2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

やまだ紫の『樹のうえで猫がみている』を読む

やまだ紫の『樹のうえで猫がみている』(筑摩書房)を読む。詩とイラストをそれぞれ一つずつ、見開き2ページに配置している。全部で43篇、94ページ。往復の通勤で2度も読んでしまった。 その詩「視線」とイラスト数点を紹介する。 かがみ込んで カーペット…

タイトルがエッチっぽい『快感回路』を読む

デイヴィッド・J・リンデン/岩坂彰・訳『快感回路』(河出書房新社)を読む。副題が「なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか」とある。何か期待して読んでしまった。「プロローグ」から、 非合法な悪習であれ、エクササイズ、瞑想的な祈り、慈善的な寄付…

山口百恵『蒼い時』を再読する

先日、中川右介の評伝『山口百恵』(朝日文庫)を読んだので、彼女自身の自伝『蒼い時』(集英社)を32年ぶりに読み返す。山口百恵が結婚・引退に際して執筆したもの。前半の自伝と、後半のエッセイからなる。自伝部分は、出生、性、裁判、結婚、引退、随想…

中川右介『山口百恵』を読む。

中川右介『山口百恵』(朝日文庫)を読む。5月末に発行された文庫本の書き下ろしで、これが初版になる。「はじめに」で書いている。 この本は、8年にわたる芸能活動での山口百恵の当時の「発言」をベースに、関係者が当時あるいは後に語ったこと・書いたこ…

6月の公園の動植物

6月の公園の動植物を見た。アジサイは種類が多いので正確な名前は分からない。青がきれいだ。 大型のサルビア。サルビア・ガラニティカSalvia guaraniticaというらしい。この花も青だ。 半夏(カラスビシャク)が生育している。ここから名前を取った暦の半…

ギャラリーαMの俵萌子展がすばらしかった

東京千代田区東神田のギャラリーαMの俵萌子展がすばらしかった。残念ながら23日に終わってしまったが。 俵萌子は1978年静岡県生まれ、2001年に大阪教育大学教養学科芸術線香美術コースを卒業している。個展はOギャラリーeyesで2006年より毎年行い、東京のOギ…

CASHIのグループ展「100 degrees Fahrenheit vol.3」の出野虹大がおもしろい

日本橋馬喰町のギャラリーCASHIでグループ展「100 degrees Fahrenheit vol.3」が開かれている(6月30日まで)。石川優太、中村桜子、出野虹大の3人が出品している。画廊が用意したちらしには、 この度CASHIでは若手作家で構成するグループ展「100 degrees …

みゆき画廊46周年記念「小さな絵展」

東京銀座6丁目のみゆき画廊が開廊46年目を迎え、「小さな絵展」を開いている(6月30日まで)。0号以下の小さな作品を依頼された90人の作家が90点の小品を寄せている。さすがはみゆき画廊、参加しているのは中堅〜大御所の作家たちだ。みな片手間ではなく…

子猫と大人猫はどちらが魅力的か

うちのチビの11年前の写真が植物図鑑に載っている。イネ科のエノコログサを紹介するページで、ネコジャラシの別名があることを言っている。そこにこの写真を出し、「エノコログサの穂にはネコがよくじゃれる。」というキャプションを付けている。 そのため家…

仕事のコツ

4月の新入社員向けにはずいぶん遅すぎるし、五月病対策にも遅れてしまったけれど、一応サラリーマン歴30数年の実績から、偉そうに仕事のコツと銘打って何程か書いてみる。 私は仕事に関してストレスを感じることが少ない。それは性格なのかもしれないけれど…

『わの会の眼』に掲載された山本弘「赤鬼」

「NPO法人あーと・わの会」という美術コレクターの会がある。その会が最近『わの会の眼』という本を発行した。会員たちが自慢の作品を持ち寄って150点を選び、作品の写真と持ち主の文章を見開き2ページにまとめて300ページ余の立派な画集を作った。 会員の…

半藤一利『荷風さんの昭和』を読む

半藤一利『荷風さんの昭和』(ちくま文庫)を読む。昨年読んだ同じ著者の『荷風さんの戦後』(ちくま文庫)の姉妹編。おもに戦前から戦中の荷風のことが『断腸亭日乗』を参照しながら書かれている。半藤は荷風が好きなので、視線が暖かく読んでいて好ましい…

パウル・ツェランの詩

読売新聞の書評欄に『パウル・ツェラン全詩集(全3巻)』(青土社)が刊行されたと菅啓次郎が紹介している。 ……パウル・ツェランといえば20世紀ドイツ語詩の巨星として必ず名前があげられる人だが、1992年に出た中村朝子訳3巻本『全詩集』の改訂新版が刊行…

「ギャラリーそら」がオープン

東京日本橋に「ギャラリーそら」がオープンした。ここは元ギャラリー汲美があった場所、汲美のオーナーの磯良(いそら)さんが亡くなって、そのまま空き室だった。それでほとんど居抜きのような形で、基本的な間取りは変更することなく、6月15日にギャラリ…

タイ系アメリカ人作家の『観光』を読む

タイ系アメリカ人作家ラッタウット・ラープチャルーンサップの短篇集『観光』(ハヤカワepi文庫)を読む。作家は1979年にシカゴで生まれ、タイのバンコックで育っている。作品は英語で書いているが、登場人物も舞台もタイだ。とても才能のある作家で、優れた…

