が間違っています。
経済学用語を使う典型的な素人さんですね。失った既得権益を取り戻したいだけの素人さんなんですもんね。
これだけ無茶苦茶な使い方をされると、経済学徒として不愉快にさせられます。


以上、豊川博圭氏に関する議論でした。

豊川博圭豊川博圭 2009/01/03 14:20 笑ってしまうほど典型的な「投影レス」ですね…

> それと、共有地(の悲劇)、需要、供給、市場の失敗、(情報の)非対称性などの経済学用語の使い方が間違っています。

どこがどう違うのか指摘してくれると助かりますね。指摘できたらで構いませんが。

solidarnoscsolidarnosc 2009/01/04 01:43 タクシー問題懇談会の豊川氏は何を言っても説得力ないよ。全部ポジショントークでしょ?細部にこだわって議論をややこしくすると余計抵抗勢力感が出ますねえ。

YoshioYoshio 2009/05/17 01:15 ●メうんざりモ 氏と メ熟読するとモ 氏のコメントは,説得力のある内容で同意出来るものの,彼らの発言は,エントリーの論点から外れたものである。ただし,このように「議論」の場が「言い争い」の場に変わってしまったのは,豊川氏のファースト・コメントの蛇足が原因である事に留意する必要がある。

筆者である楠氏は,タクシー業界についての知識や経験を持っていなかろうと,メタクシー関連の課題についてモ 発言している。これに対し,豊川氏は,論点から外れた楠氏への人物蔑視とも受け取れる発言をしているが,これは一体どういう了見なのだろうか? これが,長年新聞記者に従事した者の発言と言えるだろうか?

また,豊川氏の喧嘩腰とも取れる感情的なコメント,『「自分に知識が足りないことを知らな過ぎる」感じがします。』,『知らないのに語るのはやめましょうよ。』は,いささか度が過ぎる内容であり,あまりバカな事は言わない方が良い。間違った知識や事実を吹聴されても困るが,誰もが一個人の知識や経験など高が知れている事を理解しているし,知識や経験などが無くても発言出来るブログという言論の場の価値を認めているのである。また,物事に対して多様な視点や考えがある事は周知の事実である。異論を唱える発言者に対する,この手の思考停止状態の発言は,全ての「議論」を含めた言論に対して有害に他ならない。

●根本的な問題として,豊川氏を含め大部分の人は,「議論」と「討論」の区別が付いていない。形式的な話ではあるが,「議論」では,メ自分の発言モ と メ他者の発言モ を区別してはいけない。発言者に意味は無く,発言のみに意味がある。つまり,メ他者の発言モ は,メ自分の発言モ だという自己批判主義が「議論」の本質にある。この事を踏まえて考えれば,メ他者の発言モ への批判ならともかく, メ他者モ への誹謗中傷など論外である事は自明であろう。

ブログという言論の場は,「討論」のような意味の無い場にするのではなく,「議論や対話」の場にするのが相応しい。豊川氏は,その知識や経験を生かすべきであり,メ非難モ の道具にすべきではない。「現実を知らない」と嘆く前にどんな現実があるのかを説明すべきである。

●物事は,現状認識を共通にして考えるのが論理的である。

2002年の規制緩和で需給調整規制や車両台数規制が廃止となったため,新規参入等により競争が激化した上,景気悪化等によるタクシー需要の減少傾向も重なり,タクシー事業者の収入は減少した。

これに伴い,事業者は増車という量的対策を行ったが,この事が供給過剰を招き,結果として歩合給であるタクシー運転手の収入を低下させ,彼らの労働条件の悪化(道路運送法・労働基準法・最低賃金法・改善基準告示等の法令違反)に繋がった。

本来ならば,生産性の低い事業者は市場から退出するのだが,タクシーは,電車やバスなどの公共交通機関と同じ位置づけであるため安易な運賃値上げは出来ないものの,運賃認可について総括原価方式が採られているため,経営不振の事業者は淘汰されず,経営の効率化に繋がらない一因になっている。

●筆者の主張は2点(1, 2)である。また,論理は(3, 4)であり,論点は(5)である。

(1)タクシー運転手の待遇改善を目的としても「需給調整」という施策には反対である。(2)タクシー運転手の待遇改善は,「法令(労働基準法・最低賃金法等)」の厳格適用によって行うべきである。(3)「法令(最低賃金法等)」の厳格適用は,タクシー運転手の待遇改善と「需給バランス」の均衡を図る。(4)「規制緩和」は,「需要増加」をもたらし,「需給バランス」の均衡を図る。(5)「需給バランス」の不均衡などの課題について,その解決策を規制緩和した市場に求めるという市場原理主義の妥当性。

