東京フィル 第718回 サントリー定期シリーズ

指揮:チョン・ミョンフン
マーラー交響曲第9番
今日は一日出張で、しかも提案者の役回りであったので、開放されたときにはすでにくたくたであった・・・帰宅後急いで身支度をしサントリーホールへ。
今日の演目マーラーの9番は実は苦手な曲である。どうも、冗長でつかみどころがなく、陰気な感じがなかなか好きになれない。そんな9番のイメージが、生で聴けばイメージも変わるかもしれないという気持ちで会場へ。
開演前のアナウンスでは「本日は途中休憩がございません」とのこと。なにしろ80分近い曲であるからだが、演奏家たちも大変だなぁ・・という思いをあらためて抱く。
この曲の背景にはマーラーの晩年の暗鬱な人生があるという。愛娘の死、妻の不倫、演奏活動への迫害、自身の病状悪化・・・・その背景を斟酌しつつ聴いたためか、演奏家たちの演奏が直截心に響いたのか、いつもの暗く、長いイメージよりも、このメロディはあらためて聴くときれいだなぁとかの思いを強く抱くことになった。
曲は確かに長い、1楽章だけで25分は人間にどのような影響を与えるかは、周りの聴衆をから理解することが出来た。寝ている人の多いこと・・・zzz、逆に床屋さんでいい気持ちになって寝る気持ちなのかも知れないが・・・
さて、今日の演奏についての感想を言えばチョン・ミョンフンならではの抑揚のある、きりっとしまったまとまりのある演奏であったと思う。特に今回パーカッション陣の演奏が印象に残った。壮大なこの曲が、凡庸に聴こえるか、きりりと締めることができるか、隠し味としてなくてはならないのがパーカッションではないかと思った。この曲においては、一見派手に聴こえる金管郡よりも 要所要所で盛り上げ、インパクトを与え、忍び寄る死の予感を感じさせる打楽器が重要であると思った。特に1楽章、4楽章でシンバルと大太鼓、ティンパニーの与えるイメージが上手く使われていた。木管も良かった。2楽章のおどけた感じ、ワインガルトナーに「死の舞踏」と言わしめたこの楽章はすばらしかった。
演奏の牽引役になっていたホルンは、転がってしまうことがやや多かったように思うが、金管の中でもチューバの音が演奏を引き締めてくれているように力強く感じた。
今日の演奏で9番のイメージも大きく変わった。帰宅後も9番を聴きながら読書・・・なかなかいい曲だな。