SHAME-シェイム-

「旬の男優+キャリー・マリガン」くくりの2本目。こちらはかなり序盤で映画の背中を見失ってしまった気が……決して退屈したわけではないのだけど、どうにも捉えどころがなくて宙ぶらりんな気持ち。

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そんなわけなので、好きとも嫌いとも言えないし、正直どう感想を述べたらいいのかもよくわからない。ただ、ここまで説明されない余白を残したままに話を進める手法はおもしろく感じた。セックス依存の兄と、恋愛依存かつリストカット癖のある妹。なぜ彼らはそうした「自傷行為」(兄ブランドンにとってのセックスは、行為中の彼の苦しそうな表情からして、快楽を得るのではなく自分を痛めつけているようにしか見えない)に及ぶのか。それにはどうやら彼らの過去が関係しているようなのだけど、その「核心」について台詞や独白のような形で語られることはない。ただ、そのかわりにこの映画は顔や身体に複雑な表情を滲ませて語っていく。表情から様々なことを想像し、そこに思いを馳せる、それを一つの手法としている。

そのため、顔や身体を長回しで捉えた台詞のないシーンが多くあるのだけど、これをやっても映画の緊張感が途切れないのは、長回しに強いマイケル・ファスベンダーを起用すればこそだよなあと思う。この人は一つ一つの瞬間を一切無駄にせず常に全身全霊をかける、献身と丁寧さを持った俳優。この映画ではそれがしっかり生かされていたように感じる。

私にとって一番印象深かったのは、ショーン・ボビットによる撮影。初めて予告を見たときから綺麗だなーとは思っていたのだけど、やはり本編を通じてもその美しさに見とれてしまった。ブルーの冷たい美を生かした映像が好きなので尚更。ブランドンの着るワイシャツ、ベッドのシーツ、夜の街並み……どれも青い。青という色は映画の雰囲気にもよく合っていたと思う。


キャリー・マリガンは、「ドライヴ」のときとは雰囲気がまったく異なる役。でも、どちらもフラジャイルゆえに最高の輝きを持っているという点では共通している。なんとなくおとなしめなイメージがあった彼女だけど、本作での常に切れる寸前の糸のような危うさは予想外のものでよかった。

昨日の「ドライヴ」の感想で、「どちらも余白が多い」と書いたのだけど、2作の印象は必ずしも近くない。それはたぶん、核心を避け周辺を描くことで行間を読ませるのを一つのスタイルにしている本作に対して、「ドライヴ」は物語をファンタジーとして浮遊させるために背景をバサバサ切っていった結果、余白が多くなっているという違いがあるからなんだろうと思う。