コバヤシ画廊の窪田俊三追悼展を見た


 東京銀座のコバヤシ画廊で窪田俊三追悼展を見た。残念ながら4月6日までだったので既に終わってしまったが。窪田は1945年、神奈川県川崎市生まれ。1970年に多摩美術大学大学院を修了している。同年銀座の竹川画廊で初個展、以来さまざまな画廊で個展を開いている。まだティッシュペーパーを木工ボンドで貼り合わせた立体の制作などを構想していたが、昨年4月21日に突然の病気で亡くなってしまった。67歳だった。
 今回の展示は「追悼展」とあるように窪田が亡くなったあと、次回の個展のためにすでに準備されていた作品を展示したもの。すべて90cm四方の大きな作品が9点並んでいる。近づいてみると、それらは点描で作られている。



 窪田のテキストから、

今回の色の点は、己の身体(特に腕・手)の動きと格闘しながら行っています。/パネル(ベニヤ半分)にキャンバス布を張りつけ油絵具を下敷きにヘラで伸ばし2ミリぐらいの点を棒で繰り返し押しつけています。平面と言うか表面との戦いで無意味な行為にも受け取れますが、己にとって無心に時間と向かい合う中である種の喜びと、達成感を感じるから不思議です。それはスポーツ的な運動の連鎖に近いものです。そこにおいては観念的なコンセプト・構想性・人間の感情・情感はここには存在しません。しいて言えば点と点がひしめきあい、自己的に考えれば中性的磁場の止揚が感じられるとでも言っておきます。油絵具の乾きの遅さが作業を効率的にし、押しつける事によって私の狙いとする乾いた触感が得られたと同時に永遠の輝きも得られたと思っております。遠近感・ボリューム・躍動感・筆のタッチはなく、在るのは隙間を埋めていった雑多な色の点があるのですが、作業はヨットで世界一周するくらい体力と気力の勝負です。しつこさが最大の武器。

 「己にとって無心に時間と向かい合う中である種の喜びと、達成感を感じるから不思議です。それはスポーツ的な運動の連鎖に近いものです」と言っているのが印象的だ。9点の作品はみな似ていて、ほとんど区別がつかないほどだ。それらが画廊の空間の中に静かに緊張感を持って存在している。窪田の作品は1点だけで成立するものだが、このような形で画廊に展示されているのを見れば、いわばインスタレーションのように全体で一つの作品とも言えるだろう。川村記念美術館にあるマーク・ロスコの部屋を思い出した。
 窪田が亡くなっているので展示そのものはコバヤシ画廊の小林さんが担当されたという。だからと言ってこの展示空間が窪田の意図と異なるとは言えないだろう。むしろ窪田の作品の理想的な展示だと言えるのではないか。
 それにしても、膨大な数の点を打つこの作業はどれほどの時間がかかっているのか。先のテキストでも窪田は「作業はヨットで世界一周するくらい体力と気力の勝負です。しつこさが最大の武器」と言っている。
 窪田俊三は67歳で亡くなった。まだ今後の展開も考えていたという。だが、亡くなってみれば、窪田の仕事が完成を見ていたと言うことができるのではないか。「達成」という言葉を使っても良いと思うのだ。
 ※写真はすべてコバヤシ画廊提供。
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窪田俊三追悼展
2013年3月31日(日)−4月6日(土)
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コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/