『虚ろな十字架』を読んだ

以前娘を殺され、今度は別れた妻が殺された。元妻を殺した犯人の義理の息子の謝罪。単なる強盗殺人と思われた事件の裏に隠れた真相。
罪を犯したので数十年服役する、それで更生するといえるのか。死刑になることで殺された命が蘇るわけではない、しかし死刑でしか通過できない遺族感情がある。何より死刑になった犯罪者はもう新たに人を殺すことはない。罪を犯しても一生懸命自分の人生を捧げて贖罪をする人がいる、その人を刑務所に入れることが正しいことなのか。
重い。重かった。前半の娘の事件の裁判の展開と死刑制度廃止論への反論に動く元妻に対しては全肯定の気持ちで読んでいたが、後半になるにつれ複雑な事情が絡み心が揺れ、さらに全体の真相がわかってきた時はそれぞれの事情の重さに、本当にこれでいいのかと自分自身も悩みながら読んでいた。むしろ罪を犯した側が罪の意識を感じずあっけらかんと過ごしていたほうが救いになっていたと思えるくらい。罪の意識に本当に悩み、それで人生が狂ったともいえる生き方に果てしない重さを感じた。


読了後に改めて表紙の樹海を見て、タイトルの「虚ろな十字架」の意味を考えるとまたたまらなく重い気持ちになる。重かったが読んでよかった。考えさせられた。


虚ろな十字架

虚ろな十字架