MAHO KUBOTAギャラリーの多田圭佑展「エデンの東」を見る

 東京神宮前のMAHO KUBOTAギャラリーで多田圭佑展「エデンの東」が開かれている(12月22日まで)。多田は1986年名古屋市生まれ、2010年に愛知県立芸術大学美術科油画専攻を卒業し、2012年同大学美術研究科博士前期課程を修了している。2007年に名古屋造形大学で初個展、私は秋葉原にあったJIKKAというギャラリーで見てブログに紹介している。
 今回多田の2つのシリーズ「残欠の絵画」と「trace/wood」が展示されている。それについて、ギャラリーのHPに次のように書かれている。

2016年に制作をスタートした「残欠の絵画」の一連の作品では、果物や花、キリスト像などの象徴的な静物や仮想世界の風景を主題として、絵画の表面がひび割れ、所々剥落したペインティングを制作してきました。ヨーロッパの古典絵画のように見えるその質感はまるで作品が遠い昔に描かれ、年月を経て徐々に古びた風合いに変化してきたように見えます。描かれているモチーフには特別な意味はなく、現代に存在する事物を作家はシンプルに視覚的なアイコンとして扱っています。絵画の技法を通して作られた虚構の時間の気配がこのシリーズの蠱惑的な魅力を際立たせています。
一方、2015年に第1作が制作され、進化し続けている「trace/wood」のシリーズは、一見、木材を張り合わせて作った支持体にガラスや金属の破片をランダムに配置し、その間を絵具の色彩がつないでいるような、異素材によるアッセンブラージュ的な成り立ちのペインティングに見えます。しかしこれらの作品は実際にはモデリングペーストやアクリル絵具等、絵画を成立させるマテリアルのみで制作されており、純粋なペインティングとしての素性を保持しております。
いずれの作品も「目に映るものの正体を疑え」という強いメッセージを発しており、今回の新作展では作家の仕掛けるギミックにさらなる磨きがかかり、鑑賞者の視覚情報と認識そして概念の力学に干渉し、新たな驚きをもたらすことになるでしょう。








 「残欠の絵画」シリーズも「trace/wood」シリーズも優れた写実技法で、それらを単なる写実絵画に終わらせないでいるのが素晴らしい。「trace/wood」シリーズは、実際の床板や壁板を剥がしてきて設置しているように見える。少なくとも板材は本物でそこに絵具を塗っているかのように錯覚させられる。優れた描画技術を持っているのだ。
 このご時世でありながらほとんど完売していた。
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多田圭佑展「エデンの東
2018年11月21日(水)−12月22日(土)
12:00−19:00(日月祝休廊)
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MAHO KUBOTAギャラリー
東京都渋谷区神宮前2-4-7
電話03-6434-7716
http://www.mahokubota.com
※ギャラリーは、東京メトロ銀座線の外苑前駅3番出口を出て、青山通りを渋谷方向に進み、南青山3丁目の交差点を右折、外苑西通りを進む。途中ワタリウム美術館があるがそれを通り過ぎ、神宮前3丁目交差点を右折、まもなく熊野神社があるのでその手前を左折して、最初のT字路を左折すると看板が見える。外苑前駅から徒歩6分。