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2008-04-11

[][][]トビのばか 大阪京都死闘篇その4

誰かの携帯電話の目覚ましで目が覚める。関係ないこちらは起きて悶々としているのに、鳴らしている本人はなかなか起きない。近所のおっちゃん達の声も聞こえる。おはようさん、きいつけてな。カーテンを閉めた暗い部屋、壁の隙間、屋根の隙間から朝の日が差し込む。その隙間から、外の声も、中の声もよく聞こえる。この宿は味があるを通り越して、本当に古い。

宿の前の道、鞍馬口通を歩き、賀茂川に架かる出雲路橋を渡ると、下鴨神社に出た。今回の旅は、個展のため、大阪京都銭湯に入るため、路地を歩き尽くすためのもので、神社仏閣観光名所などは一切予定に入っていない。でもせっかくの通り道なので覗いてみる。木が大きい。小さな祠がたくさんある。立派なお社もたくさんある。ありすぎて何が何やら解らない。やはり、こうゆう場所は下調べが必要か。たぶんメインはここだろうという場所でお参りする。十二支別のお社もあったので、「亥」のところを探してお参りする。こうゆう場所ではいつも、世界平和を祈るのだけれど、叶った試しがない。

神社を出てしばらく歩くと高野川にぶつかる。川沿いを歩く。晴れて気持ちがいい。川沿いの桜も散りかけだけれど、とてもきれい。菜の花も春らしくていい。高野川を北上し、蓼倉橋を渡り、恵文社一条寺店を目指す。久しぶりの恵文社。店の中をうろうろしているだけで、楽しくなってくる。個展のチラシを置いてもらう。昨夜会ったHITOさんに教えてもらった恵文社そばのおいしいパン屋で全粒粉のパンを買う。かじりながら、また歩く。固くて噛めば噛むほどなパンは好きだ。あごが疲れるけれど、うまい。百万遍まで歩き、歩き疲れたので進々堂でお茶をする。マフィンとサラダとコーヒーのセット、プチ・デ・ジュネを注文する。普通なのに、うまい、のは何故なんだろう。さてここからどこへ行くか、予定を考える。行きたい銭湯、その営業時間、自分が京都にいられる時間、行きたい飲み屋、その他もろもろを良く考える。行きたい銭湯はどれも夕方からしか営業していない。ならばそれまで町を歩くしかない。

京大横の裏道を歩き、鴨川を歩き、荒神橋そばのパン屋に寄る。ここもHITOさんがおいしいと教えてくれたところ。ベーグルと、レモンクリームと生クリームをはさんだ食パンみたいなやつ、を買う。鴨川に戻り、ベンチに座りながらパンを食べる。おいしい。特にこのレモンと生クリームのやつ、とパクパク食べていたら、パンを持つ右手と顔に衝撃が走った。なんだ、と見るとさっきから空を舞っているでっかいトビで、パンは取られなかったけれど、指から血が出でいる。く、く、く、くそー。あっちで弁当広げているおばちゃん達でなく、なんで私なんだ。やっぱり東から出てきた田舎もんだと思われたのだろうか。こいつは京都人ではないと、オーラが出ていたのだろうか。トビのばかやろう。指が痛い。座っているとまた襲われそうなので、めげずに歩く。川沿いに「トビに注意、怪我した人もいます」の立て看板。遅いよ。

錦市場から横道に入ってすぐの銭湯「錦湯」へ。木造の外から見ると三階建てに見える、京都らしい銭湯。すだれがまたいい。引き戸を開けると、カーテンがぺらっと1枚下がっていて、その奥はすぐに脱衣所になっている。大らかでよい。ロッカーも木で、ロッカーの1つ1つに、編んだ籠が入っている。籠を引き出し、そこに服を入れ、またロッカーにしまって鍵をかける。そんな仕組み。ここも木製の古いオシメ替え台が並んでいる。湯船は、水、深め、浅め、電気、バスクリンとあった。水風呂はライオンの口から水が出る仕掛けになったいた。

とある飲み屋に行く。ここは池袋のかえる食堂で会った、京都で修行したという超高級日本料理屋のおじさんに教えてもらった、安くておいしいという赤ちょうちん。見かけはよくある町の赤ちょうちんだけれど、外から中が全く見えない。値段もどこにも書いていない。でもここまで来たら入るしかないでしょ、とがらっと引き戸を開ける。目の前のカウンターに座るのは60前後のおじ様たちばかり。さすがに、ちょっとひるむ。大丈夫、私もおっさんだから、とよく解らない言葉で自分を鼓舞し、カウンターの端っこに空いていた席に着く。お店の人たちは、おじさん2人、若い人2人。みんなテキパキ愛想よく仕事している。瓶ビールを頼む。目の前にその日のお品書きが置かれる。値段が書いていない。さっき、お金おろしたばかりだし、たぶん、なんとかなる、と思う。お品書きを熟読する。達筆の墨で書かれていて、読めない字もある。万願寺青とう、さわらの味噌焼き、を頼む。突き出しは、切干大根ビールを飲み、切干大根を一口食べる。うまい。東京の甘じょっぱい切干とは大違い、ダシが効いていて、今まで食べてきたものとは別物のうまさ。青とう、焼いて鰹節としょう油がかかっている。これも、うまい。さわらの味噌焼き、文句なくめちゃくちゃうまい。こうなったら大好きな合鴨のスモークも頼んでしまおう。んまーい。ここでこのまま飲んだくれていたいけれど、今日はこれからまだ行きたい銭湯がある。ので、これでお会計してもらう。2700円。あのボリュームで、あの質で、この値段。文句なくこの旅行1番のお店だと思う。またここは必ず行く。今度はここで死ぬまで食べて飲む。心に誓う。

白川通沿いのガケ書房を目指して歩く。途中、こんもりした森に行く手を阻まれる。吉田神社。近道しようと思ったのに、結局回り道になる。ガケ書房も久しぶり。店内をじっくり眺め、個展のチラシを置いてもらう。今日、最後の銭湯はこのガケ書房から歩いてすぐの「白河温泉」。石造りの古い銭湯。入り口の引き戸を開けると、やはりカーテンがぴらっと1枚さがっているだけ。そう言えば、錦湯もここ白河温泉も、男湯と女湯の間、東京なら木戸があるところを、カーテン1枚でぺらっと仕切られている。そのカーテンのところに、おじちゃんか、おばちゃんが、椅子を出して店番している。京都の古い銭湯はみんなこうなのだろうか。大阪でも京都でも、湯船の手すりは墓石のようなつるつるグレーの石だったけれど、ここ白河温泉だけは、湯船の中は水色の小さな正方形のタイル、手すりは小さな長方形の赤茶色のタイルだった。備長炭、浅め、深め、水、と今まで入ってきた関西の銭湯の中で1番湯船の数が少ない。浅めの湯船は、水深30センチくらいしかない。どこを見ても古いまま、ちゃんと残ってる銭湯。改装されてしまう銭湯が多い中で、こうゆう風呂屋はとても貴重だ。今度は昼間明るいうちに入りにこよう。

この白川通りから、お宿がある船岡公園の辺りまで、銭湯でぐったりした体にはちょっと遠い。でも、歩くのだ。もやしもん、を読んで寝る。