タイムマシンは低金利には勝てなかった

21日は36年前に書かれた原作第1話のドラえもんのび太の出会いを放送。また、ネズミに遭遇したドラえもんのリアクションやジャイアンの歌など27年間の放送の中での名場面をランキング形式で10位まで発表する。

オールドドラえもん、最近やってるのかどうか知らないけどそのうちルパンの特番みたいになるのかしらね。
ところでドラえもんの古い話といえば、たまに思い出すエピソードがあるのだ。銀行に行った時や新聞の金融面を読んだ時に思い出す話だ。

この話のトリガーになったのはパパの安月給である。のび太はパパとボーナスが出たら新しい自転車を買ってもらうという約束をしていたのだが、パパの会社の業績が悪くてボーナスの支給額が少なかったために自転車の約束は反故にされてしまった。
そこで例によってドラえもんに泣きついたのび太君が思いついたのが銀行ウハウハ作戦である。パパのボーナスを銀行に定期預金で200年間預ける。そしてタイムマシンで未来にとりに行けば、パパのボーナスは200年分の複利で膨れあがっているので増えた分で自転車くらいは楽に買えるだろう。これがのび太君達の皮算用であるが、こんな話は通らないのがドラえもんのお約束である。
なぜ通らないのか。21世紀の世界に生きる皆さんには自明な話だと思うが、ここではまず20世紀的な説明をする。
タイムマシンで未来に行ったドラエモンは確かに大金を持って帰って来た。それもリュックサックに詰めた札束が溢れるくらいの金額だ。ところがそのお金は200年後のお札なので20世紀の現代では使えないのである。ドラえもんは20世紀の世の中では無価値な札束の山を見て途方にくれて仕方なしにトボトボと戻ってきたのだ。しかしのび太君がここで珍しく知恵を出した。未来でも現代のお札、当時は聖徳太子だったと思うがそれは古銭として売っているはずだから、それを未来のお金で買ってくればいいじゃないかと、そうハッパをかけてドラえもんをタイムマシンで送り出した。
この話は未来では古銭がとても値上がりしていて、自転車の分しか増えませんでしたというところでオチる。古き良き時代、人々が銀行というものをまだ信頼していた時代の話である。
もちろんこの話は21世紀的にはまた別な理由でうまくいかないと説明出来る。20世紀ののび太君達はこんな皮算用をした。銀行に預けるとお金が増える。それも20年で倍に増える。だから200年後には2の10乗、このブログを読んでいる人の半分は2の冪乗は九九と同じくらいに叩き込まれていると思うが、パパのボーナスは2の10乗で1024倍に増えていると見積もったのである。
僕がこのエピソードを最初に思い出したのはこれまたかなり昔の話、銀行のロビーで何かの手続きが終わるのを待っていた時のことだ。暇だったし、ロビーに置いてある雑誌も面白そうなのがなかったので、適当にぶらついていたら、ロビーの壁一面を占める電光掲示板のとある数字に目がとまった。0.050%。定期預金の金利である。
その瞬間なぜか例のエピソードが脳裏にくっきりと浮かび上がり、「ドラえもん、どうするんだろう?」と1人で笑い出しそうになった。
定期預金の金利は今では1桁、ものによっては2桁あがってはいるが、それでも200年で1000倍になるにはほど遠い。