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2010-03-05 トンカツ論 第1章 モラルとルール

「むつみ」という前世紀から現在に至るまで、最高峰のトンカツ店が京王線の千歳烏山にある。僕は22年前、その「むつみ」の裏手に住んでおり、当時から引っ越した今現在まで、とにかく良く通っている。


トンカツは食べ方にマナーがある。

さらに食べ進む中での順序や不公平感のある減り方があってはならない。それはトンカツを食べる者としての矜持として頂きたい。

でもこれは僕の中だけでのモラルとルールであるが、それを無視した者には、例えそれが政治家だろうと、マフィアだろうと許す事はない。


まずはマナーだが、主役であるトンカツを右端から食べるのか左端から食べるのか、はてまた1番大きく立派な真ん中から食べるかという事を決めなければならない。

なぜなら、店の巨匠は1番美味しいど真ん中の一切れを食べる時間によって余熱の時間を変えているからである。端から食べる人間には余熱の時間を短くして、端から食べて真ん中に行き着く時間をも計算されているからだ。まずはそのトンカツに対してのどういうスタートを切るかという生き様を明確にすべきだ。


本当に美味しいトンカツ店は、ソースをかけない方が良いと僕は信じている。当然名店であればあるほどそのソースへの恐ろしい程のこだわりがあるのはもちろん知っている。

だが、本当に豚肉の質や美味さを知るには、塩で充分である。それが1番肉の旨味を知る事が出来る。その次は醤油である。しかし醤油はかけ過ぎるのは禁物である。

7切れあったら、塩3、醤油3、そしてソース1のバランスにこだわりたい。トンカツが出来上がって出された瞬間にソースをジャバジャバかける輩がいるが、見てるこっちがヒヤヒヤする。

今回は食べ方の一例を紹介しておこう。

最初にトンカツの一切れを食べる事は店主に対しての挑戦と受け取られかねないのでお薦めはしない。どんなに飢餓状態でも、豚汁で口を湿らせよう。冷静でないと豚肉の味はわからないものである。そしてカツを軽く一口頂こう。溢れる肉の旨味を味わったら軽くご飯を食べて心も落ちつかせ、口の中を再びモノトーンにしておく必要がある。そのあとはキャベツを頂き、春キャベツであれば切り方が細いかどうか等を確認する事は必須である。キャベツは侮ってはいけない。若さ、あるいは飢餓状態でどうしてもご飯をおかわりしようと企んでいるのなら、一杯目のご飯で7切れのトンカツの4切れ目までは食べておこう。その1番美味しいとされている一切れは前半戦に堪能する事を勧める。難しいのが食べ終わり方である。最後の一口がキャベツでない事は確かである。最後がトンカツであるべきか、ご飯であるべきか、さらには豚汁の汁なのか。絶品のトンカツの味を口の中に残しておきたい気持ちはわかる。だが、その芸術品を自ら何らかの物で蓋をする事が紳士的だと信じている。だとすると、ご飯か豚汁となる。豚汁と過程すると、やはり無理に押し込むモラルのなさを露呈する気もする。やはりご飯か。そこにお漬け物と一緒に最後のご飯で蓋をする、これが最も紳士的で知的でトンカツへの愛情を表現した終わり方ではないだろうか。

MHMH 2010/03/06 18:03 こんにちは、山本先生。
先生のトンカツの奥義、しかと噛みしめました。
ここで1点、質問がございます。
トンカツをどこからいただきはじめるかということは、客のほうで自由に決めてよいのでしょうか。
『店の巨匠は1番美味しいど真ん中の一切れを食べる時間によって余熱の時間を変えている』とありますが、そのお店の巨匠は客がどこから食べ始めるかを、あらかじめ聞いてくださるのでしょうか?
だとしたら、素晴らしいの一語に尽きます。が、いずれにしても、端から食べるとすれば、右からでも左からでも、真ん中にいきつく時間は同じですから、要は真ん中から食すか端から食すかの違いということになりますでしょうか。
ハシからということであれば、箸遣い(←ハシちがいではありません。ハシづかい。念のため)のマナーからいけば、基本的には右からということになりますね(左利きの人は左でも?)。これがナイフとフォークなら左からとなりますが、しかし、ナイフとフォークなんぞは、トンカツ道においてはやはり邪道でしょうか。

