グラン・トリノ

movie_kid2009-05-06

この映画の何処が、こんなに心ふるわすのだろうと考えたら
物語の結果やそれまでの経過、対処の仕方に
あまり目を奪われないでいた方が良いことに思い至った。
妻に先立たれ、息子達とも心通わす事も出来ず
見るからに孤独にとらわれている偏屈な頑固じいさんが
自分の価値観に凝り固まって、アメリカの象徴のような古き良き時代の
グランド・トリノという名車を心から大事にしていた。
その事が、アメリカという自分の国を純粋に愛している強い気持ちにダブっている。
そんな国粋主義者のような男が、アジアの辺境、ベトナムの一つの民族から移住して来て
二世としてアメリカで生まれた若者に、物語が進むうちに友として受け入れ
そのアメリカを愛する大きな気持ちと同じように、若い彼を大切な友人として愛した。
人を愛する事を、人生の中で何度となく犯してしまう過ちを乗り越えて
まっとうする姿を描く、この映画のエンディングで
名車グランド・トリノを愛する曲が、観客の心に流れ込んでくる。
長年にわたり、役者として演じ監督として映画をアメリカを撮り続けた
クリント・イーストウッドそのものと、主人公の頑固じいさんが見事に重なってくる。
もちろん銃を構えたその姿に、ハリー・キャラハン刑事なり
数えきれないほどのガンマンが見えてくるが、力を力で決着付ける時代ではない事を
軽やかに流れる曲によって何とも、クールに感じさせ
国を愛し、人を愛する事の素晴らしさを、熱い魂で語りかけてくる。
命をかけて貫き通した、男の到達点として
監督であり役者クリント・イーストウッドの行き着いた
集大成とも感じる凄い映画だった。