今年の乱歩賞は女性ダブル受賞だ+自分の乱歩賞作品読破率

今年の乱歩賞作品が入荷した。今年は史上初の女性ダブル受賞である。店頭用拡材などでは浴衣姿の著者写真が使われていてビジュアル面でも訴求力があり、話題になるのではないかと思う。

よろずのことに気をつけよ

よろずのことに気をつけよ

完盗オンサイト

完盗オンサイト


巻末には選評が載っているが、特に『完盗オンサイト』は賛否両論だったっぽい。いきなり内田康夫氏が、

人間の美意識というか審美眼というか感受性というか、そういったものがいかに千差万別であるかを、いやというほど思い知らされた。僕が最低点をつけた『クライミング ハイ』(『完盗オンサイト』の応募時の題名)がなんと、みごと受賞したというのだから驚く。

と、受賞が決定した今もまだ信じられない様子で戸惑っておられる。相当反対したんだろうなあ。
『完盗オンサイト』は、各選考委員とも欠点も多くあることを指摘した上で、特に東野圭吾氏と桐野夏生氏が評価したようだ。東野氏の選評では、

多くの事柄が投げっぱなしになって話は終わるのだが、私は目をつむることにした。物語をうまく収束させる技術など、これからいくらでも身につく。良い意味で、後先を考えない才能を評価したい。無論、運が味方をしたことは否めない。選考委員の顔ぶれが違っていたら、真っ先に落ちたかも知れない。

とある。
また京極夏彦氏は、

それでもこの二作が受賞したのは、「小説として面白く書けていたから」に他ならない。
(略)
瑕疵がなくとも魅力に乏しい優等生的な作品よりは、壊れていても面白い作品の方が磨き甲斐はある。

と書かれている。選評を読んだだけではあるが、『完盗オンサイト』がなんだか面白そうである。もちろん、もう一つの『よろずのことに気をつけよ』も面白そうだ。今年の乱歩賞は二作とも読むつもりだ。(なお、二作とも受賞決定後に加筆修正されているので、選考委員が指摘する欠点は改善されている可能性がある)


と、実はここまでは、今日のネタの「前振り」。今年の二作の感想は読んでから是非アップしたいと思っているが、ふと思ったのが、「そういえば俺って、乱歩賞を読んでるだろうか?」という疑問だ。一時期は毎年読んでたような気もするし、逆に天邪鬼の如く避けてた時期もあった気がする。自分の「乱歩賞読破率」ってどうなんだろう。
気になったので、チェックしてみた。完全に自己満足のデータで申し訳ない。

江戸川乱歩賞受賞作品リスト(第3回〜)
○ 仁木悦子『猫は知っていた』
× 多岐川恭『濡れた心』
× 新章文子『危険な関係
○ 陳舜臣『枯草の根』
○ 戸川昌子大いなる幻影
× 佐賀潜『華やかな死体』
× 藤村正太『孤独なアスファルト
× 西東登『蟻の木の下で』
○ 西村京太郎『天使の傷痕』
× 斎藤栄『殺人の棋譜
× 海渡英祐『伯林−一八八八年』
× 森村誠一『高層の死角』
× 大谷羊太郎『殺意の演奏』
○ 和久峻三『仮面法廷』
× 小峰元『アルキメデスは手を汚さない』
× 小林久三『暗黒告知』
× 日下圭介『蝶たちは今…』
× 伴野朗『時をきざむ潮』
× 梶龍雄『透明な季節』
× 栗本薫『ぼくらの時代』
× 高柳芳夫プラハからの道化たち』
○ 井沢元彦『猿丸幻視行』
○ 長井彬『原子炉の蟹』
○ 岡嶋二人『焦茶色のパステル』
○ 中津文彦『黄金流砂』
○ 高橋克彦写楽殺人事件
○ 鳥井加南子『天女の末裔』
○ 東野圭吾『放課後』
○ 森雅裕モーツァルトは子守唄を歌わない』
× 山崎洋子『花園の迷宮』
○ 石井敏弘『風のターンロード』
○ 坂本光一『白色の残像』
× 長坂秀佳『浅草エノケン一座の嵐』
× 鳥羽亮『剣の道殺人事件』
× 阿部陽一『フェニックスの弔鐘』
× 鳴海章『ナイトダンサー』
○ 新保裕一『連鎖』
× 川田弥一郎『白く長い廊下』
× 桐野夏生『顔に降りかかる雨』
× 中嶋博行『検察捜査』
× 藤原伊織『テロリストのパラソル』
○ 渡辺容子『左手に告げるなかれ』
× 野沢尚破線のマリス
× 池井戸潤『果つる底なき』
○ 福井晴敏『Twelve Y.O』
× 新野剛志『八月のマルクス
○ 首藤瓜於『脳男』
○ 高野和明『13階段』
× 三浦明博『滅びのモノクローム
× 不知火京介『マッチメイク』
× 赤井三尋『翳りゆく夏』
× 神山裕右カタコンベ
○ 薬丸岳『天使のナイフ』
× 鏑木蓮『東京ダモイ』
× 早瀬乱『三年坂 火の夢』
× 曽根圭介『沈底魚』
× 翔田寛『誘拐児』
× 末浦広海『訣別の海』
○ 遠藤武文『プリズン・トリック』
○ 横関大『再会』


23/60 政宗の読破率:38.3%

集計してみると、意外と読んでない。近年のは読んでなくとも、初期の作品はもっと読んでいるかなあと思っていたが、どうもそうでもなかった。きっと私と同世代、あるいは上の世代のミステリファンの皆さんは、「なんだよ、政宗ってマニアを自称する割に全然読んでないじゃんか」と思われていることだろう。本当にすみません。
受賞作を連続して読んでいる期間があるが、これは高校生くらいの頃、図書館で「江戸川乱歩賞受賞作」と書かれた本を続けて読んだ時期があったため。
なんだか申し訳なくなってきたので、もうちょっと追っかけてみようと思った次第である。文庫版の乱歩賞全集、集めようかなあ。