養老天命反転地〜テキストの外部はテキストだった〜
合宿の場所を養老温泉にしたのは、ここに行きたかったためである*1。
作った人たちのコンセプトに対する印象はUnder the Hazymoon - は、反転なんかしてないんだからねっ!に書かれていることと重なる部分が多いので、ここでは別のことを。
この公園でぐっときたのは、あの壁である。まるでSF映画のセットみたいではないですか。壁にくっついて「ここが世界の果てだよね〜、テクスト外はないよね〜」などと嬉々としてしゃべっていたら、なんと壁に穴があいているのを見つける。しかもそこには「立入禁止」と書いてある。なんで公園の外に出るのを禁止するのに「立入禁止」なんだ、そうか「反転」してるんだ!などとバカ話に拍車がかかる。
そんなことをしながら壁を伝っていると、本当に壁の外への出口が見つかる。「テクスト外へ出るぞー」と言いながら外に出てみると、そこにはたくさんの落書きが。「テクストの外にはテクストに溢れていた…」などと、自作自演的に絶句する。
壁の中はトンネルになっていて、出たり入ったりできる。「リゾームだ」「浅田の壷*2だ」などと言いながら、笑いが絶えない。
その後、今度は壁の上の細い道を「ここがテクストの境界だ〜」とかバカ話をしながら歩く。変な天井に頭をぶつけたりしながら歩いていると、行き止まり(この公園は、やたら行き止まりが多い)。そこは壁の上なので結構高い。しかも下はコンクリート。そこで土居さんが一言、「テクスト外に行くには命がけのダイブ*3をしないと」。その一言が妙に重く感じられる。さあ、引き返そう、ということで、「人文学の袋小路からの勇気ある撤退」を(これまた嬉々として)行う (^_^;;
ということで、作者の意図を多分かなり逸脱していたようにも思うが、大いに楽しんだのであった。お土産は『建築する身体―人間を超えていくために』のトイレットペーパー。
美濃国分寺
一応、おいらは古代史な人でもあるんだぞ、ということで、ドライバー特権で美濃国分寺跡に立ち寄る。例によって、更地に礎石が残っている程度なのだが、パシパシ写真を撮る。
おもしろかったのは現役の美濃国分寺。水子供養のメッカとなっているようで、小さいお地蔵さんが何百と並んでいる。お地蔵さんが被っている手編みの帽子やいっしょに供えられたアンパンマンにぐっとくる。立派な薬師如来像に手を合わせる。
明星輪寺、というより金生山
日本すきま漫遊記の明星輪寺(岐阜県大垣市)および金生山カルスト地形(岐阜県大垣市)でこのお寺を知り、山岳信仰研究者(自称)としては気になるところだったので、こちらもドライバー特権で参拝することにする。
時折道中に見られる看板に従って走っていくと、ダンプカーとすれ違うことが多くなり、産業革命的な雰囲気が漂ってくる。石灰岩のカルスト地形が有名なので採石場があるのは想像できるが、それでも「参拝」にはほど遠い雰囲気に、本当にこっちでいいんかいな、と不安になる。細い尾根づたいに山道を登っていくと、明星輪寺にたどりつく。
本堂を参拝し、お目当てのカルスト地形を見学。胎内くぐりからスタートするようなルートが整備されていない、というか忘れられてしまったようで、とりあえず行き当たりばったりにごつごつした岩の道を歩き回る。養老天命反転地より、よっぽど疲れたのはご愛嬌 (^_^;; その後、ご住職?にお願いして、算額を見せて頂く。
実物をこんなに間近で見たことはないので、感動。書かれている問題は、かなり難しそう。
帰りがけ、参道から外れて脇道を進むと、採石場の真上に出た。それがものすごい(ゴレンジャーが戦っていそうな)景色であった。
この山は石灰だけでなく鉄も採れたらしく、そのために古代から宗教者が入っていった一方、朝廷とかゼネコンとかにこうやって削り取られ、人々の生活を豊かにしてきた山なのだ。はかとも/無縁のほうこう - 金生山には、有益なリンク集とともに「「環境/文化」が露顕する場所」と述べられているが、土居さんはこの景色を見ながら「棚田について論ずるなら、これについても論じないと」みたいなことを言っていた。
「人間は、与えられた自然だけに服従しなくても、こういうもう一つの自然というものを創ることができる」てなコンセプトの養老天命反転地から始まったこの旅が、こんな形で結末を迎えるとは、まったく想像していなかった。適当に行き先をピックアップした旅だったが、得るものが大きかった。
*1:ちなみにこのテーマパークのことを知ったのは、『カオスだもんね!〈4〉ホビー編 (Hyper report comic)』による。
*2:山形浩生『「知」の欺瞞』ローカル戦:浅田彰のクラインの壺をめぐって(というか、浅田式にはめぐらないのだ)参照。
*3:『探究(1) (講談社学術文庫)』あたりが出典になるのかな。元はマルクス先生らしい。