祐天寺、木曜日、18PM

半分ダメ元で毎度おなじみ祐天寺「忠弥」に電話を入れてみたのは、木曜日の16時少し前のことだ。
 
定休日は日曜日なのだが、仕込の都合か、それとも70歳を迎えたマスターやおかみさんの体力的な問題からか、昨年ぐらいから木曜日もほとんど定休日のような扱いになっている。
2コール目ぐらいで二代目Kちゃんが電話を取ってくれた。

「今日やってますか?」と手短に尋ねると今週は月曜日が建国記念日で祝日だったこともあり、営業しているとのこと。
「今日はねーのんびりだからー」
 
普段ならピリピリと緊張感が漂う口開け直後だというのに、電話越しに聴くKちゃんの声もこころなしかのどかというか余裕がある。
安心して残り一時間、デスクワークをこなしてから定時でオフィスを出て、祐天寺へ。
 
勤め先の最寄駅から山手線で恵比寿まで出て、日比谷線に乗り換えて祐天寺へ向かう、というのがいつものルート。
渋谷で乗り換えたほうが運賃的には良いのだろうが、ついつい渋谷駅を回避して行動してしまう。
近々、地下深くに東横線のホームが移転するとのことで、ますます足が遠のきそうだ。
 
祐天寺駅の改札を出てまっすぐ忠弥へ。
東横線の高架沿いに都立大学方面へ歩くこと暫し。
18時ちょうどごろ、暖簾の前に立って中を覗くと、電話の後にすこし盛り返したのか六割ほどの客入り。
 
暖簾をくぐって引き戸を開けると「あら、○○さん、そちらどうぞ!」とおかみさんが、煮込みの鍋の前の席を勧めてくれる。
席についてKちゃんに生ビールをグラスで注文しつつ、焼き台に立つマスターの背後の壁に掛かったお品書きの札を見ると煮込みが売り切れ…。
 
”ガーンだな…出鼻をくじかれた”状態。
 
だが、そこは自他ともに認める”あきらめの悪い男”である。
おかみさんに「煮込み終わっちゃった?」と聞くと、「ごめんさいねー、今、スープお出しするから」とうれしいお返事。
スープとは煮込みの汁のことで、煮込みの具が売り切れたあと、汁の余りが出た時にスッと出してくれるのだ。
 
焼き物の最初のオーダーは着席時に渡されるメモ用紙に記入するシステム。
焼き台のマスターに心なしか余裕がありそうなので、この日はちょっと変わったオーダーをしてみることに。
 
・レバーさわ焼きスタミナ×2
・ヒモ塩×2
・ペテン塩×1
 
30分一本勝負と決めていたので、焼き物のオーダーは気持ち抑え目にお願いした。
オーダーを記入したメモをおかみさんに渡すと、一合升に山盛りになったチョコレートを薦めてくれる。
「もうあちこちでもらってるだろうけど、バレンタインね」とのこと。
実は、ここ数年、女性のいない部署勤務なので、義理チョコの一つも貰っていなかった…。
まさか、今年最初のバレンタインの頂き物を忠弥で頂戴することになるとは。(苦笑)
 
そうこうするうちにスープが到着。


 
こいつを啜りながら待つこと暫し。最初に到着したのはレバーのさわ焼き。
 

 
さわ焼きとはレアのこと。
スタミナとは、ニンニクやニラを利かせた甘辛いタレのことで、定番メニューだとヒモ(小腸)やチレ(脾臓)に合わせることが多いのだが、頼めば大抵の部位でも出してくれる。
思った通り、レア目に焼いたエッジの立ったレバーの甘味とスタミナだれは好相性。
今まで塩でもらうことが多かったが、今後はスタミナだれの当番回数が増えそうだ。
 
続いて到着したのは最近のお気に入りであるヒモ塩。
ヒモはメニュー上では”ヒモスタミナ”となっているが、やはり頼めば塩や甘いタレでも出してくれる。
これを串から外して、上からお通しのキャベツの千切りの塩もみを載せて、ミツ〇ンの味ポンを借りて上からかけると、さっぱりとしたサラダ仕立てとなる。


この日は、おかみさんが煮込みのトッピング用の晒した長ネギを追加してくれたので豪華仕様。
※人数が多いときなどはこれを”サラダ(小)”などで作ると良い。
 
名物の忠弥特性カクテルと黒ビール(通称カククロ)を頼みたいところだったが、この日はサッと切り上げて帰宅せねばならず、ハイサワーを2杯。
 
肉っ気がもう少しだけ欲しかったので追加でてっぽう(直腸)塩を一本追加してサラダに追加投入して綺麗に終了。


この日のお会計は煮込みとカククロがない分、いつもより気持ちお安めな2,200円。
 
そろそろシビレが恋しくなってきたので、次回は口開け狙いで行こう、と心に誓いながら家路についた。
時刻はちょうど18時30分。
仕事でも飲みでも、なんでも最初に決めたとおりに進むと気持ちの良いものだ。