朝倉響子の彫刻

朝倉響子の彫刻をときどき街角で見掛ける。日本橋プラザビルの前に椅子に掛けた女性像が置かれている。「Jill」と題された細身の若い女性が踵を浮かせ膝を揃えて前方を見て座っている。肘を足の上に乗せ、指を軽く組み合わせている。首が細く長く、シャツが…

『朝比奈隆 わが回想』を読む

矢野暢・聞き手『朝比奈隆 わが回想』(徳間文庫)を読む。これが本当におもしろかった。朝比奈は大阪フィルハーモニーの創立者で日本の著名な指揮者。聞き手の矢野暢は元京都大学法学部の教授。音楽に関する著書もある。京大では朝比奈の後輩にあたる。 戦…

池内紀『東京ひとり散歩』を読む

池内紀『東京ひとり散歩』(中公新書)を読む。2007年から2008年にかけて雑誌『中央公論』に連載したもの。さして期待しないで読み始めたが、大変おもしろかった。東京の25の地域を歩いて、それを紹介している。 日本橋兜町で東京証券取引所を見学する。証券…

『奇想の江戸挿絵』を読む

辻惟雄『奇想の江戸挿絵』(集英社新書)を読む。図版が豊富で見応えがある。「あとがき」から、 本書の企画は、北斎以外の絵師による、ほとんど知られていない挿絵の傑作をどこまで掘り出せるかというところから始まった。そこで、編集者とともに奮闘がはじ…

ブリジストン美術館の『あなたに見せたい絵があります。』展がすごく良い

東京京橋のブリジストン美術館で『あなたに見せたい絵があります。』展をやっている(6月24日まで)。ブリジストン美術館と九州の石橋美術館の収蔵品から選んだものだ。つまり、すべて石橋財団コレクションの作品群。すごい! の一言。 ちらしから、 ブリジ…

江戸の言葉

朝日新聞beの記事に「サザエさんをさがして」という連載コラムがある。古いサザエさんのマンガを選んで、当時の風俗を解説するものだ。6月9日のそれは「生ビール」がテーマだった。取り上げられたサザエさんは1957年7月14日のものだ。最初の1コマだけこ…

浦西和彦 編『「酒」と作家たち』を読む

浦西和彦 編『「酒」と作家たち』(中公文庫)を読む。佐々木久子編集長の雑誌『酒』に掲載された作家たちの酒に関するエッセイを編集したもの。文学雑誌と違って作家たちも気楽に書いている。それだけに軽いものが多く、読み飛ばすには最適だが、それでも作…

ゴビンダ・プラサド・マイナリさんの再審決定を喜ぶ

東電OP殺人事件で無期懲役が確定し服役していたネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさんの再審が決定し、釈放されたことを喜んでいる。佐野眞一『東電OL殺人事件』(新潮文庫)を読めば、彼が無実なことは確信できる。もう15年間も服役している。再審…

大久保純一『北斎』を読む

大久保純一『北斎』(岩波新書)を読む。これは葛飾北斎の優れた入門書だ。しかも全編ほとんどカラー印刷で図版が豊富に使ってある。「はじめに」で執筆方針を述べている。 第一に、北斎の人物誌としてではなく、その画業に焦点を当てること。とくに、彼の作…

『ベニスに死す』と『眠れる美女』

マリオ・バルガス・ジョサのエッセイ集『嘘から出たまこと』(現代企画室)には、20世紀に発表された世界の文学35冊が紹介されている。そこにトーマス・マン『ベニスに死す』が取り上げられている。 文士が美少年に恋をした、あるいは情欲に燃え立った、など…

ヨシダグループ会長の金言

朝日新聞土曜日be掲載の「フロントランナー」、6月2日に取り上げられたのは米国ソース王というヨシダグループ会長の吉田潤喜(62歳)だ。吉田は大学受験に失敗した19歳のとき渡米する。空手道場を経営していたが、不況で生徒たちへのクリスマスプレゼント…

上野公園のサツキ展が見事だ

上野恩賜公園噴水前広場で恒例のさつき展「2012さつきフェスティバル」が開かれている(5月30日〜6月4日)。以前は不忍池端で開かれていたが、上野公園に変わったようだ。噴水のある大きな池があったが、それを半分埋め立てて広場にしている。広場の両側…

吉岡まさみのユニークな作品コンセプト

吉岡まさみ展が銀座4丁目のギャラリー58で行われたのは5月7日〜5月12日だった。その1階上にあるStepsギャラリーでも同時開催された。ギャラリー58での展示はこの写真のようなものだった。 画廊の壁面に描かれたような形は実は紙テープが貼られている。…

映画『裏切りのサーカス』と『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』

映画『裏切りのサーカス』を見た。監督がトーマス・アルフレッドソン、主演がゲイリー・オールドマンだ。映画館のホームページにリピーターが多いと書かれていた。また、ちらしにこんなことが書かれている。 ※本作に限り、ストーリー、人物相関図などを、あ…

ヒメマルカツオブシムシ

5月20日に近所の公園の植え込みの白いカラーに甲虫がいた。いや、そろそろヒメマルカツオブシムシが見られるのではないかと探したのだった。ヒメマルカツオブシムシはこの頃羽化して、野外の白い花に集まる習性がある。本種について、安富和男・梅谷献二『…