教育に関するヒント

 先に紹介した安藤陽子展のパンフレットに面白いインタビューが載っていた。安藤陽子はすばらしい日本画を発表している若手の画家だ。
ユニークな日本画家 安藤陽子展(2010年9月26日)

ーー小さい時から絵が好きだったのですか。
安藤:価値観とか、好き嫌いとか、色へのこだわりは強かったのですが、絵は上手くなかったんです。でも親がすごく褒めてくれる親だった。2歳の時にとった賞をずっと褒め続けて自信を持たせてくれて。美大に入ってから自分は絵があんまり上手じゃないことに気づきました(笑)。あれはすごいと思いますね。小学校でも中学校でも美術は3だったのに、これは違う、私は本当は上手なんだって思い込んでいたのですから。

 先に紹介したとおり安藤は優れた画家だ。それが小中学校時代は上手ではなかったという。だが母親が褒めて褒めて一種の暗示をかけたのだろう。自分を信じて精進すればこんなに優れた画家になれるのだ。
 このことは、同級生の小磯良平より下手だった山口長男が戦後最高の画家になった例や、絵が描けないと言ったフランク・ステラが世界のビッグネームになった例、「ニューマンには幸か不幸かそのカラーフィールドと垂直線の絵の前史に、貧弱なわずかの水彩画しかない」と書かれたバーネット・ニューマンが抽象表現主義のトップに立ったエピソードを思い出させる。


小磯良平と山口長男(2006年3月14日)
偉大な画家は下手な画家(2006年11月17日)