『完本 ひとり飲みブルース』電子BOOK版、販売中!

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うなぎの旬が、夏場でないことは聞いたことがある。でも、暑い夏だからこそ、うなぎの焼けるのを見ながら、汗を流して焼酎を飲むのがいい

長かった今年の梅雨も、明けてみればやっぱり猛暑の夏がやってきた。
梅雨明け前の7月の土用丑の日に、新宿・思い出横丁『カブト』に行ったが、焼き台に立つ若い大将の消耗も大変なものだ。目の前で、炭火が燃えているのだから、カウンター越しに飲んでいるこちらも汗をかきながら、うなぎの串焼きを食べ焼酎を飲むことになる。
このブログから派生した冊子『完本 ひとり飲みブルース』が、店の目立つメニューの横に飾られていることもあって、ここ3週も連続で、土曜日に飲みに来ている。
『カブト』のカウンターで撮った写真が表紙だもの、タレの焦げる煙に燻されて飾られているのが『完本 ひとり飲みブルース』に一番似合っている。と、思いながら飲む芋焼酎が旨かった。
          ☆
『カブト』に飾られた冊子も1カ月過ぎて、うなぎの油にくすんで来た。
すでに手元の100冊も残り少なくなったので、せっかくだから人の手に取れる形にしておきたいと考えていた通り、電子BOOK版にして販売することにした。
紙本は、無料で配ったもので、電子BOOK版もそれに沿ってもよかったのだが、逆に紙本にかかった費用(一冊あたり300円原価)をそのまま値段に付けることにした。到底、紙本100冊分の数が売れるとは思っていないが、紙本の制作費くらいは価値として、つけておきたいと考えた。

KADOKAWA直営電子書籍サイト』BOOK☆WALKER

https://bookwalker.jp/st5/

一般向けの同人誌も扱っていて、制作段階で解説サイトも充実していたのでここのサイトからの販売に踏み切った。サイトに行ってみるとわかるのだが、特にこの電子ブックサイトで売れている大半が、コミック系である。チカチカする表示の中で、使い慣れていないとかなり面倒に感じるので恐縮するところなのだが・・・。
いかにこの電脳の場所が、不似合いなのがひしひしと感じるところ。しみじみと『カブト』のメニュー横に飾られた場所が、落ち着いていることか。
しかし、怪しげな漫画に埋もれていても、書名検索で一発で到達。

『完本 ひとり飲みブルース』

(『ひとり飲み』だけでも、書名表示します)

よろしくお願いします。

『完本 ひとり飲みブルース』完成

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ずいぶん、眠り込んでいました。
休眠中に、はてなブログの引越しもありましたが、移行したそのまま休眠が続行していました。
2年も眠り続けていたら、令和になったよとびんさんから書き込みをいただき、ハッと目が覚めたようでした。
実は、このブログ絡みで報告することもあったんです。このままスルーしてしまうのもひどい話ですので、ブログの再開とはならないかもしれませんが、久々にアップしたいと思います。(しかし、すっかりやり方さえ忘れているので、ちゃんとできるのだろうかと不安)
          ☆
この7月で、60歳、還暦を迎えることになりました。
人生100歳時代と言われるようになった日本で、還暦と言ってもたいして昔ほどはありがたがったりしない風潮です。とは、言うものの何はともあれ一周してきたなぁーという思いもあり、考えてみたらこの10年、50代という年代に目を向けても色々あったし変化もしました。5年ほど前にこのブログのペーパー版として冊子をまとめたことがあったのですが、それにこの5年間のことを書き足して50代の10年の変遷が一冊になればいいなと作ることにしました。
男の還暦は厄年でもあるので紅白饅頭代わりに、この冊子を身近な人に配ったりしたわけです。
          ☆
表紙は、新宿・思い出横丁『カブト』で撮らせてもらった写真です。

