ゴーストライター

ゴーストライターを使って書いた本といっても、その本の内容のほとんどすべては、間違いなく著者の方の意見であり、見解なのである。

プロ棋士が書いたことになっている定跡書でも、実際にその棋士が全てを書いていることは少ないと言われています。例えば日本将棋連盟から出版されている本は、目次の裏側などの目立たないページに「編集協力」というクレジットが入っていることがあります。私はこれが「ゴーストライター」の役割を果たした人なのだと思っています。

実際には、それぞれの本によってどれくらいの仕事を任されているかは異なるでしょう。ある場合にはただの編集者でしかないかもしれませんし、ある場合には関係のある棋譜を洗いざらい探してきたり不明な変化について他の棋士に質問するようなことをしているかもしれませんし、ある場合には本に載せる変化の細部まで書いているかもしれません。

このように将棋本には、ほとんど全て棋士当人で書いているものから、ほとんど監修しているだけのものまでいろいろあります。よくある誤解に、棋士が自分で書いていないからだめだというものがありますが、上で紹介した文章を読んでいただければ、それが誤りであることに気付いていただけると思います。

将棋の棋士は将棋の強さを競っているわけですから、文章がうまいとは限りません。むしろ文章のうまい棋士は例外的な存在と思った方が良いでしょう。そのような背景を考えると、将棋本を作る上で編集者の役割は非常に大きなものになると言えます。文章や構成に関わることはもちろん、個々の手順などをより洗練されたものにする上で、編集者が有能かどうかは読者にはっきりと伝わります。

現在最も有名な将棋本編集者は浅川書房浅川浩氏です。一つのブランドを作り上げつつあると言って良いでしょう。著者と編集者の力が組合わさって調和が取れていることが、名著の条件だと思います。