東京都庭園美術館のボルタンスキー展を見る


 東京港区白金台の東京都庭園美術館でクリスチャン・ボルタンスキー展が開かれている(12月25日まで)。ボルタンスキーはフランスのアーチスト。展覧会のホームページから、

フランスの現代美術家クリスチャン・ボルタンスキー(1944年−)は、映像作品やパフォーマンス性の高い作品を制作していた初期から現在まで一貫して、歴史の中で濾過される記憶の蘇生、匿名の個人/集団の生(存在)と死(消滅)を表現してきました。

 以前東京都美術館で、古い箱とそこに貼られた顔写真の作品―死者の記憶としてのそれを見たことがある。強く印象に残った作家だった。それで楽しみにして見に行った。
 本館2階の部屋に影絵の作品があった。隣りの部屋ではノイズに合わせて赤い電球が点滅している。ノイズはサンプリングされた心臓音とのこと。またぼそぼそと話し声が聞こえてくる場所もあった。パンフレットには「さざめく亡霊たち」とある。
 新館に移動した。大きなギャラリーに半透明の薄いカーテンのようなものが垂れ下がっている。そこには何十という大きな目がプリントされている。カーテンの中央に盛り上がった金色の山がある。パンフレットによると金色はエマージェンシー・ブランケットで、それが大量の古着の山を覆っているのだという。
 新館のもう一つのギャラリーでは、床に藁が敷かれており、中央の大きなモニターに風鈴が吊られたたくさんの棒が映し出されていた。チリのアタカマ砂漠だという。モニターの反対側にも映像が映っていて、そちらは香川県の山の中腹にある竹藪だ。
 これらの展示を見終わって何とも期待外れの気持ちをどうしようもなかった。メッセージを造形化しきれていないと思った。いずれも舌足らずの印象が強かった。

 期待外れの気持ちをいやすために隣接する自然教育園へ行った。東京のど真ん中に里山に近いような自然が作られていた。池の周囲にはたくさんの秋の草花が咲いていた。ヒメガマの穂が見られた。ひと月ほどすると因幡の白兎の傷を治した白い綿に変っているのだろう。野生の小さな白い菊も何種類も咲いていた。ここには昔誰かと来たような気がするが、もう誰だったか忘れてしまった。