成年後見の事例検討会(その2)
昨日の記事(その1)の続き。
さて、今回の事例検討会では、経験が豊かなだけではなく、相談にじっくり時間をかけるととともにソーシャルワーク的なところまで配慮する司法書士が講師だった。名前を出すと彼がさらに忙しくなりそうだから止めておく。また提供された事例はずいぶんとフィクションに仕立てて原形を留めないようにしてくれたのだが、それでも資料管理と情報についての配慮から、あまり詳しいことをここでは出さないことにする。ほとんど具体像が描けないくらいに大雑把な話をする。ご容赦ください。
多重債務に苦しむ人の例。いや苦しんでいるのはむしろ周囲の家族で、本人にはあまり自覚がなさそうな節がある*1。ひとまず早急に行うべきヤミ金・サラ金対応(脅迫的な取り立てによる精神的圧迫の解消と、債務の整理、不当な取り立ての処理など)は進めるものの、それだけでは終わらない。これまでの生育歴・教育歴などにおいて見出されなかったが、軽度の知的障害が疑われる。
結局、姉が保佐人として付くことになった。
事例検討では、審判が安易に重く流れないようにすること、ただしそのためには家族や支援者の支えを確保することなどが示された。
と同時に、エンパワメントと保護の相克についても悩ましい問題であることが指摘された。
もうひとつ、実務的に考えさせられたのは、家族間の利害対立を明確にするとともに、そのうえで彼らを協力者・支援者として本人の周囲に居ていただくようにする、その姿勢や手腕である。
親族が近くにあって後見人等となることは少なからずあるのだが、その際にはどうしてもパターナリスティックになる。だからいずれは第三者に移行すべきであるというのは良く言われるところ*2。しかし今回はそこまでの対応は困難で、親族が保佐人となっている。
そのような場合には(上記のように)保護的対応は良く指摘されるのだが、もうひとつ、今回の司法書士は、保佐人と被保佐人の間にだって緩やかな対立はあるのだということを、当の保佐人である姉に説明する。明確な利益相反という話ではない。そうだったら保佐人にはなりにくいだろう*3。被保佐人の行動によって保佐人である姉はこれまで多くの苦労を被ってきたとの思いがある。他の家族も困り果てている。そのような過去の記憶や、これからも余計なことはしないで欲しいとの気持ちは、本人とは対立的に働くだろう。ただしこのようなことは場合によっては保佐人である姉の表面的な意識としては明らかになっていないかもしれない。それを司法書士は丁寧に説明する。
そして、本人同士の対話を通じてお互いの問題と気持ちの表明と理解を促す努力をした。いわばコミュニケーションを交わすことによる相互理解ということか。言うは易く行うは難しだろう。しかし司法書士は、単なる対立から、自分が頑張ることによる相手の改善が結果として自分の利益になることの理解までに心持ちを動かすよう務めたようだ。これは調停手法の援用でもあるらしいのだけれど、ずいぶんと気遣いを果たすものだと感心した。
この他にもいろいろあったのだけれど、あまり出すわけにもいかないのでこの辺にする。サラ金との対応時に留意することや、いわゆるブラックリストの取り扱いなど、流石に実務に長けている方だなあと思われる指摘も多くいただいた。また、初期にご本人・相談者の目の前で多重債務処理やサラ金業者などとの交渉をしてみせることで、目の前真っ暗だった相談者にもこの先があるのだと実感してもらっている、のような手法も教えていただく。教えてもらったからといって私ができるわけはないのだけれど、でもご本人のパワーレスな状態から次にどうすれば良いかの経験的な答えでもあるのだろう。
事例が一通り紹介されると、質疑応答・意見交換。
主立った話題としては次の通り。
- 必ずしも知的障害の判定の無い人の相談、トラブルが多くなっている
- 選挙権の問題
- 類型判断の問題(安易に後見とすべきではないとの意見)
- PACガーディアンズとして第三者後見でこれに関わるとしたら
- 生活支援との連携
最後の話題は必ずしも十分議論していただけず、時間の配分を反省している。事例検討会の意義を考えるならば、私たちとしてはどのように対応するべきだろうかが吟味(各種シミュレーション)されて良い。もちろん基本的な知識の補充や手順確認なども必要だが。
課題も見つかったが、同時に、登録者の後見事務に対する方向性が私たちと似たところにあると感じられたことも成果だった。今後はさらにこのような検討会を積み重ねていく。
おもいでエマノン
Amazonでは新品が既に無く、マーケットプレイスの少し高いのだけだった。もう新品がないというのは少し悲しい。鶴田謙二の久しぶりの出版だからみんな買ったってことなのか(私はそれだ)。それとも Amazon がそもそも大して仕入れていないのか。
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エマノンはいったいどういう切っ掛けで、どういう男と結婚するのか(してきたのか)、それを知りたい気がした。また、彼女が死んでしまったら、記憶はどうなるんだろうとの疑問も浮かんだ。原作には書いてあるのだろうか。
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最後に出てくるお母さんが魅力的。あの人であってあの人ではない、その彼女が目の前に存在していることのうろたえともどかしさ。
作品中で「僕」が読んでいた『ハウザーの記憶』は各自で探していただくとして、ふらふらしていたらこんなものも引っかかった。
- 二重スパイ 国際謀略作戦(FILM SEARCH)
- 『コブラ』と『トータル・リコール』/その他の物語(ヒロをぢのマンガ館)