本文でも、何度か触れている大好きなお店です。ここには、15冊ほどまとめて渡しました。先日、飲みに行ったら、なんとメニュー表の横に立てかけられていました。お客さんが目について声をかけていただければ、渡してくれるようです。すでに5冊は渡したよと言っていたので、もう少しは残っていると思います。
印刷した手持ちのものもだんだんと少なってきているところで、電子ブックにしてもう少し多くの人に読んでもらえるようにできればとも考えています。
今、進行中なのが、同人雑誌『野酒(のざけ)』。
年内に創刊号を出したいと奮闘中です。『ひとり飲みブルース』とは、違った活動として飲み友達3人で進めています。こちらの方は、ボリュームもあり制作にもお金がかかるため、紙代、印刷費用のカンパ程度の値段を付けてと考えています。
『完本 ひとり飲みブルース』電子ブック版、同人雑誌『野酒』ともに、また、このブログ上でも告知させていただきます。(令和元年7月8日記)

ごめんなさい。

昨年末と同様に、ブログをサボって「ごめんなさい」で、今年も終わりそうです。
春から夏、秋にかけては、たっぷり時間があったろうにと自分で思うのですが、生活が安定していないと精神的に落ち着かないのか、ブログを書こうという気力もあまり湧いてきませんでした。
10、11月と、春に登録していた派遣会社の仕事が舞い込むようになり、安定しているとはとても言えないものの、少しは仕事する生活が戻って来ました。そこら辺りを、今年の年賀状にしたので、例年通り一足早くブログにアップすることにします。
月に1回は、なんとか一つ書いてアップすることを目標としてきましたが、近年、いろんなことがあったとはいえ実現できずにいて、なんとも腑甲斐なく思っています。

風前の灯のようなブログで、訪れてもらっても更新できていない現状にすでに言い訳も浮かびませんが、気にして見ていただいた方々に感謝を申し上げます。
今年も、ありがとうございました。
     ☆
明日から、故郷の和歌山に帰省します。
少し時間に余裕があるので、2年ぶりに大阪・より道酒をもくろんでいます。
目指すは “新世界“ の立ち飲み『平野屋』。ジャンジャン横丁の散髪屋と、通天閣の足元にある銭湯で汗を流して一年間の汚れを落としてから、さっぱりして、ディープな大阪の酒場を満喫する予定です。
     ☆
では、よい年をお迎えください。(12月28日記)

大阪湾産、イワシの塩焼き

在住の荒川区ハローワークが、隣の足立区と合併されていた。
職探しするのに、電車に乗って北千住に行くことになる。『大はし』があるこの街にも、ずいぶん通い慣れた感がある。
それはそれで、切り離して考えれば良いことだが、どうせ電車賃を使うのだからと思うのが人情ではないだろうか。
決して職探しをおろそかにしたわけでないけれど、自分に許しているルールから金曜日の午後にハローワーク足立に行き、求人検索に没頭した後は『大はし』で、週末の一杯を飲むことにした。仕事をしていない者が、週末もないだろうと言われそうだが、自分なりに規律をもって一週間の日々を送っているのだ。