●筆者は,(1)の根拠の一つとして『事故の増加・運転手の低待遇・タクシー輸送における安全面低下などは,規制緩和以前から存在した(2008/12/30)』と主張する。しかし,これは「規制緩和」によってこれらの課題が解決しなかった主張に他ならなず,「規制緩和」を否定するものになっても肯定するものにはならない。運転手の待遇悪化の主原因は,筆者も認める通り,「規制緩和」による事業者の増車(供給量)にある。つまり,如何にして「需給バランス」の均衡を図るかが問題解決のカギになる。

●筆者は,(1)の代案として(2)を,そして(3)の論理展開として『最低賃金法の厳格適用により運転手の待遇改善が図られる,と同時に生産性の低い事業者が市場から退出する事により減車が実現し,結果として需給バランスの均衡が図られる(2008/12/30)』と主張する。随分都合の良い論調だとは思うが,仮に,最低賃金法等の「法令」が厳格に適用され,同時に厳罰化がされれば,運転手の待遇改善は図られる可能性は高くなる。しかし,「法令」は市場原理をコントロール出来る メルールモ にならない事は,昨今における企業の不祥事からも明らかである。性善説に立った メ条件モ を前提にした論調は,説得力に欠ける。世の中は,経済システムの下,資本主義的な メ利害損得,価値観モ で動いているのである。

●筆者は,(4)の論理展開として『規制緩和により運賃・サービスの多様化を促す事で,タクシー需要は増加する(2008/12/31)』と主張する。

しかし,「規制緩和」の目的とは,経済活性化のため様々な規制を緩和・廃止し,自由な経済活動を促進する事である。よって,「規制緩和」により新規参入が増加すれば,競争原理が働き,経営の効率化や多様なサービスの提供が期待される。つまり,「規制緩和」は「需要増加」と相関関係にあったとしても因果関係には無い。

また,運賃・サービスの多様化も「需要増加」と相関関係にあったとしても因果関係には無い。なぜならば,タクシーの低運賃・高サービスという需要(要望)が増加しても,タクシーという移動手段の需要(必要性)が増加する訳ではないからだ。仮に,バス並みの低運賃で価格競争が実行され,「需要増加」しても事業者などの収入が減少する可能性が高く, 単なる運賃の価格競争になれば,事業者の体力勝負になるだけであり,結果としてタクシーを取り巻く環境を悪化させる原因となる(主張(2)を無視)。何よりも相対的な低運賃のタクシーを選択する事が物理的に困難である。

たしかに,「規制緩和」は運賃・サービスの多様化とは因果関係にはありそうだが,同時に供給過剰(増車)というデメリットをもたらした。第一,「規制緩和」をしなければ出来ないサービスがあるようには思えないし,運賃・サービスの多様化によるメリットが生まれない限り,この論理展開(4)には納得出来ないし,(4)を メ前提条件モ とした論調にも賛同出来ない。

●この点に対して,筆者は『運賃・サービスの多様化が進まなかった理由は,業界の談合体制と国土交通省の運賃規制である(2008/12/31)』と主張する。

しかし,これは,一定の メ条件モ を満たさなければ,「規制緩和」は機能しないと言う主張に他ならず,メ規制緩和自体モ には何のメリットも無い事を意味している。つまり,全ての産業構造を同次元で扱い,メ条件モ を無視して メルール(規制緩和)モ を適応さえすれば,メ市場原理モ によって全ての課題が解決するとの考え方に問題があるという証拠である。本質的な問題として,メ条件モ を無視して,盲目的に メ市場原理モ を信頼しても無駄であり,まして「規制緩和」や「法令」に解決策を求めても意味が無い。むしろ,「規制緩和」によって メ条件自体モ が解決しなければならない。行政対応の硬直化(ZOC不認可)等が良い例であろう。

さらに,「需要増加」と「需給バランス」の均衡の関係も,「規制緩和」の市場を考えれば,相関関係になったとしても因果関係にはならない可能性が高い。

●次に,各エントリー内の疑問に思うコメントを批判していく。筆者は『わたしの立場は市場を妄信している訳ではなく、市場を活用しつつ政府が適切なインセンティブデザインを行うことで、競争を通じたイノベーションと需要拡大を図ろうというものだ(2009/1/2)』とコメントする。

