読了89 向田邦子『きんぎょの夢』きんぎょの夢 (文春文庫)作者: 向田邦子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1997/08/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (16件) を見る

向田邦子の脚本を小説化した短編3篇。両親を失ったあと親代わりに
おでん屋を営む姉の恋を描く表題作ほかは収集されているが、どれも
向田ワールドで、読んでいくうちに自然と引き込まれていくのはさすが
名脚本家だ。
まさにドラマの展開の上手さが、小説として昇華していると言えよう。
ドラマだったら誰がこの役をやるのだろうかと思いながら読むのも
一驚である。2編目の「母の贈り物」は、コミカルな仕立てで、いま
正に結婚しようとする二人の母たちが子どもたちの知らない生き方を
しているのを描いているが、果たして二人の愛はそれぞれの母の秘密
無しに成就していたかなど、読み終えてしばし考えさせられた。
脚本から小説に世界を広げた向田邦子が飛行機事故に遭ってしまうまで
わずかな時間しかなかったのが悔やまれる。
もっと面白い作品が生まれていたろうに・・・合掌