↑ちょうど仕事帰りの人達で混み始める19時過ぎた頃に飲み終わり、ほろ酔いのいい気分で『大はし』の外に出てみると、人がずいぶん並んでいた。これは、随分待たされるだろうなと思い、お先に申し訳ないという気持ちがチョッピリして来る。
思えば『大はし』で、飲み通い始めて(途中、ブランクも1年ほどあったが)20年を越えている。その時々、色々な気分で飲んできたものだが、ハローワークから、直接店に歩いて飲みにくることなど考えもしなかったと、複雑な思いも湧いてくる。
しかし、サッと出てきた肉豆腐と金宮焼酎を飲み始めれば、たいして違いはないのかもしれない。変わっていないといえば、親父さんの接客は歳を重ねたというより、より技に磨きをかけてきたという感じがする。
「今日のイワシは、ちょっと違いますよ」
親父さんに言われ、壁に貼ったメニューの短冊を見ると『大阪湾産 いわし塩焼き』と、達筆の墨文字で書かれていた。早速、注文してみる。
関西生まれの自分にとって、名産千葉で捕れた真イワシの塩焼きを食べると、関東の居酒屋で飲んでいるのだなと感慨深いもの。出身の和歌山でよく食べていたのは、種類が違う小さな細身のセグロイワシだった。酢じめや梅干しと一緒に煮たものは美味しいのだが、大羽の真イワシとは味わいが違うのだ。
「ほいっさぁー」と、焼けたイワシが出てきた。
サイズから見ても真イワシで、大きめ小さめの2本が皿にのり、プチプチと旨そうに音を立てていた。大きさの割には、見慣れた真イワシよりは、頭が少し細身に感じた。ただ、胴は丸々と太く、箸を入れると驚くほどに脂が乗っていた。親父さんに、美味しいですと言うと、そうだろうとばかりに顔がパッと華やいだ。
後日、ネットで調べてみると大阪湾産のイワシでヒットしたのが、魚屋さんのブログだった。もちろん、質のいい大阪湾で捕れたイワシの良さを紹介していた。
このところの台風の影響で、太平洋側での漁が不振のため、普段なかなか出てこないものが東京にも流通してきたのかもしれない。こんないい真イワシが、大阪湾で捕れるとは知らなかったが、あまり固定観念を持つのも今の時代、取り残されてしまうことになるのかもしれない。
さすがは『大はし』と、絶賛しつつ、職探しをしながら固定観念の塊の自分を反省するのだった。(8月26日飲)

上野・アメ横ガード下、人の流れを眺めながら


春に求職中の状態になって、のんびりしていたら夏も峠を越えそうだが、身辺に変化はない。すでに人生後半戦の我が身にとって、時の経つのは早いものだ。
11年ぶりに関東に台風が上陸するなど、今年は、東日本以北で台風の当たり年かもしれない。これから秋に向かって、幾つか台風が向かってきそうな不穏な勢いがある。
自分の状況をかえりみれば、現在も求職の応募書類は出していながら、先方の会社が夏期休暇のため対応が遅れるという旨、連絡を待っている状態。仕事もせずに気楽かもしれないが、どこにも進めない状態でどうにも途方にくれている。
稼ぎがなくても、毎日、飯を食わなければ生きていけないし、たまには、酒も飲まなきゃ、心の平常も保てない。週末、土日には、家でも外でも酒はやっぱり飲んでいる。しかし、収入がなくなれば、財布の口を緩めっぱなしとはいかない。

↑JR御徒町駅の先に、朝から営業の銭湯『燕湯』があるのを見つけている。ひとっ風呂入ってからアメ横での一杯は、魅力的なコース。すでに経験済みなのだが、本日は、腹も減りすぎていて余裕もなく、ここに直行して生ビールごくごく。
有楽町で映画を観たからといって、銀座のビアホールやドイツの輸入生ビールを公園レストランのオープンテラスで、飲んではいられない(ついこの前まで、飲んでいたけれど)。
安くてたっぷり飲めて、酔っ払えるホッピーを飲むことが、必然的に多くなった。生活圏である上野駅周辺では、ほとんど酒を飲むことがなかったが、アメ横のど真ん中、山手線などJRのガード下『やきとり文楽』が、お気に入りとなった。

