左足ブレーキ

 出ましたね。今日の朝日夕刊、一面トップです。
  「自動ブレーキ義務化検討」
 先見の明はもちろん私ではありません。ご紹介したように、吉田武氏が記事(→ここ)で、警察庁国土交通省、自動車メーカーの3者が裏で結託しているのではないか」と書かれていた、全くその通りのことが起こったようです。
 今日の記事にもありますが、自動ブレーキの技術はまだまだ不完全です。が、だからこそメーカーは、それぞれ巨額の資金を投じて、開発競争に必死です。もちろん投下した資金は、市場で回収しなければなりません。そこで、まだまだ未完成の段階ながら、自動ブレーキの装備を「国際標準化」しようというのが狙い。自動ブレーキ車でなければ乗ってはいけない、自動ブレーキ車でなければ買ってはいけない。つまり巨額の資金で開発し特許をとったビッグ・メーカーの車でなければ乗ってはいけない、買ってはいけない
 そんなメーカーの意向を受けて、というか結託して、「国土交通性が動き出した」
 自動ブレーキの義務化を「国際標準化」し、「最終的に全車への搭載を義務づけたい意向だ」、とのこと。
 そこで登場するのが、警察庁。というか、むしろマスコミ、警察記者クラブの連中です。
 同じ事件でも「外国人」が起こすと、見出しに「外国人」と使える美味しいニュース。同じ交通事故でも「高齢者」が起こすと美味しいニュース。次々と「また高齢者ドライバーの交通事故」「またまた高齢者事故」と報道しては、高齢者の事故が増えている! 高齢者ドライバーは怖い! ブレーキと間違えてアクセルを踏む! と、読者、視聴者を煽ります。
 「高齢化に伴い、高齢者ドライバーの事故が多発し、社会問題となっている」
 しかし、先日も書きましたが、「少年犯罪が増えている!」とキャンペ^ーンされた時代には、実際の少年犯罪は減っていたように、「高齢ドライバーの交通事故が増えている!」と、しきりにいわれる昨今ですが、実際の交通事故件数は、グラフの通りです。(上記吉田氏の記事の図を、文字を大きくして分かりやすくしたものです)
 もちろん、グラフは、正確には「原付以上運転者(第一当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移」、つまり「免許保有者当たり」なので、高齢者は免許を保有していても実際の運転機会が多くないだろうことを考慮する必要があるでしょう。また、「75才以上の高齢運転者による交通死亡事故の原因は、ハンドル操作の誤りやブレーキとアクセルの踏み間違いなど「操作の誤り」が最多の29%を占めた。75才未満の2倍近くに及ぶ」という点では、たしかに高齢者ドライバーには、特に注意が必要であること、間違いありません。
 貧しい者に買えるのかという問題はあるものの、信頼できて安い自動ブレーキシステムが開発され普及することで、悲惨な交通事故が減るなら、それにこしたことはありません。
 けれども、「高齢化に伴い、高齢者ドライバーの事故が多発し、社会問題となっている」というのは、正しくはありません。「社会問題となっているのではなく、新聞やマスコミが「社会問題ににしてきた」のであり、「「高齢者の事故対策の切り札になる」というよりは、車を買い換えさせてメーカーが儲かる切り札になる」のが狙いでしょう。
 国交省警察庁、自動車メーカー、マスコミが一丸となって、わが巨大自動車産業を後押ししようというのです。高齢者ドライバーも、せめて少しはお手伝いできるよう、「高齢者の交通事故は増えてるどころか、減ってるじゃないか」などと、つまらないことはいわぬことです。(続く、かも)