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2008-04-13

[][][]銭湯の縁 大阪京都死闘篇その6

歩き疲れては 草にうもれて 寝たのです 歩き疲れ 寝たのですが 眠れないのです

昨夜、大阪鶴橋から、京都の安宿に戻って来たのが、深夜12時過ぎ。1階では相変わらず宴会をしている。疲れ果て、2段ベットにもぐりこむが、宴会の声が耳について眠れない。結局、眠れたのは明け方の2〜3時間。7時過ぎに何かで目が覚めると、下では昨夜の宴会がまだ続いている。そのまま朝ご飯を食べ、ちゃんと音楽をかけながらラジオ体操までしている。そしてその音が、2階の2段ベットで寝ている私の耳にみんな聞こえてくる。みんな、どうしてそんなにタフなのだ。

この安宿に泊まっているのは、20歳前後の人たちばかり。三十路の女なんて、たぶん私1人だろう。静かに寝たければ、それなりの金を出して、それなりの宿に泊まればいいのだ。楽しめ、この状況を。

楽しんでいる、というか全く苦にしていない人もいる。三十路の女は私1人と書いたが、60歳くらいの白髪のおじさんが1人、ずっと宿泊している。いつも開けっ放しの男部屋には、2段ベットもあるけれど、畳敷きのスペースもある。その畳の上の布団で、上半身を起こしハードカバーの本を読んでいるか、もぐりこんで寝ているかしている、この人。壁のハンガーには、かなりモノがいい、ジャケットと白いシャツ。影でこっそり「教授」と呼ぶ。教授また本読んでいる、このイビキは教授か、などと声に出さずに頭で囁く。朝早く出かけ夜遅く帰ってくる私は、結局この教授が布団から出た姿を見ていない。

昨夜風呂に行けなかったので、日曜は朝8時から営業している宿の目の前の銭湯船岡温泉」へ行く。毎日、男湯と女湯が入れ替わるので、前回来たときは右が女湯、そして今日は左が女湯になっている。結局どちらも入れてとてもうれしい。左側の方が浴室が広い。入り組んだ浴室内部、奥の奥に洗い場があったり、天井がスリガラスのところがあったり。朝の光がさんさんと降り注ぐ中での入浴は、本当に気持ちがいい。寝不足の疲れた体に湯が染みていく。

宿に戻ると、出る前に洗濯機に放り込んでおいた洗濯物が、乾燥機に移されている。この宿の人は、本当に面倒見がいい。昨夜から飲みつづけているにーちゃんの1人が「11時頃にお祭が通るよ。」と教えてくれる。横笛の音、太鼓の音が遠くで聞こえている。ゆっくり町内を周り、宿の前を通ったのは結局12時くらいか。赤い大きな番傘と、その周りで楽器を奏でる子供たち。宿のみんなでぼーっと見ていると「傘の下に入るとご利益があるよ。」とお祭の人たちに声をかけられる。慌ててみんなで傘の下に入る。宿の前を通ったのも一瞬、傘の下に入ったのも一瞬。そのままお祭の列は、また路地に消えていく。あのお祭はなんだったのか、あの傘には何のご利益があるのか、結局よくわからない。

3泊したこの安宿を後にする。1階でごろごろしているみんなが、手を振ってくれる。わらび餅を一切れもらう。

宿から歩いて数分のところに、目をつけていたカフェがある。あまりカフェなどには縁がないのだが、ここは別。大正時代の元銭湯「藤森湯」を改装して出来たお店なのだ。しかも「船岡温泉」とは姉妹店だったらしく、豪華なマジョリカタイルがこれでもかと壁に使われている。美しい。このタイルに囲まれながら、昼飯を食べる。

四条まで散歩して、京阪大阪北浜まで。いつものようにアーケードを抜け、中崎町cocoaさんに寄る。cocoaさんと握手をして、またの再会を誓う。こないだ銭湯の鍵を買った古道具屋さんにも寄る。前回来た時にはなかった、銭湯の木製の下足札が出ている。悩んだ末に、これも買う。古道具屋のご主人と話していると、この銭湯グッズたちは、あの子どもを拾った日にさ迷っていた、中津の町で見た解体していた銭湯のものと知る。そしてあの銭湯は「新大淀温泉」という名前だったと教えてもらう。これはもう、運命だろう。1人感動していると「のれん、とか興味あります?」とご主人が言う。まだ洗濯もしていないので、とダンボールから出てきた、新大淀温泉で使われていたのれんの数々。うぉー。かわいい。春夏秋冬、のれんは季節ごとに替えるようで、四季それぞれの絵柄、しかもお正月は福助がぺこりとしているのれんで、もうどれもいい。福助は高いです、と言われ、モザイクのような花が散っている紺色ののれんを1枚買う。たぶん、この値段は、格安だろう。洗濯していないから、と言っていたけれど、変な銭湯話に興奮しているねーちゃんを不憫に思ってマケてくれたんだと思う。古道具屋さん、どうもありがとう。そして、さらに大阪銭湯情報を聞く。「美章園温泉」という名銭湯が潰れてしまったこと、十三に大阪で1番古い銭湯が残っているらしいこと。重ね重ねありがとうございます。

夜はiTohenでOraNoaさんのライブを聴く。美人だ。桜の花が床に散らばる中、静かな歌が流れ出す。ビールを飲みながら聞く。

iTohenさんたちと、ライブに来ていたみんなと、OraNoaさんと、私で打ち上げに行く。まだお好み焼きを食べていない、という私のワガママを聞いていただき、近くのお好み焼き屋さんに行く。今日はこの旅行最後の夜。そんなに飲んでいないのに、いつもより酔いが早い。楽しい時間はあっという間、たらふく食べてお開きになる。大阪の絵描き人・原君に今日予約しているビジネスホテルまで送ってもらう。原君、どうもありがとう。君がいなかったら、酔った私はまた川を越えてよく解らない町まで歩いてしまうところでした。

さすがに最後は疲れているだろうと、奮発して予約したビジネスホテル。奮発したと言っても1泊5000円もしないのだ。それでも、ここ連日の安宿経験者には天国のよう。静かだ。墜落するように、眠りに落ちる。