「スクール・オブ・ロック」  

スクール・オブ・ロック」       子供には勝てません

「愛しのローズマリー」でパルトロウとの絶妙なコンビでほのぼのと笑わせてくれた、ジャック・ブラックの、映画公開当時も評判の高かった、コメディである。


ロックギタリストのデューイ(ジャック・ブラック)は、ロック!に傾倒しすぎたゆえのはちゃめちゃぶりで、自分のバンドをクビに。そのうえ居候している元パンクロッカーの親友ネッドの家からも、彼の彼女とウマが合わず追い出される寸前。そんな時、たまたま受けた電話はネッドあての代用教員の口の話だった。喉から手が出るほどお金がほしいデューイは、蝶ネクタイに似合わない一張羅を着て「音楽教師ネッド」として厳格で有名な名門私立小学校へもぐりこむのだが・・・。


もぐりこんだ先の私立小学校の校長がジョーン・キューザックアダムス・ファミリー2、トイズなど)。ちょっとピンクルな人をやらせたらぴか一の彼女が、お堅い校長先生を、話し方からジェスチャーまで、なりきって演じている。が、もちろん、それだけなら彼女にこの役は廻ってこなかったのだが・・。

実は全米NO1ヒット作でありながら、この映画の脚本とストーリーは実にお粗末である。厳格でそれだけ賢い子供たちが、授業もろくにせずいいかげんなことしか言わないデューイになぜついていくのか疑問に思うほどだし、デューイ本人の人間性における成長というのも、(ワンシーンをのぞいて)あまり描かれていない。彼の生徒への話し方も、愛情があるのかないのかわからないままという感じだ。ちょこちょことした山場はあるような気もするが、盛り上がりは最後のシーンだけといっても過言ではない。

たとえば、「天使にラブソングを」の1や2と比べてみても、その出来上がりの薄さは歴然である。主人公は自分と違った価値観を持つものたちの中で、自己を主張し、荒い言葉を使いながらも、少しづつ思いやりを見せ、「皆がよいほうに」向うために、統率力を発揮する。

 が、デューイは違う。頭にあるのは「自分がロックをやること」だから、そのためだけに子供を使う。子供を励まし、認めるのだが、目的がそれだから、なにか言葉に愛情がない。後半で結局、騙していたことについて謝ることになるのだが、それでも結局舞台では子供と並んで目立とうとする。ジャック・ブラックという人がバンドまでやっている本物のロックンローラーであるから、見せ場という意味でこれは仕方がないことなのかもしれない。
 しかし、「映画」としては、自己中心的なオトナコドモであったデューイが、騙していたことを謝り、恥じ、ラストでは、子供たちのパフォーマンスに少し参加するくらいで、あとはそっと「自分を殺し」子供たちを見守る・・といった、主人公の成長を見せるべきではなかったかと思わずにはいられない。
 この映画が「ジャック・ブラック」が出演しているからこそ成り立っている、と製作者が考えているからこそ、映画としての出来よりも、彼の「見せ場」を選んだといえるのだろう。

 しかし、そういったことを抜きにしても、何よりもすばらしいのは、子供たちである。「動物と子供には勝てない」はまさに名言で、ジャック・ブラックが鼻に付こうが、ストーリーとキャラクターに不具合があろうが、数千人のオーディションで選ばれたという子供たちのパフォーマンスはまさに最高である。(ジャック・ブラックがいないならいいのに!と思わせるほどだ)ラストのバンドシーンは何度でも繰り返してみたくなるほどの格好よさだし、そのテクニックのみならず、子供が作ったという設定の「スクールオブロック」のロゴのポップさ、楽曲のすばらしさ。文句のつけようがないというできばえだ。(しいていえばキーボードがいけていないのだが。)

 主人公のダメ人間デューイを許し、一緒に舞台に出させてあげるのも、子供たち。
 ジャック・ブラックが目立とうとするのを大目に見てやっているのも、子供たち。

子供のほうが大人より何枚も上手。
そんな映画である。

コメディ映画として 6/10
ラストのパフォーマンス場面 10/10