ネット黎明期の「早すぎたネット小説」2作品
いま、電子書籍界隈でめちゃくちゃ売れてると思われる作品が2つある(コミックを除いて)。
ひとつは、言わずと知れた『火花』だ。
- 作者: 又吉直樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/06/11
- メディア: Kindle版
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もうひとつは、『村上さんのところ』。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/07/24
- メディア: Kindle版
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当然ながら、電子書籍版の方が高いのだが、ファンなら買うに違いない。
本の方はこちら。
- 作者: 村上春樹,フジモトマサル
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/07/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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現在では電子書籍は割と当たり前になってきたが、昔はいろいろな試行錯誤が展開され、かなり実験的な作品が誕生していた。そんなネット初期に生まれた、いまから思い返しても、あまりにも「早すぎた作品」を2作品紹介したい。
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1995/07
- メディア: 文庫
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- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1991/12
- メディア: 単行本
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もうひとつは、井上夢人『99人の最終電車』だ。
99人の最終電車
これもインターネット黎明期に書かれた作品。井上夢人さんはかなり早い段階からネット世界に精通しておられて、岡嶋二人時代にも『99%の誘拐』や『クラインの壷』などでその世界観を実作に反映されていた。ミステリ作家たちが自分たちの小説を直接販売する、という試みの「e-NOVELS」にも関わっていた。
『99人の最終電車』は「ハイパーテキスト小説」と称されていた。最終電車に乗った人々の群像劇だが、登場人物ごとに物語が設定されていて、それをネット上でクリックしていくことで多角的に読むことができる。ある人の物語からリンクされた人に飛んでもいいし、別の人に飛んでもいいし、同じ人の物語を時系列で追うこともできる。読者が読みたいように読み進めることが出来るのだ。
発表当時は、なかなか話が進まないことで有名だったが、一応は既に完結している。しかも全編を無料で読むことが出来る。もっとも、全編を読むのは相当大変だと思うけれど(私もすぐ挫折しました)。
当時はDVD-ROM化される話もあったが、もうその予定はないと思われる。ネット環境の進化によって、ネットで読むことが全く苦にならないからである。(昔は回線速度が遅かったり、従量課金でお金がかかったりしたので、ROM化期待だったのだが、もうそんな心配無用だもんね……)
電子書籍がかなり普及するようになった現在は、このような実験的な小説はむしろ減り、普通の本がそのまま電子化しただけのものが主流だと思う。ネットならではの趣向に満ちた作品が出てこないものかなあ、とも思うのだが。