ヒノギャラリーの多和圭三展を見る


 東京八丁堀のヒノギャラリーで多和圭三展が開かれている(1月31日まで)。多和は1952年愛媛県生まれ、1978年日本大学芸術学部美術学科彫刻専攻卒業、1980年日本大学芸術学部芸術研究所修了、2009年多摩美術大学彫刻科教授就任、現在に至る。
 1981年真木画廊で初個展、以来ときわ画廊、田村画廊、ギャラリー現等々で個展を開き、1992年以降はヒノギャラリーで何度も個展を開いている。2010年には目黒区立美術館で大きな個展が開かれた。また各地のグループ展に参加している。
 2010年に目黒区美術館で開かれた多和圭三展のテキストから、

 多和圭三(1952〜)は、ひたすら鉄を叩くことで、鉄の表面にさまざまな表情を現出させ ます。鉄塊と向き合い、その内奥から溢れ出る何かを聞き取り、そして、語らしめるのです。
 「刻む」「彫る」「形づくる」という彫刻の一般的な技法とは異なり、「叩く」という手法で生み出された作品。それは、今までの彫刻と一線を画するものとして注目されてきました。ときに視覚を優先させ形を重視し、あるいは概念的な造形に向かう「現代彫刻」とは一線を画して、多和の彫刻はあくまで身体から発せられ、身体へと向かい、触覚性を回復させる力を持っています。はじめは鉄の圧倒的な質料に対抗して力ずくで振り下ろされたハンマーは、長い時間を経て、鉄といかに対話するかという課題を模索しながら、多和の体を通しての思考そのものとなりました。

 多和は鉄をひたすら叩いて大きな立方体や直方体の立体を作ってきた。目黒区美術館の1階のスペースに置かれた1メートル四方くらいの鉄の立方体の重量を訊くと、美術館のスタッフが5トンですと教えてくれた。だが、2階にはもっと大きな作品があった。
 もうそれだけで圧倒された。大きな鉄の立体の存在感は半端ではない。表面は叩きに叩いた槌の跡が無数に残っている。ただ造形的にはきわめて単純だ。ミニマル・アートとの関連も否定できない。
 鉄の立体といえばリチャード・セラを思い出す。巨大な立体を制作していて、広場を壁のような鉄の作品で分断して、市民からのクレームで撤去したことがあったくらいだ。豊田市美術館にもセラの大きな作品が屋外展示されている。もっともセラの作品としては決して大きなものではないが。
 昔読んだ美術評論家の文章に、鉄の塊はそれだけで見る者を魅了するとあった。あれは誰の文章だったのか。

 今回ヒノギャラリーでは大きな鉄の作品が2点展示されている。DM葉書にも使われている巨大なサイコロのような作品は、3x4x3の36個のピースからできている。1個が100kgとして、約3トンになる。既存の鉄の何かから切り出して、削ったりして作っている。文字のようなものが見えるのは、元々の書き込みらしい。

 もう一つの作品も既存のものから切り出して表面を磨いている。やはり同じ様な重量があるようだ。
 多和の作品はもの(具体的には鉄)の存在を訴求するものなのだろう。本当にすごい存在感だ。これを見ればヒュームもバークリーも自説を撤回するかもしれない?

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多和圭三新作展
2015年1月13日(火)−1月31日(土)
11:00−19:00(土曜17:00まで)日曜・祝日休廊
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ヒノギャラリー
東京都中央区入船2-4-3 マスダビル1階
電話03-3537-1151
http://www.hinogallery.com
JR線・地下鉄日比谷線「八丁堀」駅A2番出口より徒歩5分
地下鉄有楽町線新富町」駅7番出口より徒歩5分