『わかりやすいアジャイル開発の教科書』の予約が始まりました。

今年の5月より前川さん、細谷さんと一緒に執筆を進めていました、『わかりやすいアジャイル開発の教科書』の予約が始まりました。


わかりやすいアジャイル開発の教科書

わかりやすいアジャイル開発の教科書

アジャイルの考え方やアジャイルに取り組む姿勢を学び、プロジェクトで実践する。

これが本書のねらいです。

アジャイルって何?」という方や、「アジャイルがいいみたいだけどどうやるの?」という方など、アジャイルに関心のある方なら誰でも、参考にしてもらうようにまとめた本です。
アジャイル」について学びたいとお考えの方は、是非手にとっていただければと思います。


・・・と、シンプルに紹介して終わってもよいのですが、この「教科書」に至るまでがなかなか苦労しました。
執筆をまとめるにあたり、本書を書いた裏話を書き残しておきます。

日本で「アジャイル」の入門書はなかった?

本書に挑戦したひとつの動機でもあり、そして、最も難しいのがこの疑問です。
これまで、日本人の書いた、「アジャイル」そのものをテーマにした入門書はなかったのではないかと思います。
理由は簡単で、アジャイルに型が無いからです。この手順で開発すればアジャイルだとか、そういったテーマが存在しないのです。

アジャイルの目的は「ソフトウェア開発を通じて、顧客・製品のビジネス価値を最大化する」ことで、
そのための「考え方」やソフトウェア開発に対する「姿勢」に従って進めるのがアジャイルソフトウェア開発です。
ビジネス価値は開発するものやその背景で個々に変わってくるので、自分で考え、取り組むことでしか、答えがみえてきません。

そこで、私たちが今回まとめた『わかりやすいアジャイル開発の教科書』では、
アジャイルの理論を文字数を割いて解説することよりも、読者のみなさんに考え、取り組んでもらう仕組みを本にしてみました。
どうやってビジネスの価値を知り、実践につなげ、考え方として身につけるのか。
そういった目的意識を感じ取っていただき、読み進めてもらえれば、自ずとアジャイルな開発が何なのか、チーム全体で感じ取っていただけるようになると考えています。


どうやって「日本のアジャイル」をつくっていくのか。これまでの取り組みと本書のアプローチ。

本書の背景には、アジャイルジャパンでの活動があります。

思い返してみると、2008年の年末にかかってきた電話が一つの転機でした。
「日本でアジャイルのイベントをやってみようと思う。手伝ってほしい。」
平鍋健児氏(株式会社チェンジビジョン)からの提案がこの本を書くことに至ったきっかけです。2009年4月に、私が実行委員として企画・推進している「アジャイルジャパン」の第一回目が開催されました。
アジャイルジャパンでは、「アジャイル」をテーマに、開発者やマネージャに呼びかけ、開発事例の紹介や、アジャイル開発の効果を体験して現場に持ち帰るためのワークショップを用意しました。参加者にはこのイベントで気づいたこと、考えたことを現場で実践してもらうことで、その次のアジャイルジャパンで共有することができます。こうした事例や考えた結果が集まり、さらにそれが日本中に拡がっていく。私たちアジャイルジャパン実行委員会は、こうしたサイクルを回すための「場」を作ることに注力しました。この活動を通じ、「日本のアジャイル」をみんなで創っていきたい、また、ソフトウェア開発をよりよくしたい、そしてそれに関わる人たちをハッピーにしたい。そのような想いで毎年アジャイルジャパンを開催しています。
こうした活動の効果もあってか、2012年のアジャイルジャパンには日本全国で700名以上の参加者が集まりました。日本においてもアジャイルに対する関心が年々高まってきていると感じています。

あとがきより

本書で何度か述べていますが、アジャイルソフトウェア開発はソフトウェアの開発を通じて、ビジネス価値を最大化するための「考え方」や「姿勢」です。
アジャイルジャパンという「場」で見えない考え方や姿勢を知ってもらうことはできるのですが、アジャイルジャパンに参加しようと考える前の方に、アジャイルとは何か、どのように取り組むのかを簡単に伝えるための「入門書」が、これまで日本には無かったのが課題でした。
今回、この入門書の執筆依頼をいただき、いかにアジャイルの「考え方」や「姿勢」を知り、現場やビジネスをよりよくするための実践に繋げてもらうかを共著者の前川さんや細谷さんと考えました。前川さん、細谷さんは開発の業務を担当されながらの執筆にも関わらず、これまでのアジャイルソフトウェア開発に関するノウハウをたっぷりと本に書きだしてくれました。また、本当にたくさんの人から原稿のレビューや参考資料のご提供をいただきました。本当にありがとうございました。
こうした背景もあり、本書の執筆は私にとって、「日本のアジャイル」をまとめ、みなさんにお伝えするという、すばらしい活動になりました。
本書を手にとっていただいたみなさま、みなさんのチームのメンバー、お客様がハッピーになるお手伝いができればと思います。