100冊の本に挑戦  関裕二 「浦島太郎は誰なのか」

作者は歴史作家で、奈良に通ううちに仏教美術に魅せられ、日本の古代史研究家になった人である。

浦島太郎は誰でもが知っている昔話に出てくる人である。

浜辺で助けた亀の背に乗り竜宮城へ連れていかれ、乙姫様と出会い宴会の限りを尽くした後、元の人間社会へ戻ると知らない人ばかりで、乙姫からもらった玉手箱を開けると700年後の世界になっていた、という話である。

この話が実は日本書紀に書かれていて、また古事記にも浦島太郎と思われる人物が登場するのである。
作者はこの浦島伝説がヤマト建国史に密接に関わっていると考えている。

神武天皇、神宮皇后、卑弥呼などの人物が登場し、住吉大社宗像大社や天岩戸、福岡高良山などとのつながりが次々に展開され、邪馬台国の所在地についての考察ももちろんあって、読んでいてとても楽しい内容になっている。

もっとも関裕二氏の作品は大体において、古代史の謎をいろいろとてんこ盛りに論ずるところが特徴であるので、論点がどこにあるのか分り辛いところがあるが、それでもサラッと気楽に読めるところがいいと思う。