↑線路の並ぶ位置的には、上野東京ラインが真上を走る『文楽』。しかし、山手線でも京浜東北線でも、基本はひっきりなしに上り下りに電車は走り、ガード下全体に響き渡る電車の音で、飲んでいる人々は、いつの間にか叫ぶほどに声を張り上げて連れと盛り上がっている。時には、たまたま隣同士と意気投合してるのも見かける。
古くから有名な焼きトンの『大統領』の向かいの店といえば、だいたい見当がつくだろうか。自身が愛用するオリジナルブランドのジーパンの店『HINOYA』もあるが、近年、昼飲み通りとしても進化をするエリアだ。
もともと、外で飲むのをこよなく愛しているので、アメ横の歩道にはみ出しているビールケース重ねのテーブルに、ググッときた。
だいたい、こんな狭い人通りの多いところで、テーブルひとつ道にはみ出して、通行妨害も甚だしい。けれど、昼間から何を食べて、飲んでるのとチョッピリ羨ましそうに一別というより、ナメるように睨みながら歩き見ていたが一転して、客になったらそんな通行人の目などもろともせず、逆に「いいだろう」と、ニンマリ顔に出てしまうほど、くつろいで飲んでいるのだから自分でも驚く。
店名にある通り、やきとりがメインと思いきや牛もつ煮込みも、牛豚のもつ焼きもある。今まで焼きトン屋に、焼き鳥があるのを何となく嫌っていたのだが、そんなことゴチャゴチャ言ってないで、旨いもの食べて飲みなよって感じで、ここではすっかり心変わりした。

↑こんにゃく、豆腐入りで白味噌系、煮込みの王道の味。かつて、上京したばかりの頃、初めて食べて感動した西荻窪『戎』のモツ煮込みを、彷彿させるといったら、褒めすぎか。

↑ホッピーの焼酎もたっぷりに、濃い目を楽しめる。
最初に食べる牛もつ煮込みは、好みの王道・白味噌系で、こんにゃく、豆腐入りで、ネギがたっぷりかかっている。煮込み時間が足りなかったのか物足りないほど、あっさりの時もあるが、長時間煮込まれたものは、モツの脂もとろけて濃厚だ。
夏の暑い昼下がり、生ビールごくごくから始めてしまったが、その後は、ホッピー1本に、氷入り(焼酎)中3つのパターンで飲み進める。
焼き物は、鳥もも串焼きをからしみそ2本セットと、鳥ナンコツ塩を1本追加する。このからしみそが、強烈に辛い。でも、この激辛が、癖になるようで、辛いのにだんだん付ける量が増えてしまうのが、何とも不思議。
サイドメニューもいろいろあって、塩キャベツは、生のキャベツに塩、ごま油をふりかけたシンプルなもの。本日は、ポテトサラダにすることに。にんにく味噌や、もちろん、タレ焼きもあるが、すでにホッピー1本コースも終わりそうなので、焼き物追加は諦めることにした。

↑入門編として、からしみそにハマっている。辛くてたっぷりのからしみそは、追加の牛豚もつ焼きでも、野菜につけてもいける。

↑シンプルな塩キャベツもいいのだが、追加の焼き物をあきらめたので、ポテトサラダにした。ホッピーに合うんだなぁ、これが。
アメ横の通り、目の前を歩く人々は、見るからに金持ちも、貧乏人もなく、男も女も、老いも若きも子供さえいて、まさにごった煮で、おおむね日本人庶民の見本市だ。それに、外国人観光客が加わり、白人に、アジア系の黄色や茶色、黒人もちらほら、人種のるつぼとなり歩き流れてゆく。当たり前のように隣で、フランス人アベックが、やきとりの串に食らいついていたりするのだ。
何より、店の従業員が、女将さんを除き全員がアジア系の人たちで、暑さに負けずにキビキビと動きはいい。
頭上では、いつも山手線、京浜東北線上野東京ラインも加わって、ゴーゴーと電車が行き交い、食堂や飲み屋だけでなく、食材、衣服、雑貨と、人が集って蠢いている街並みの中で飲んでいると、酒だけでなく喧騒に酔ってくるようだ。
こんなに雑多に人々が行き交う流れの横に身を置いていると、したたかに生きるパワーが感じられて、呆然としながらも心地よくなってくる。
自分は、これからどこに転がってゆくのだろうと数ヶ月考え続けて、何とも思ったようにはいかないと思い始めていた。とはいえ、やみくもに土俵際まで追い込まれてると思い悩む必要もなく、少しは、開き直る気持ちも芽生えくるのだった。(8月21日飲)

