カレンダー・ガールズ

実話にもとづいた、快作である。


 イギリスののどかな片田舎。女性たちの感心ごとといえば、女性連合の集会や催し物だが、これがまた、思わず笑いたくなるほどのつまらなさ。
 そんな時、ウィットに富み、また愛情深かったアニー(ジュリー・ウォルターズ)の夫ジョンが癌で他界。彼女の親友でありジョンとも親しかったクリス(ヘレン・ミレン)は、女性連盟が毎年制作するカレンダーの収益で彼の居た病院への寄付を提案。ところが毎年の収益はといえば、スズメの涙ほど。売上を伸ばすため、彼女が思いついたのは連合の夫人メンバー自らがモデルとなる、ヌードカレンダーだった!!!


 私が彼女たちのニュースを見たのは数年前のこと。さすが、西欧には大胆なことをやるおばさんがいるものだと感心しながらも、そのできばえを怪しんだものだが、今回鑑賞した映画館には実物が飾られており、じっくりと見させていただいた。身体の線こそ崩れているものの、本当にきれいに写っていて、芸術作品でありながら、微妙にエロチックさも残している。この出来上がりなら、確かに映画にもなっておかしくは無い。
 「気持ち悪い」とか「やりすぎ!」とかいう批評もあったようだが、いかんせん彼女たちは最終的に30万部売り上げたこのカレンダーで、一億円相当の癌治療機器を田舎の病院に寄贈しているのである。たいしたものではないか。

 映画は実話を微妙に作り変えた内容となってはいるものの、大筋は同じ。ストーリーとしても楽しめるのと同時に、脚本が非常にうまく、随所でイギリスらしいウィットにとんだやり取りが楽しめ、映画館は笑いの渦であった。私が鑑賞したときは数人のイギリス人らしき観客がおり、随所で「Oh my!!」などという合いの手も入って、なんともほのぼのと見させてもらった。

 アニー役のジュリーウォルターズは、「ハリポタ」のロン・ママや、「リトルダンサー」ではバレエ教室の女教師を演じたイギリスでも屈指の名女優。ヘレン・ミレンも、「コックと泥棒その妻と愛人」などで知られる演技力では定評のある女優である。
 監督は、驚く無かれ、NHKでときどきやってる、ハリウッドスターがアマゾンなどで野生生物と触れ合う番組「ワイルドライフ」を撮っていた人物。コメディーセンスも小気味よく、イギリスの美しさも堪能させてくれる、すばらしい仕事振りである。

大笑いさせてくれるし、ほろっとさせてくれる。
批評魂とは別のところに響く、快作であった。

映画として 9.9/10 (子供たちがやっぱりかわいそうなので)