本当においしいトンカツ、また油やコロモもいいものを使っているなら、私の場合、塩すらなしでいただいてしまっています。油とコロモの香ばしさがお肉の芳醇なうまみを引きたて、口の中でとけていきます。が、それでもよいでしょうか?
トンカツもそうですが、タネの新鮮な天ぷらなら、天つゆなどつけないほうがおいしいですよね。天ぷらは塩をつけながらつまむのが通、と以前にきいたことがありますが、本当にいいタネと油を使っているものなら、塩さえもいらないくらい。

「最後のご飯で蓋」も、な、なんと、奥深いこと・・・。
これぞ「御馳走様」の究極の流儀、店の巨匠には無論のこと、命を捧げてくれた豚氏にも、礼を失することなく、さらには深謝の念を。

山本先生の第2章、第3章の御連載の続きを愉しみにいたして居ります。
MH拝

うなぎうなぎ 2010/03/06 21:29 むつみのとんかつの事を書かれては黙っている訳にはいかんだろう。

あそこのとんかつはヒロヤスに連れて行ってもらってからすっかり虜になってしまった!
他にもおいしいとんかつ屋が数多くあるだろうが、とんかつが美味しいのはもちろんの事、お店の規模(8名がやっと)やカウンター越しに調理が見られる事、そして何と言ってもマスターのあのキャラ!
それら全てがあのとんかつを生み出しているのだと思うし
私が神奈川に住んでいながらわざわざ高速飛ばして食べに行きたくなる事でお解りいただけるだろう。

僕のこだわりはヒロヤスの言う塩や醤油でいただくのはもちろんの事。とんかつ、キャベツ、豚汁すべて食した後一口だけご飯を残しておき、そこにお茶を注ぎ、残った漬け物と一緒にサラサラといただく!
この瞬間今食べたトンカツが走馬灯のように蘇ってくる至福のひととき。

今日も音楽堂でハードな本番だったが、こんな時食べたくなるよね!
来週は定期の練習&本番だからまた行こうかな!

mp-yamamotohiroyasump-yamamotohiroyasu 2010/03/07 00:05 MHさん こんばんは
お答えいたします。もちろん、客の方で端からか、真ん中からかを選択して頂いて結構です(と、僕がその店主ではないのですが)。それを見て、店主は2度目から余熱の調節をして出してくれます。なので、1回目の来店の時はその限りではありません。
その左右についてですが、次の講義で論じたいと思っております。この店でのナイフとフォークの使用は不可能かと。この店のお肉は190グラムありまして、カトレータ・アラ・ミラネーゼ、やウィンナーシュニッツェルの様に薄くなく、箸でしか食せないかなと思います。
そのコロモについても後ほど論じさせて頂きたく思います。そうなんです。その豚様には毎回感謝させて頂きます。次回を楽しみにして頂きたいと思います。
お仕事お忙しいとは思いますが、この乱高下する気温に体調など崩されないよう。

mp-yamamotohiroyasump-yamamotohiroyasu 2010/03/07 00:11 うなぎさん こんばんは
今日は大変なプログラム、お疲れさまでした。しっかり聴かせて頂きました。
うなぎさんもあの店の虜ですからね。しかも東名高速を飛ばして食べに来るとは本当のファンですね。
お茶漬けにしてさらさらと頂き蓋をするとはまた風流で粋なドアの閉め方をなさるな。さすがだな。その蓋をすると次回を想像してしまうんですよね。
先日行って、店でいきなり会ったときはびっくりしましたよ。では定期のリハーサルでお会いしましょう。

yumiyumi 2010/03/07 00:46 そりゃもう、塩ですよ。おいしいトンカツは。ああ、食べたい。うなぎさんのお茶漬け締めも魅力的。

今日はグレイトいかがでしたでしょう。聖響さんは大満足!のご様子、ツイッターで読みました。

mp-yamamotohiroyasump-yamamotohiroyasu 2010/03/07 01:30 yumiさん こんばんは
塩で食すのはたまりません。新宿にトンカツ茶漬けのお店があり、何故か意外にも美味しいのですが、これは一つの違う食べ物ですからね。
日本全国の方にここのロースを一度でいいから食べて頂きたいのです。食べ物は個人の好みですから押し付ける事は出来ませんが、もしここより美味しい所があるという事なら、その時のお代は僕が支払いますと言いたいぐらいなんです。