よしながふみ対談集

よしながふみファンはもちろん、一般的なマンガ好きにも向けてつくられたような対談本。くらもちふさこの(再)評価をはじめ、少年マンガと少女マンガ、JUNE系とBL、同人誌と商業誌を比較したり、やおい、フェニミズムなどについて、自身の背景に触れつつ語っている。作品を通じて作家を知っているつもりになっていたので、なるほど、やっぱり、と腑に落ちる発言が多かったのだけど、24年組についてのくだりには軽く度肝を抜かれた。

私の描くものをおもしろく思わなくてもいいから、とにかく(過去と現在が交錯するような、時系列順とは限らない)文法に慣れてもらって、何かのきっかけで大島さんなり萩尾さんなり山岸さんなりの作品を読んだときにおもしろいと思ってもらうための訓練になればいいと。
(中略)
私の最大の願望は、24年組に辿り着いた後に、今度はもう一度その血脈を受け継いで次の新しい人が出てきてくれることですね。
(pp56-57、括弧内は引用者)

ここまで謙虚で自分の役割に自覚的なマンガ家の発言はあまり聞いたことがない。他の箇所では、最近では(『少年ジャンプ』を代表とする)少年マンガに圧された少女マンガが読者を減らしていると指摘されているけど、実際、少女マンガはいったん離れるととっつきにくいジャンルでもある。久しぶりに読むと読み方を忘れていて疲れたりする。こういう読者の慣れや訓練の問題がある一方で、近ごろは作者の性別や絵柄からは、少年マンガとも少女マンガとも判断しにくい作品が増えている気がする。このボーダーレス化はどちらかといえば、少女マンガの少年マンガ化なのだろうか。ともあれ、こうして24年組のような少女マンガの核心に触れる読者は減りつつあるのかもしれない。
さて、以下も、一瞬どーかと思いつつ、きわめてよしながふみらしい発言で恐れ入ってしまった。