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モーションのはて

2008-02-22 高機能リグの罠とシンプルリグのすすめ

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モーションを作るうえで欠かせないのがリグの存在だ。

細部まで分業化された会社によっては、このリグをセットアップするのを専門とする「リガー」と呼ばれる人達がいるらしい。だがほとんどの場合、そのモデルを制作したモデラーか、モーションデザイナーがリギングする。

リギングの技術はモデラーとモーションデザイナーをつなぐ技術といえる。モデラーとモーションデザイナーがコンセサンスをとるほどより良いリグが出来るということだ。

よく出来たリグは、モーション制作に大きな恩恵をもたらす。それはフェイシャルや、指先の動き、制御のしやすさ等、細かなところまで行き届いた制御だけではなく、生産スピード、クオリティー、動きの発想にまで影響を及ぼす。


では、良しとされるリグとはどんなリグだろうか。

いろんな機能が盛り込まれた、気の利いた高機能なリグだろうか。それとも最低限5体満足に動かせられるだけの手抜きのようなリグだろうか

この認識の違いが、ひょっとしたら、我々日本の3DCGアニメーターに大きな影響をもたらしているのかもしれない。

私が思うに、どうも日本では高機能リグに注目が集まっていると感じる。いや、日本だけではなく、世界的に見てもそういえるかもしれない。具体的に例を出すと以下のようなリグが、「良し」とされているようだ。

  • 制御出来るコントローラーが豊富で、細かな制御が可能。
  • 体に埋まらないよう回転にリミッタがかかっている
  • 足が地面に埋まらないような機能がついている(フロアコンタクト)
  • IKとFKを切替られる
  • モデルが捩れたときのための制御ヌルがある
  • 指先にまで、IKが入っている
  • フェイシャルに対応済み
  • オートで肩が動く

つまり至れりつくせりってわけである。

いろんな会社を見てきたが、モデラーがリグを自由に入れられる環境がある場合彼らは、非常に高機能なプロご用達といった感じのリグを用意してくれる。

そう。高機能リグであるほど、モーションデザイナーが喜んでくれると思っているのだ。そして、事実モーションデザイナーは、それを喜ぶ。もしかしたら、更に細かな要望を要求するかもしれない。自分で、更に高機能なリグを提案するかもしれない。

もはや高機能リグが「良し」とされてるのは常識のようだ。




ここからが本題になる。

その常識はかなりやばい。

モデルのウエイトを調整するために、肩や関節の骨が増えてゆく。ってのは仕方ないしアニメーターとしてそれほど問題はない。

しかし今現在の日本において多くのCGアニメーターが(特に新人や卵)この無意味に高機能なリグに喜び、結果使いこなせずいいモーションにたどり着く前に、終了を迎えるているのだと思う。

「機能が多い=いいモーションがつけられる」ではない。むしろ逆「機能が多い=手間が増える」こう解釈したほう真実に近い。

アニメーションに限らずだが、何かの物事を解決しようとするとき、その解決に用いたパッチが、他の問題を引き起こすことがある。

失敗すれば芋づる方式で問題は増える。

通常であれば、それは技術向上のための必要悪とされる問題かもしれない。しかしアニメーションの場合は、そのデメリットが想像以上に大きいのだ。ファンクションカーブの数が2倍になれば、制作スピードも2倍以上になるしクオリティーにも影響が出る。修正も容易ではなくなるだろう。リミットやフロアコンタクトがあるということは、Fカーブが読めないなど多くの自由を失うことになる。選択するコントローラーが多いということは、選択の手間が増えるということだ。

何よりも、モーションデザイナー本来のスキルである「いい動き」を作る過程において大きな荷物になる。

高機能リグを使いこなせている?その前に、そのモーションはいい動きなのか?世界に誇れるモーションなのか?細かなところまで動いている=いいモーションだとでも思っているのか?

大事な事を見失ってはけない。最も優先するべきは何かを知っていれば、問題を問題としないという選択肢も出てくるはずだ。

高機能リグのメリットばかり見てきたモーションデザイナーてのは、ツールに酔っている人間。もしくは、「いい動き」を追求することから逃げた人間だ。

この高機能リグの罠に気付いているモーションデザイナーはどれほどいるだろうか?そして、モデラーはその事実に気付く機会はあるのだろうか。

例えば大量のモブのアニメーションをつけなければいけないのに、指先まで骨の入ったリグで作れと言われたら、とてつもなく迷惑である。

それを理解できるのは、モーションデザイナー自身しかいない。もし、リグを入れるモデラーや、リギング専門の人がいたら、モーションデザイナーは、モデラーやリガーにぜひその意見を伝えるべきだ。伝えなければ、この先も我々モーションデザイナースキルUPのスピードに加速は望めないのだから。

揺れものや指先まで動いているしょっぱいモーションと揺れものなし指アニメなしの、活き活きとしたモーション。観客が感動するのは、はたしてどちらか・・・。

もちろん、活き活きとしたモーションで、指先まで動いていれば最高なのだが。今の日本でそのステージに立てる人は、少ない。

補足
この理屈には「対象が限定」されることと「例外」が存在する。

「対象」・・・新人、及びいつまでたっても成長しないモーションデザイナー。(主に日本)
新人に関しては、まず基礎的なモーションを教える上で、余計な制御は蛇足になる。まだ早い。成長スピードに影響する。いつまでも成長しないデザイナーは、その基礎が出来る前に、高機能リグの魔力に取り付かれた成れの果てだ。

「例外」・・・行き詰った人、及び、出来るモーションデザイナー。そしてアップショットのように細かい制御が必要なシーンを作るとき。(主に世界)
例外は、基礎がしっかり出来ている人の次のステップと考える。また顔のアップ、フェイシャルのシーンでは高機能リグの存在が必要になる。(これに関しては、全体のモーションとは別に用意するべきだと思うが)

leavedgeleavedge 2008/02/23 00:30 苦労して自分なりに凝ったリグ組んで、いざ動かそうとしたら
なんだか不自由で、結果つまらない動きになっちゃった経験ありますわ・・・

mocebmoceb 2008/02/29 02:36 >leavedgeさん
失敗を経験して、それを自覚できれば、学習することは出来る。
しかし、それが失敗だと気付けるだけの物差しがない。
この職業はまだまだいろんな作り方の可能性を持っていると思います。リギングを極める楽しさが存在するだけに、それを捨てることは難しいのですけどね。

一アニメーター兼リガーです一アニメーター兼リガーです 2009/10/24 00:35 非常に興味深く読ませていただきました!
とてもよく分かります!!
自分はあまりリガーの知り合いが居なくて…こういったお話ができる人が周りに居ないんです。
もうブログは書かれていらっしゃらないのですか?
他の記事も拝見しました、もっと読みたいです^^