↑隣の席が空いたので、チャンスとばかりにテーブルからの写真を撮ってみた。たくさん食べてはいないが、勘定は2千円台の後半、だいたい銀座、日比谷の半分ほどで済んでしまう。旨くて、安いことは、いいことなのだ。蓮の花の最盛期は過ぎているが、まだ、咲いているのもあるだろう、不忍池を散歩してから帰ることにしよう。

別れの昼ビール

高校の同級生、K君が上京して来た。
和歌山県の田舎町にある電気屋さんの2代目で、メーカー主催の販売店全国大会に出席するため東京への2泊3日の予定だった。
もともとは、1泊のイベントだそうだが、前倒しで1日早く来るのでどこか、飲みに連れて行ってくれとの事だった。
すでに10年前ほどに、息子の大学受験に付き添って来て、久しぶりだねと飲んだこともあった。近々では、5,6年ぶりぐらいになるかもしれない。
5月のうちにメールをもらっていたが、指定された日に、自分がどんな予定でいるのか見当がつかない求職中の身だ。カッコ悪い話だが、どうにもそんな状態なので、最優先という訳にはいかないかもしれないよと返事をしていた。
そんな心配の必要もなく、職無しのまま6月の中旬にさしかかり、彼は御茶ノ水に泊まるというので、そのホテルまで出向いて行った。
このブログも読んでいて、思い出横丁『カブト』に興味があるというので、新宿に行くことにした。

↑平日のお昼『日比谷茶廊』が、ランチタイムの“サラメシ”だったとは知らなかった。日曜日とは、がらりと雰囲気が変わるものだが、晴れた日の気持ち良さは同じだ。圧倒的なサラメシ達に囲まれても、気後れせずに旨いドイツ生ビールを飲めるのも、おじさんの証拠かな。
彼の暮らす町は、かなり山側に位置するのだが、紀伊水道の海沿いからいい鮮魚の流通があるそうで、昨夜も何とも旨い“ヨコワ”(近海で捕れる、小型クロまぐろの関西よび名)を食べたそうである。そんな事を言いながらも、うなぎのヒレ串を齧り、川魚の香りがすると満足そうにニンマリとした。
食にはめっぽううるさいが、何でも食べる。こうでなければ、いけない。
K君は、横丁を通りカブトの店内に座ってからもどうも落ち着かない様子で、どうしたのか聞いてみると
「どうにも、無造作に束ねられ黒ずんだ配線やしょう油で煮しまったようなエアコン、タレが固まった電球が、電気屋の目から見たら気になってしかたない」
なるほど、そういえば世代交代した電球傘にも相当に、溶岩のような煤の塊が付着している。
そうか、こいつ電気屋だったなと思い出しながら、彼も相当変なのだ。
電気屋なのに、まったくテレビを見ない。いまだに文学青年、いや、文学中年で、時間があれば読書にいそしんでいる。こちらも本が好きだから、音楽の話も含めて盛り上がるので、それはそれで同じようなものなのだが。
さて次は、同じ思い出横丁地下にある『みのる』で、ハイボールを飲む事にした。
店内が、まさしく昭和の雰囲気のなかで、ジャズが控えめに流れていて
「ここ、ホンマにええな。落ち着くわぁー」
ハイボールが、絶妙の味だと、感想を口にしていた。
その後、少し前に火事のあったゴールデン街にも行っておきたいとの事だったので、喧騒の歌舞伎町を抜けて『ダンさん』へ、顔を出すことにした。
     ☆
3日目は、帰るだけと聞いたので、新幹線に乗る前に昼ビールでもどうかと誘うともちろんと、二つ返事が返って来た。
梅雨空の続く週だったが、週末の金曜日に気持ちよく晴れ渡った。
晴天であれば、迷わず『日比谷茶廊』のオープンテラスで飲むビールは最高だ。
東京駅のコインロッカーに荷物を先に預けてもらってから、有楽町の駅で11時30分に待ち合わせた。その時間からの営業だったので、ぶらぶらと日比谷公園を抜けて行くと、テーブルセットもばっちり整っていた。

