「究極の田んぼ」という過激な自然農法をすすめる本

 岩澤信夫「究極の田んぼ−−耕さず肥料も農薬も使わない農業」(日本経済新聞出版)が過激な自然農法を提案している。まず、有機農業を否定する。有機農産物は危険だと驚くようなことを言う。

 JAS日本農林規格)法による日本の有機農法は、非常に変則的な形を取っています。それは有機物の主体が、畜産糞尿に由来するコンポスト(堆肥)だからです。実はこの畜産糞尿が問題なのです。アメリカなどの有機栽培は、自分の経営する牧場の糞尿ではなく、完全な有機畜産の認証の取れた牧場からコンポストを購入し、これを主体に有機栽培が仕組まれています。なぜ有機畜産の牧場からコンポストを購入するかといえば、自分の牧場では、飼料工場で生産した濃厚飼料を食べさせているからです。購入したこの配合飼料には、抗生物質ホルモン剤などの動物薬が、大量に配合されているのです。日本子孫基金などの資料によると、わが国で1年間に使われる抗生物質は、病院で100トン、野菜果物などに100トン、養殖魚に200トン、病院の外来患者に400トンですが、牛、豚、鶏などの家畜には、これらの使用量の合計以上の、900トンです(数字は『食べ物から広がる耐性菌』、日本子孫基金・編、三五館発行、による)。

 岩澤は講演会のときに、「有機栽培のマークの付いたものは、危ないから絶対食べないように」と話しているという。
 では岩澤の提案する稲作はどんなものなのか。普通水田は春の田植えの前に代かきをする。耕して土を細かく砕いて水を入れたときに泥状になるようにする。それをするなと言うのだ。これを「不耕起栽培」と言う。去年の残った稲株の間に田植えをしようと言っている。すでにアメリカではこの不耕起栽培が全耕地の50%以上に切り替わっているという。

 田んぼを耕さないと、イネの根が根穴を残し、不耕起栽培で3年を経過すると、田んぼの土は根穴だらけになります。これを根穴構造といいます。根穴構造ができると、不思議なことにコメの味がよくなることを発見したのです。

 不耕起栽培は収量も多く、冷害にもきわめて強い。味も良くなる。良いことずくめじゃないか。ただし、従来の田植機は不耕起の水田では使えないので、岩澤らは井関農機と共同で不耕起栽培用の田植機を開発している。
 そしてこの不耕起農法に加えて、普通冬は水を入れないで乾燥させる水田に水を入れる「冬期湛水」という方法を発見する。その結果、湛水した水田にイトミミズが大発生し、イトミミズの排泄物がトロトロ層を作って厚さ5センチメートルにもなるという。この層が雑草の発生を抑制し、さらに膨大な肥料分が含まれていることも分かったのだった。
 このように不耕起栽培・冬期湛水という新しい栽培方法が目覚ましい結果をもたらしているという。これが本当なら、水稲栽培の文字どおり革命だろう。今後の進展を見守っていきたい。

究極の田んぼ

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