Sugarless Girl / Capsule

ラフでカジュアルなファッション・ミュージック

Sugarless GiRL
中田ヤスタカは本当に天才なんじゃないかと思う。前作から9ヶ月という短いスパンでのリリース、更にはアイドルユニットPerfumeのプロデュースも手掛けているというのに、どの作品も一曲として捨て曲がなく、輝かしいまでのクオリティを誇っている。多作でありながら、ここまでしっかりした仕事をこなす人はなかなかいない。

ポップミュージックのダンス化に成功し、バンドの持つ色を大きく変化させた前作「FRUITS CLiPPER 」の延長線上にいながらも、よりモードなサウンドへとチェンジした今作は、VitalicDAFT PUNKなどのフレンチエレクトロを彷彿とさせるサウンドを基盤としながらも、メロディは至って邦楽的。そのアンバランスさを違和感として感じさせないのは、恐ろしくカジュアルなサウンドメイキングによるものだろう。頭でっかちに作り込みすぎず、ラフなパターンでメロディをガシガシぶち込んでいく。まるで服を選ぶような気楽さだが、そのファッション感覚が抜群の音選びのセンスを見せつけている。ファッションでは、ポイントとして一ヶ所「ハズし」を入れてみたり、奇抜なパターンの組み合わせでポップ感を演出したりするのは割と常識だったりするが、いざ音楽となるとどうしても作り込んでしまう。中田ヤスタカは、エレクトロミュージックからそう言った堅苦しさを抜き取り、ラフに楽しむ事に主点を置く事でポップミュージックとダンスミュージック(もっと言うなら世間とクラブカルチャー)の垣根をはぎ取ることに成功したと希有な人物と言えるだろう。

こうしたセレクトショップ的とも言えるサウンドの元祖と言えば、説明するまでもなく「渋谷系」であるが、彼らは「服」のコーディネートのパターンで音楽を破壊・再構築していたが、中田ヤスタカの場合はまずデザインを決め、それから生地を切り取り、一から服を作り上げていく感じに近い。その人に似合う服があるように、ユニットによってそのサウンドをデザインしていく。そうして出来上がった服の一つ一つで、華麗なるファッションショーを展開するのだ。

iPodの登場により、音楽のセルフアーカイヴ化がどんどん進む現代で、こう言った音楽が登場して来たのは何だか必然的な気がする。人々は無意識のうちに一音レベルまで音楽を選択しているのではないだろうか。お気に入りの服と、お気に入りの音楽。たったそれだけの事だが、僕たちはそれに至福の喜びを感じている。時代を映す鏡は、いつだってファッションと音楽だったじゃないか。