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こちらのブログでは同サービスを運営している百瀬が海外向けECなどをテーマに気が付いたことを書いています。
(このブログは個人的見解であり、所属組織のものではありません。)

2010-06-12

中国向けWebコンテンツとICPライセンス制度についてまとめてみる

最近の自分のTweetを見返してみると中国関連の話題が多くて驚く。他の方の話題に触発されてつぶやくことが多いので、やはり中国向けECというのは関心の高い分野なのだろう。ただし、魅力的だが非常に難しい市場であると認識している。その難しさについて、法律面からちょっと整理したい。

ちょうど今日@hatano_yusukeさんのTweetで次のようなつぶやきがあったのだけれど、

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私の回答は、「Twitterは中国政府の管理がきかないから」。


微博(新浪微博 http://t.sina.com.cn/)は新浪网(http://www.sina.com.cn/)というサービスの一部として運営されているが、このサービスをはじめ中国のインターネットコンテンツを運用するには中国政府機関への届け出(ないし認可を得る)義務がある。具体的には運営者はすべて中国の政府機関へそのサービス内容と運営する企業の登記情報、営業許可書、責任者の名前とその身分証明書、などを届け出てICP番号(新浪网だと、トップページ http://www.sina.com.cn/ フッターにある「京ICP证000007」等が該当)を発行してもらい、これをサイト内に掲載することで政府の認可を得たサイトとしてインターネットコンテンツを運営することができる。下のキャプチャは新浪网での記載例だ。

f:id:mommmmose:20100613015420p:image

届け出た連絡先は、運営するインターネットコンテンツ内に何か問題があった場合に通知が来る。もしも届け出ないでコンテンツを運用した場合は違法サイトとなり、中国外企業(及び中国外サーバ)の場合はIP遮断、中国内企業(及び中国内サーバ)の場合は営業免許取消や罰金などの処分、あるいはサーバ会社やネットワーク会社から取引を断られることになる。

Twitterは前述の分類においては「ICP登録をしていない中国外企業・中国外サーバのコンテンツ」で、中国国内からのアクセスが、当局に目をつけられる規模にあり、かつ中国当局にとって不適切な内容がコンテンツ(この場合おそらく利用者のTweet)に含まれていたため、IP遮断に至ったと思われる。この、中国政府によるWebコンテンツの管理・規制制度が一般的に「ICP規制」と呼ばれている。(※ICPは Internet Content Providerの略)

参考までに、実際に2009年末に発布された某地方通信管理局からの通知はこんな感じだ。

(通知概要)

・凡是未申请ICP备案的网站或未刊载ICP备案号的网站,一经发现即刻予以关闭和通告,并处以罚款。

・即使已经申请了ICP备案的网站,在运营当中擅自取消或更改重要备案信息的,一经发现即刻予以关闭和通告,并处以罚款。

・对网站运营单位不在中国内地的网站,今后也将要求进行备案。


(上記の和訳)

1.ICPサイト登録を行っていない、もしくは登録番号の記載がないサイトについて、当局はサイト運営者に対して即刻サイト閉鎖処分を科すとともに、同時に登録手続きと番号の記載を行わない場合は、さらに罰金処分を科します。

2.すでにICPサイト登録番号の記載があるサイトについても、記載番号が正確でない、もしくはサイト運営者などの登録情報が不正確である場合は、上記1と同様の処分を科します。

3.サイト運営者が中国に住所等の連絡先を持っていないという理由で、これまでICPサイト登録を行っていなかったサイトについても、上記1と同様の処分を科します。

では中国向けに合法的にコンテンツを運営するためにICP規制をクリアするには、どうすればよいのだろうか。

中国政府のルールにのっとって用意をする場合、ICPライセンスを取得する必要がある。そしてICPには2種類ある。種類によって必要とされる要件が異なる。

  1. 非経営性(非営利性)ICPライセンス
  2. 経営性(営利性)ICPライセンス

1つ目の非経営性(非営利性)ICPライセンスは、先程のTwitterやいわゆるコーポレートサイトなどの、お金のやり取りを含まない情報の提供を目的としたサイトに必要とされるライセンス。申請時に必要な情報は以下の通り。

  • 中国国内のコンテンツ収容先サーバ管理事業者情報、サーバIPアドレス
  • 運営者の連絡先(企業の場合営業許可証の番号、個人の場合身分証明書の番号)
  • 運営者が企業の場合主要な投資者(親会社もしくは株主)の情報
  • サイト管理責任者の身分証明書番号、連絡先
  • Webサイトドメイン、提供内容の説明
  • 実際のWebコンテンツ(内容を目視で確認できる状態になってからしか申請できない…)

