セックスと嘘とライブテープ〜映画『ライブテープ』公開&公開記念オールナイト

ライブテープ オリジナル・サウンド・トラック

ライブテープ オリジナル・サウンド・トラック

 いよいよ今日から松江哲明の新作『ライブテープ』吉祥寺バウスシアター、名古屋シネマスコーレ、横川シネマで公開される。年明けにはPLANET+1、シネヌーヴォXでも上映が始まり、その後順次全国で公開されていく。
 この作品の感想めいたものは、今年の3月8日の完成披露試写で観た際に書いた。→http://d.hatena.ne.jp/molmot/20090308#p1

 以降、東京国際映画祭でも2回観ているが、何度観ても退屈しない。吉祥寺を歩いて歌っているだけの映画なのだ。それがこうも惹きつけられるのは何だろうか。作品が持つ魅力が大きいのは観てもらえれば明らかだが、外的な要因として、上映される劇場によって受ける印象が変わることも大きい。実際、松江監督自身がそういうことを言っているのだが、作り手が商売的に言っているだけなのかもしれないと思う向きがあるかもしれないので、客観的な立場で池袋シネマ・ロサ、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、シネマート六本木で観てきた観客として確信を持って言うが、この作品は本当に観る劇場、座る場所によっても見えてくるもの、聞こえてくるものが違う。では、古い小さな映画館で観るべきではないのかと言えばそれも違う。最強の画質と音響で観たTOHOシネマズ六本木ヒルズも良かったが、自分はシネマ・ロサでの上映の方が好きだったり、最前列に近いところで観たシネマート六本木での迫力も忘れ難かったりする。それだけに吉祥寺バウスシアターでの上映でも当然再見するつもりだが、PLANET+1のサイズで観ても面白いに違いないし、できることなら全国の上映される劇場を追いかけていきたいぐらいだ。あるいはいつか野外上映で観たいという思いもある。


 吉祥寺バウスシアターでは、「『ライブテープ』公開記念&年忘れオールナイト」として今日の23:00からオールナイト上映が行われる。ラインナップは→http://www.baustheater.com/joeichu.htm
 それにしても、松江監督の新作の初日なのだから、普通に考えれば松江哲明オールナイトをやってりゃ良いようなものである。それを松江監督はじめスタッフが関係した作品や吉祥寺に馴染み深い作品を並べるのが良い。何せ『タカダワタル的ゼロ』『谷村美月17歳、京都着。』『後楽園の母』『かえるのうた』をオールナイト上映するというのだから。
 言ってしまえば上映される作品は全部DVD化されているので、わざわざ年末の寒い中オールナイトに行かなければ観られないというレア度には欠ける。しかし、DVD化されていようがレア度に欠けようが重要なのは組み合わせだ。上映作の中では『後楽園の母』のみ未見だが、そこに『タカダワタル的ゼロ』と『谷村美月17歳、京都着。』、そしてとどめに『かえるのうた』が入るという、普通のプログラムでは絶対に同時に上映されないような共通点のない並びが良い。例えばこれが山下敦弘オールナイトとか、いまおかしんじオールナイトならもう何度も劇場で観ているし、DVDも持っているからパスということになりかねないのだが、二度と無い同時上映、それこそ自宅のDVD棚から無作為に取り出した作品を連続して観るようなラインナップが良い。この並びなら観に行きたいと思ってしまう。
 個人的には、劇場で観るのは初めてとなる『谷村美月17歳、京都着。』が楽しみだが、何といっても『かえるのうた』の上映が嬉しい。劇場でも2、3回観ているのだから、もういいようなものだが、この作品だけは別格で、大きなスクリーンで観る機会を逃してはならない。というのも、ピンク大賞の際に新文芸坐で観た『かえるのうた』に驚いたからだ。殊にラストの展開を大スクリーンで観たときには鳥肌が立った。その後、小規模の劇場やDVDでも再見しているがあの時の興奮には至らない。低予算のピンク映画といえども、『かえるのうた』は大画面で観るべき作品だ。
 そして、今回の上映が嬉しいのは、まだ製作から4年ほどしか経っていないとは言え、既に劇場で『かえるのうた』を体感していない世代も増えてきて、偶然今年に入ってから、この作品が死ぬほど好きなのに劇場で観ることが出来ていないという人に続けざまに会った。そういう人に新文芸坐での興奮を話すと羨ましそうにするのだが、大きな劇場で上映される機会がないかと思っていただけに、早くもその機会が巡ってきた。『かえるのうた』を観ていない人、劇場で体感していない人は、ぜひ駆けつけていただきたい。
 ちなみに↓の予告編は一般劇場公開時に松江監督によって作られたものだ。



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