しかし,私には,この内容を全く理解出来ない。一体,「政府によるインセンティブ・デザイン」とは何だろう? それは,「規制緩和」と矛盾はしないのか? また,公共交通機関における「イノベーション」とは何だろう? 最も主張すべき事柄にも関わらず,具体的な説明は一切無い。筆者は,イノベーションという訳の分からない メコトバモ に何か期待を寄せているようだが,運転手や利用者に不便を強いている現状を目の前にイノベーションの妥当性は見つかるのか? 私には,イノベーションとは,『結果』論の メコトバモ であって,『目的』の メコトバモ では無いように思えるのだが。

●筆者は『タクシーに限らず、不況の影響や残っている規制による市場の歪みを、規制緩和の負の側面と騒ぎ立て、改革に逆行する動きが散見される(2009/1/2)』とコメントする。

しかし,何ともセンスの悪いコメントである。これは一定の メ条件モ を満たさなければ「規制緩和」は機能せず,現状では「規制緩和」によるデメリットしか無いという主張に他ならない。そもそも,現在の社会状況の悪化を メ市場の歪みモ という理由を後付けにして正当化する態度が嘆かわしい。一体,どうすれば メ市場の歪みモ は解消され,如何なる条件下で「規制緩和」は機能するのか,を説明すべきである。

そして,この『改革』という メコトバモ が,筆者の思考の全てを物語っている。現在の社会状況の悪化という『結果』を無視して,「規制緩和」の是非論に固執し,『改革』という メコトバモ にしがみつく態度 は,まるで,イラクの大量破壊兵器の保有という大義名分の下に開戦したイラク戦争において,終戦後,大量破壊兵器の保有が偽情報であった事実を米英が認めたにも関わらず,機を逸して引っ込みが付かなくなった小泉元首相のそれと重なる。

「規制緩和」は『目的』ではなく,単なる『きっかけ』に過ぎない事を指摘しておく。そして,施策という『手段』が重要なのではなく,社会状況という『結果』が重要である事も付け加えておこう。

●筆者は『流し営業であっても、下限運賃を設定する必要はあるのだろうか。自主的な経営努力で運賃を下げようという事業者に対し、他の事業者が妨害する事は如何なものか(2009/1/5)』とコメントする。非常に曖昧な内容で,どういう妨害を指摘しているのか全く分からない。仮に「規制緩和」による運賃の価格競争を指摘しているならば,本末転倒なコメントである。

●筆者は『タクシー増車問題で起こっていることは、そもそも共有地の悲劇ではない(2009/1/6)』とこれまでの彼の認識と正反対のコメントをしている。その根拠とする持論が記載されているが,ワードの統一性が無く,同義のセンテンスが3回も繰り返すなど要領の得ない駄文である。

『タクシーの増車問題』を『共有地の悲劇』に例えたのは,共有地(市場・牧草地)において,供給(タクシー・牧羊)が一定量の需要(利用者・牧草)を常に上回るという「需給バランス」の不均衡を問題視し,その解決策を供給側(タクシー・牧羊)に求めている点で共通しているからである。ただし,「利用者」とは,物理的な人口数ではなく,メその日モ のうちに生まれては消える「利用者のタクシー需要」と同義語である。さらに,牧羊(供給)・牧草(需要)に留意すること。

また,一部の事業者(羊飼い)やタクシー(牧羊)が市場(牧草地)から退出しようが,「規制緩和(オープン・アクセス)」の市場(牧草地)に魅力があれば,タクシー(牧羊)の増車や新規参入(羊飼い)により,タクシー(牧羊)が「利用者のタクシー需要(牧草)」を上回るのは必然である。

つまり,メ今日モ の「規制緩和(オープン・アクセス)」の市場(牧草地)における一定量の「利用者のタクシー需要(牧草)」は,事業者(羊飼い)によるタクシー(牧羊)の増車により過剰消費,もしくは,代替の公共交通機関により消滅する。よって,この適応に問題は無い。

そもそも,複雑系である『タクシーの増車問題』という社会問題を,単純化した『共有地の悲劇』のモデルに厳密に適応させようなどとは誰も考えておらず,仮に『タクシーの増車問題』を『共有地の悲劇』に例える事が適切でなくても,この事自体と「需給調整」の是非とは無関係である。

