島田荘司の新作は、新人作家とのコラボ!
「日販速報」をつらつら見ていたら、別冊広告にこんなのが。
島田荘司・小島正樹共著『天に還る舟』(南雲堂6月中旬予定 新書版)
- 作者: 島田荘司,小島正樹
- 出版社/メーカー: (株)南雲堂
- 発売日: 2005/07/01
- メディア: 単行本
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煽り文句もいっぱいあって、この広告全部お見せしたいくらい。とりあえず文章をいろいろ引用。
本格ミステリーの巨匠・島田荘司と
島田荘司の正統な後継者・小島正樹。
21世紀の本格ミステリー界に君臨する
師弟がコラボレートする
新本格ミステリー決定版!!
うわっ、「正統な後継者」とはまたすごい。今までデビューさせた多くの作家さんは「正統」ではなかったのかなあ。
本格ミステリーの巨匠として一時代を築いてきた島田荘司。
今まで多くの若手作家のデビューを後押ししてきた氏が
満を持して世に送り出すのが小島正樹。
二人が細部まで話し合い、壮大な構想と精緻なトリックが
合わさった本格長編ミステリーがここに登場!!
さらにストーリー紹介が。
昭和58年12月『火刑都市』事件の捜査を終え、休暇を取った警視庁捜査一課中村吉造は、滞在先の妻の実家埼玉県秩父市で前代未聞の大事件に遭遇する!鉄橋にぶら下がった死体と装飾の謎!!そして連続して発生する殺人!!数々の見立ては果たして何を意味するのか?また犯人の意図は?多くの謎はやがて隠された一つの事実へと収束していく。若き協力者・海老原を得た中村は事件をいかに解決するか。新本格ミステリーの新たな傑作誕生!!
ええ、『火刑都市』の続編!?
朱川湊人『花まんま』
- 作者: 朱川湊人
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/04/23
- メディア: 単行本
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「トカビの夜」:近所に住む朝鮮人一家の兄弟の弟が死んだ。その後、その子の幽霊が見えるという話が相次いで……最初の短編からして、もう哀しい。周囲の家の窓に×××××が飾られる場面には泣きそうになった。関係ないけど「パルナス」の歌、全部歌えますか?
「妖精生物」:楽しみにしていた少女雑誌を買うお金を使ってまで買った、クラゲのような謎の「妖精生物」……この短編のみ、グロいシーンがある。そしてそれ以上に怖い「最後の一行」が効いている。
「摩訶不思議」:おっちゃんが死んだとき、愛人だったカオルさんから「棺桶に入れて」と頼まれていたチリ紙の包み。その中にあったのは……ちょっとご都合主義的だが、楽しい話だ。落語の世界にありそう。
「花まんま」:妹のフミ子が生まれたのは、俺が3歳の時だ。お父ちゃんと一緒にバンザイ! って叫んだ。お父ちゃんはその二年後に交通事故で死んでしまった。フミ子はその後、何かが変わり始めた。見たこともないはずの「彦根」という字を書いたり、「繁田喜代美」と何度も書いたり。自分は彦根に住んでいた繁田喜代美の生まれ変わりなのだ、とフミ子は言った……本作のベスト。どころか、今のところ今年読んだベスト短編だと言い切れる。「生まれ変わり」というありがちなテーマだが、クライマックスにおける「人情」と「人情」のぶつかり合いに感動した。どっちに転んだのかは、実際に読んで確認して欲しい。そして綺麗な締め方に満足。
「送りん婆」:おばさんにはある特殊能力があった。私はその「手伝い」をさせられることになり……死の間際にある人を、きちんと「あの世」に送る職業「オクリンバァ」の話。「DEATH NOTE」みたい。おばさんの最後の台詞が笑える。
「凍蝶」:かつて兄から聞かされた「鉄橋人間」の話。人を轢いた列車がそのまま走ると、鉄橋でその轢いた肉片を落とす。その肉片が夜な夜な集まって人間となるのだ。だがそれは鉄橋でしか生活できない。孤独なのだ。まるで私のようだ……私の実体験にも一部重なる部分があって、胸が詰まった。後半はやや綺麗に書かれ過ぎているか。