アジサイも昨日までの雨で、元気に咲き誇っていた。天気もよくなって、青色が輝いていた。
公園が見える入口のテーブルに陣取って、ドイツ生ビール『エルディンガー・ピカントゥス』の背の高いグラスを2列立ち並べるのだった。
出されたメニューがランチだけで、回りを見ると“サラメシ”タイムの始まりだった。店内一杯に近隣のホワイトカラーのサラリーマンが(官庁関係の人も多いのかも)働く女性達も含めて数多く、昼の憩いの時間を日比谷公園内のレストランのランチを食べながら過ごしているのだ。
片や、入口テーブルで昼ビールを楽しむ、旅行者と職無しのオヤジ2人組。大勢の“サラメシ”達に囲まれて、形勢は不利だが臆する事もないだろう。混み合う前だったらと、強引にお願いした生ハムをつまみに生ビールを飲み、調子に乗ってビールのお代わりをするのだった。

↑お代わりのエビス琥珀生ビール、すっかり調子に乗って、やっぱり大ジョッキー。K君は、ベルギービールも好きなものでと、香り高い白ビールを控えめサイズで。
電気屋のK君に
「よく、親父さんの代から店を潰さずにやって来られたね」と。
「今も楽ではないけど、自分の息子は継がないのはわかったので、後継者を育てるのがこれからの心労だな」
「お土産と言っては何だけど、アメリカ翻訳もので君が知らなかった作家“ポール・オースター”の文庫本、有楽町で待ち合わせの前に買ったので、読んでみてよ」
久しく人に本をプレゼントするなんてしていなかったので、少し気恥ずかしいところだが、彼だからそれほど抵抗もなかった。昔から、これ読め、あれ読めとおせっかいによく言い合っていた仲だ。
帰りの車中を考えて、何か腹に入れておきたいと言うので、それではもう一軒、銀座七丁目『ライオン』に、昼ビールのハシゴとなった。
昭和7年創業の内装をそのまま残している店内に入ると
「なかなか、ええなぁー」と、さらに2人は
別れの昼ビールを、ゆっくりとノドに流し込むのだった。(6月17日飲)

第三の楽園『水元公園』の幸せ

かつて、このブログで『お台場』の“ひとり野外飲み”のススメを書いた。
「お天道様の下で、明るいうちから酒を飲んでどうする」と、いった考え方もあるけれど、休日に景色のよい公園に行き、ピクニック気分で軽く飲むのもいいものだと言いたかったのだ。それに『お台場』といっても、フジテレビやレジャー施設がある方面ではなく、江戸時代に作られた海上要塞の跡地を解放しているレインボーブリッジ近くの公園のこと。
基本的には、思い立ったら、サクッとひとりで出かけるに限る。
荒川区の自宅から、朝、手早くおつまみになるようなものを作り、昼には、眺めのよい所でのんびり腰を下ろせているような手軽さがいい。とは言っても、住宅街の中にぽつんと猫の額のような公園では、ちょっと違う。
『お台場』に行く時は、レインボーブリッジを歩いて渡る散歩コースも楽しく、帰りには、東京のビル群を海上から眺めながらのほろ酔い千鳥足で、さらにいい気分だ。

