ロングテールを誤解している人がいる

フラット革命
 いま読んでいる本にロングテールについての説明が書かれているが、それはちょっと違うと思う。(佐々木俊尚「フラット革命」講談社

 ウェブ2.0というのは端的に言えば、新しい技術やサービスの総称ではなく、もともとインターネットが持っていた双方向性やフラット性などの本質的な潜在能力が、ブロードバンドの普及や技術の進歩でようやく実現できるようになったことだ。つまりインターネットが、新たなステージに移ったことを意味している。
 そのウェブ2.0の世界で、おそらく最も重要なキーワードは「ロングテール」だ。
 インターネットビジネスの世界ではすっかり定着し、すでに日常語となっているこのキーワードは、一般的には「これまで死に筋だった商品が、ネットの力によって売れるようになること」と理解されている。たとえばオンラインショッピングのアマゾンでは、売れ筋の人気DVDや書籍と同じように、これまで市場からはあまり注目されていなかったようなマニアックな書籍やDVDもかなり売れているというのは有名な話だ。

 ここのところちょっと理解が違っている。マニアックなものが売れるようになる、という程売れるわけではない。死に筋だった商品が売れるようになるかもしれないが、そこそこにしか過ぎないだろう。何しろマニアックなものだから。出版元に注目するとこのように言うのが正確だろう。
 ロングテールのお陰を蒙っているのは出版元ではなく販売店なのだ。たとえば全国で年間10冊しか売れない本を店頭に並べる書店はないだろう。しかしネット上に書名のみ提示して、注文があったら出版社から取り寄せるのならどんなに売れない本も扱うことができる。それがアマゾンだ。アマゾンではロングテールの商品の売り上げが全体の1/3にもなっているという。塵を集めて山にしているのだ。しかし出版元では相変わらず塵なのだ。年間10冊しか売れなかった本が1万冊売れるようになるわけがない。売れ筋の商品同様に売れるようになるわけがない。