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2014-05-26

一目上がり

どうも年末にランキング風日記を書き終えると、その後、すっかり気が抜けちゃうというのが僕のパターンのようです。ほとんど半年ぶりですが、久しぶりにゆる〜い「読書企画」を思いついたので日記に残しておこうと思います。

落語の前座噺に「一目上がり」ってのがあるんですが、それに想を得た企画です。ちょうど「えほん寄席」(Eテレ)の動画があったので、興味ある人はチェックしてみてください。これ聴いて、本のリストを見れば、わざわざ企画主旨を説明する必要もないですね。読書×落語、趣味の掛け算。

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■『第三の警官』フラン・オブライエン

 金目当てで老人を殺害した主人公が迷い込んだのは、怪しい警官や自転車人間が跋扈する世界。同じアイルランド人作家ベケット戯曲ゴドーを待ちながら』にも通じる不条理な物語が展開します。「ゴドー」といえば仏教の地獄観に「六道」ってありますけど、この『第三の警官』は「警官道」か「自転車道」とでもいうような奇妙な地獄に堕ちた亡者の話とも解釈できそう(←語感だけのこじつけ)。あるいは主人公を「ワキ」、警官たちを「シテ」と読めば能の世界にも通じるんじゃ・・・なんて連想も(←能なんて観たことない)。

 「不条理」とか「地獄」とかシリアスなこと書きましたけど、読み心地はむしろ軽妙です。ブラック・ユーモア。いや、ブラックよりもっと濃いよなあ。エスプレッソ?そうか、ウイスキー入りのアイリッシュ・コーヒーだな、これは。調子にのって、飲み慣れないものをガブガブやってたら悪酔いしちゃいました。
 




■『第四の館』R・A・ラファティ

 オブライエンで悪酔いしたっていうのに完全に迎え酒モードで、またもやアイリッシュ系作家のラファティへ。1960年代アメリカを舞台に、現実と妄想を行ったりきたりの『第四の館』。なんだかピンチョンの『競売ナンバー49の叫び』を思い出して、終始ニヤニヤしながら読んでいました。

 (あくまで個人の感想なんですが)『第四の館』と『競売ナンバー49の叫び』って、どこが似てるのかな。もしかすると両作品とも「網/ネットワーク」という新しい技術、それが孕む新しい権力っていうテーマが通底しいるのかもしれないなあ。1963年発表の『競売ナンバー49の叫び』(カリフォルニア三部作の第一作)は全米に広がる電話線「網」にこだまする幽霊の声で幕を開ける。そして、1970年を舞台にした『LAヴァイス』(カリフォルニア三部作の第三作)はインターネットの前身であるARPANETで幕を閉じる・・・
 
 1960年代を通じて「ネットワーク的なもの」に対する不安の高まりがあったんじゃないだろうか。顔の見える権力から、顔の見えない権力へ移行する時代の無意識とでもいったものが。『第四の館』が1969年発表だから、時代は重なるんですよね。そう考えると、ケネディ暗殺までも繋がってくるんじゃ・・・なんて妄想が次から次へとわきあがってくるんだから、やっぱり『第四の館』は強力なパラノイア小説ですよね。こりゃ、完全に二日酔いだわ。
 




■『ケルベロス第五の首』ジーン・ウルフ

 「次の館はふたたび最初に戻るのだろうか?それとも第五の館だろうか?」という『第四の館』エンディングから、「おそらくこの像のせいで、わたしたちの館は「犬の館」と呼び習わされるようになったのだろう」という『ケルベロス第五の首』へのリレー、完璧だ。ときどきこういう偶然が起こるから、企画読書は面白いんだよな。

 物語の舞台となる「犬の館」は、地球の殖民星(かつては流刑地だった?)にある高級娼館。その経営者の子どもである「わたし」による回想として語られる第一部は、クローンがテーマとなっています。「生殖なき性交」の館(娼館)、その裏で執り行われる「性交なき生殖」の儀式(クローニング)。本書には、そんな鏡像的なモチーフや仕掛けがいたるところに隠されており、読むほどにそれらの仕掛けが発動し、物語に絡みとられていくような感覚を味わいます。

 さらに第二部、第三部と進み、人間の植民以前の原住民=アボ(他者を完全にコピーする能力をもつ異星人)が登場するにいたり、物語はいっそう混迷の度合いを深めていき・・・。語り手はいつしか騙り手となり、物語はいくつもの解釈の可能性に分岐していく。あたかも、複数の頭を持つ地獄の番犬のように。
  

ケルベロス第五の首 (未来の文学)

ケルベロス第五の首 (未来の文学)




■『NOS4A2』ジョー・ヒル

 タイトルの読み方は「ノスフェラトゥ」だそうです。そう、この『NOS4A2』は、ホラー界の王子ジョー・ヒルが満を持して放つ吸血鬼小説なのです(ヒルって名前だけでも、お父さん以上に血を吸いそうですもんねw)。『ケルベロス第五の首』の舞台だった「犬の館」(住所:サルタンバンク通り666番地!)から「吸血鬼」ってリレーもなかなかいい。
 
 そんな期待を知ってか(←知るわけない)、キング・ファンなら思わすニヤリとしてしまう「くすぐり」がてんこ盛りの本書。しかも後半は、ボストン・テランを髣髴とさせるエモな復讐譚という展開もたまんない。もう、このお得感は「神は銀の銃弾」とでも呼びたくなるレベルです。

 『ケルベロス第五の首』で「父殺し」の迷宮をさんざんさまよった後だけに、この屈託ない父子ツーリングは気持ちいいなあ。ハイヨー、シルヴァー!
 




■『第七階層からの眺め』ケヴィン・ブロックマイヤー

 ケヴィン・ブロックマイヤーは、ジョー・ヒルと同じく1972年生まれ。そして、ぼく(1973年3月生まれ)も同級生。とくに意味はありませんが、そういう偶然も大切にしたい41歳。
 
 バラエティに富んでいながら、通読すると、ある種の「静けさ」が際立ってくる、そんな短編集でした。いろいろな音の描写の合間に訪れる静寂。その静寂が、それぞれの主人公が裡に抱える孤独とも通じているようで、思わず耳をすませてしまう・・・。「サイレンス・フィクション」、そんなふうに呼んでみたくなる一冊です。
 

 
 
 「七」の続きはこちら「軸褒め」でどうぞ〜

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