↑とても、東京都区内とは思えないほどの広い草原と遠くに森林が見える『水元公園』。この辺は奥まっている場所で、草原の周辺をまわるとかなり歩く事になるが、人も少なく気分も上々。
次に『葛西臨海公園』も紹介した。
ファミリーが集う公園で、家族連れと完全にエリアが重なるが、海に突き出た干潟もあり公園全体の敷地も広く、混み合っていても、わずらわしい事もほとんどない。バードウォッチングのコースも、酔い覚ましにちょうどいい散歩になる。
なにせひとりだから、誰に気を使う事もなく自分の気に入った静かな場所で、ぼんやり飲んでいれば良いのだ。
     ☆

↑菖蒲園のエリアでは、5月も末になりたくさんのショウブが咲き始めていた。ショウブにとっては、梅雨の雨が待ち遠しいだろう。
第三の楽園、葛飾区『水元公園』に、最近とくにハマっている。
何度と来ていた公園ではあるが、気候のいい春の連休前後に、あらためて気に入ってしまった。梅雨前の駆け込みで、5月には3回も立て続けに来ている。
先月から、自由な時間が手に入ったのだが(要するに、求職中の身)さすがに、平日に来る事はない。週末と、土日でないと酒は飲まないし「昼酒は、日曜日に限る」と自分で決めている。
ここの公園は、広い駐車場もあるのでマイカーで来る家族連れも多く運転をするパパは、もちろん飲むことができない。バーベキュー場があり、若者達はバスに乗って団体でやって来るが、持ち込む酒類や食品のためか、そのバーベキューエリアから出る事はない。
こちらも電車とバスを使うが、お一人様の飲み食べ物しか持っていないからとても身軽だ。広い園内を散策しつつ、いいポイントを探してまわることができる。
水郷の公園だけに、湿地やゆったりと広い水辺もある。釣り人もたくさんいて、子供達はお父さんと玉網を持ってエビやら小魚をすくっている。
酒だけを飲みに来ているのではなく、そんなアウトドアの風景を楽しみながら野外飲みを満喫している。

↑『メタセコイア』という名の落葉する針葉樹で、スギの仲間。枝ばりがあまり無くまっすぐ上にのびる幹と葉っぱはトゲトゲでなく優しい感じがする。公園内にあるものは現在、高さは20メートル、幹回りが1メートルぐらいだそうだ。

↑ペットボトルに半分水を入れ斜めにして、まず冷凍庫で凍らせる。そこに芋焼酎を入れ、更に冷やしたものは、保冷の袋入りで半日たっても氷も充分に残っている。ボトルの中で、ちゃんと焼酎のロックになっていて、はじめが濃いめで徐々に薄まって来る冷え冷えを楽しめるのだ。左は、春らしくマカロニサラダに空豆入りと、右は商店街の焼き鳥や自家製のロールチキンにプチトマトとブロッコリー添え。
森林の中に点在するテーブル付きベンチに目を付けていたが、人気があるようで、いつも空いている事がなかった。今日は、いいタイミングで確保する。飲み始めるには、まだ早い時間だったが、ベンチに座り森林浴を味わっていたら、別に昼前だっていいじゃないかとゆっくり飲み食べ始めることにした。
針葉樹の木立が、まっすぐ空に向かって伸びていて、風が抜けると木漏れ日もゆれる。

↑ペットボトルの芋焼酎、2本分だが水も半分入っているので、正味は500ml。さすがに昼酒としては、酔いがよくまわった。ただ、2時間かけてゆっくり水と一緒に飲んでいるので、変な酔い方はしない。ベンチに寝転んで見上げたら、空に突き伸びた木々が、とても美しかった。
緑に包まれていると、こんなにゆったりとした気分になれるのか。
もしくは、ペットボトルの冷たい芋焼酎がするするとノドを滑り落ちて、早くも酔いのさざなみがよせて来たのだろうか。
午後になると、日なたはとても暑くなるだろう。(5月29日飲)

↑水辺は、水元公園の水郷らしい風景。藻や水草も多く、きれいな水ではないが、所々でスイレンも可憐に咲いて目を引く。