なお、非経営性に該当する場合でも、次のようなコンテンツが含まれる場合は別途説明資料や営業許可証の提出が求められる。

非経営性ICPライセンスに関しては、上記を揃えて企業(個人)が所属する省(市・自治区)へ申請すると1か月くらいで発行してもらえる。なお、ICPは1企業(1個人)に1つで、同じ企業が複数サイトを運営する場合も届出は必要だが、サイト上では同じICP番号を共有することになる。

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2つ目の経営性(営利性)ICPライセンスは金銭の取引を伴う、いわゆるECサイトに必要とされるライセンス。新浪网が取得しているのもこちらだ。申請時に必要な情報は上記と大きくは変わらないのだけれど、営業許可証の内容として、販売したい商品を業務範囲として申請を行っている必要がある。中国は一般消費財の小売をするにも認可が要る。

この、小売をするための営業許可証が企業に発行される条件が以下のようになっている。※毎年の再審査あり

  • 中国国内法人(外資100%でも可)外資の場合、内資比率が51%以上)*1
  • 現地の情報安全政府機関へ業務範囲の申請を行い、その範囲内で業務を行う
  • 資本金100万元以上(日本円で約1,340万円)
  • 資本金30万元以上(日本円で約400万円)*2
  • 資本金3万元以上(日本円で約40万円)
  • 事業計画の提出

(※実際に中国で外資法人を設立された方からコメントをいただきました。「外資企業に対する資本金外資規制はなくなり、外資100%でも内資100%でも必要な資本金は同じ(3万元)になったが、外資企業は会社設立の際に事業計画を提出する義務があり、事業計画に見合う資本金がないと却下される場合もある。運転資金も考慮すると、いずれにしろ100万元程度の資本は必要になる」とのこと。ありがとうございます。2010/6/15)

2010/6/21追記:また、ネットで小売を行う場合の外資規制等もあるようだ。詳細はこちらにまとめましたので併せてご覧ください。「経営性ICPライセンスの取得条件まとめ」

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なお、非常に興味深いことに、上記の条件をクリアしても、このブログを書いている時点で中国国外の資本が入った外資企業には1件も経営性ライセンスは発行されていないようだ。事実上外資企業が中国国内のECを行うのは困難となっている。

しかし外資(中国国外の資本が入った企業)で、中国内でECを行っている企業は実際にはある。ではどうやってコンプライアンス上の調整をつけているのかというと、既に自社が取り扱いたいジャンルの小売ライセンスを取得している中国国内の企業を見つけ、その企業と提携する形で実現するケースが多いようだ。

要するに、このブログを書いている時点の中国のインターネット業界では、中国内で閲覧するコンテンツは中国当局の管理下にあり、商取引においてはかなり偏った中国内企業優遇政策がとられている。

そのため、中国に向けてECを含むインターネットコンテンツを企画する際には現地企業の協力が不可欠なうえ、ある程度のコストを覚悟する必要がある。もちろん、そんなルールに従わないという選択肢もありだ。中国の法律が影響するのは中国国内だけなので、コンテンツが中国国外のサーバにある中国国外の企業がICPライセンスを取る必要は本来ない。そもそも、インターネットの性質からしてこんなルールは奇妙だ。

ただ、中国市場の将来性に期待する国家や企業は多い。だからやむを得ずそのルールとの接点を探ったり、あるいは戦ったりしているのが現状といえる。では、どんなケースがあるのか、現在折り合いをつけて現地向けECを実現している具体例については別サイトに書きます。

2010年6月14日追記:具体的なスキームはこちらに掲載されました。(長いので前・後編に分けました)

*1:訂正:中国国内における小売の外資資本規制は、中国のWTOへの加盟により以下の通りに変更されています。御指摘ありがとうございました。出資比率制限:原則、出資比率制限なし(独資可)参考:http://www.smrj.go.jp/keiei/kokurepo/kaigai/008020.html 2010/6/14

*2:訂正:中国の会社法改正により外国人でも中国人でも、会社を作るには、業種に関係なく、最低資本金は3万元が必要になりました。2010年6月現在の中国会社法はこちら(中华人民共和国公司法主席令 第四十二号)http://www.gov.cn/flfg/2005-10/28/content_85478.htm 2010/6/15

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