●筆者は『タクシー業界で需給調節を正当化するのであれば「共有地の悲劇」論よりは、行政コストと公正性とを比較考量する方が経済学的には筋がいい(2009/1/6)』とコメントする。私には,「行政コストと公正性」をどのように評価するのか理解出来ないが,メ経済学モ を万能視する姿勢には疑問がある。では,メ経済学モ 的に筋が良かったから「規制緩和」をしたのだろうか? 私には,メ経済学モ 的問題というよりも メ政治的価値観モ の問題のように思えるのだが。勿論,「規制,行政の関与(大きな政府)」 に対して,高速道路料金の引き下げ(ETC割引)や 定額給付金を例に見ても,コストが掛かるという事実に理解は出来る。

●結論として, 筆者は,一連のエントリーにおいて,2002年に始まった「規制緩和」による現状のメリットを何ら一つ挙げられていない。また,「規制緩和」が従来の課題を解決出来ていない事実も認めている。これらの点と現在の社会状況における課題を考慮すれば,新たな施策が必要である事は自明である。それは,「需給調整」などの規制を無視するものではない。

また,各エントリー内にある「最低運賃」,「価格による需給調節」,「タクシー運賃は市場価格となっていない」,「タクシー乗り場や配車での価格交渉」,「流し営業の表示価格は維持しつつ選択的なディスカウント」,「予約配車に限って相対運賃やオークションの導入」などのワードからも分かるように,筆者は『(4)「規制緩和」による運賃の多様化は,「需要増加」をもたらし,「需給バランス」の均衡を図る』と主張するが,タクシーに対して メ公共交通機関モ という メ公益性モ の認識が明らかに欠如している。 単なる運賃の価格競争は,結果としてタクシーを取り巻く環境を悪化させる最大の原因となる。

タクシーという移動手段は メ公共交通機関モ という立場を強いられながら,市場競争にさらされている構造不況業種である。すでに筆者も体験している事だが,利用者のタクシー需要は,低運賃に越した事は無いが,「必要な時に,必要な場所で,すぐに利用出来る」という利便性の高さにあると言って良い。これらの点から,単純な運賃の価格競争には疑問がある。

さらに, 筆者は『政府や事業者が,適切な需要を見積もる事は難しいが,タクシーは他の公共交通機関や自家用車などの代替材が多く,料金やサービス如何で需要が変化する期待もある(2009/1/2)』と主張する。しかし,需要量を見積もる事が難しいのに「需要増加」を メ前提条件モ とした「需要バランス」の均衡へのプロセスは,自己矛盾してはいないか? しかも,「需要増加」を図ろうとするサービスの具体例(予約配車への相対運賃やオークションの導入,福祉介護資格や語学力などを持つ人材登用など)が,単なる人員輸送的性格から抜け出せず,イノベーションと言うには程遠い内容である。

●根本的に「需要増加」を図るには,市場規模の拡大が必要であるが,メ市場規模の拡大が見込めないモ 移動手段に過ぎない メ公共交通機関モ では,「規制緩和」によるサービスの多様化が実行されても,必ずしも「需要増加」には至らない。その点,価格弾力性の小さいタクシー需要量では無く,需要量に依存する供給量に着目する 「需給調整」に強いて正当性が感じられるのは,施策により供給量を調整出来るからである。採算の合わないバス路線でも,生活交通路線として税金で維持しているケースを考慮すれば,政府等が介入すること自体に必ずしも否定できない。しかし,メパスモモ は,メタクシーモ では利用できない。メタクシーモ は,メ公共交通機関モ の位置づけではないのだろうか?

筆者は「規制緩和」擁護の立場から,タクシー関連の課題について経済的側面のみに注目し,タクシーの メ公共交通機関モ としての位置づけを忘れ,「規制緩和」を正当化するために「需要増加」という強迫観念に囚われ,その延長線上にタクシーの構造不況の解決があると信じ込んでいるが,筆者は,JR福知山線脱線事故などをすっかり忘れてしまっているようだ。

●今回,メタクシーモ で検索したら,こちらのブログに辿り着いた。タクシーに関する6つのエントリーにおける文章表現は簡潔であるが,その根拠などは明記されておらず,内容に具体性が欠けている。そのため,センテンス同士やフレーズ同士の繋がりに論理の飛躍が感じられ,理解しづらい箇所が多かった。また,(a)市場規模の拡大における可能性,(b)公共交通機関としての役割を保つための総括原価方式の正当性,と退出の義務化という課題,(c)歩合給による運転手の雇用問題の是非などについても触れて欲しかった。

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