フィッシュストーリー


 伊坂幸太郎の同名小説の映画化。監督は「ゴールデンスランバー」「ジャージの二人」の中村義洋監督。4つの年代をつなぐお話の構成は面白く、まあ、ちょっとマンガチックな?SFっぽい作り話(フィッシュストーリー=ほら話)だが、よくできていた。
 昭和初期の頃に翻訳された「フィッシュストーリー」という本(素人の滅茶苦茶な翻訳で回収されたものなのだが)が1冊だけ残されていた。1970年代まだパンクが流行る前、ある売れないバンドのリーダーがその本の中にある文章を引用して最後のレコーディングとなる曲の歌詞を作成した。それは、レコード化されたが、やはり売れずその代わりに、レコーディングの時にヴォーカルがいらぬセリフをしゃべったため、無音の部分が作られた。その後、ちまたではその無音の部分に女の悲鳴が聞こえるということで、曰く付きの曲となる。1980年代、ある日その曲を聴いていた大学生が初めて逢った女子大生に「ここにいる誰かが地球を救う」と予言される。彼は、アッシー君として扱われ、その「フィッシュストーリー」を聞きながら、自分のいくじのなさに嫌気をさしながらの帰り道。ちょうど無音の部分の時に女性の悲鳴を聞く、車から降りると女性が男に強姦されようというところに出くわし、彼は勇気をふりしぼって女を助ける。その後、彼は彼女と結ばれ男の子を授かる。彼はその男の子を「正義の味方」として育て上げる。そして2000年代、修学旅行で偶然乗船していた女子高生をその「正義の味方」として育てられた船の乗務員がシージャックから救う。その女子高生は、その後優秀な学者となり2012年、彗星が地球にぶつかるというところを、ある計算によって核ミサイルを彗星にぶつけることに成功し、地球は救われるというお話。
 売れないバンドのことが、主に描かれるのだが、そのバンドの雰囲気もよく、音楽を監修しているのが斎藤和義で、音楽もよい。これだけの「ほら話」をおもしろ可笑しく描けるってやはり監督の力があるんだろうな。A
2009年 中村義洋監督