m.r.factory

2009-04-06

[][]お花見日より

昼前、某所で某を見て、これはいかん、と古書往来座に駆け込み、ひとり店番をする某瀬戸さんに無理を言って、しばし店番を代わり、某してもらう。某瀬戸さん、どうもありが某。

某したことですっかり気分がよくなり、電車に乗って花見にでかける。新宿で降り、途中弁当を買って、新宿御苑へ行く。お気に入りの場所は、新宿門から入って右手にある「母と子の森」。人が少なく、整備され過ぎていない、野趣溢れる雰囲気が気に入っている。ここの桜は背が高い。風で落ちてくる花びらを眼で追い、はじめて桜の下にいることに気づく。地べたすれすれまで枝を伸ばす桜も好きだけれど、山桜のように空に近い場所で咲く桜も好きだ。ベンチに座り弁当を食べる。目の前に流れる小川の向こう岸に黒猫がいる。何度か目をぱちくりしながら、弁当を食べるこちらをじっと見ている。おいでと呼んでも見ているだけ。しばらくすると後ろの藪に消えていく。もしかしてこのベンチは君の指定席でしたか。すまないことをした。芝生広場に移動して、桜の下の芝生に寝転がる。いろんな人たちがいて、桜をバックに写真を撮っている。撮ってもらえませんか。撮りましょうか。女の子の2人連れのカメラを受け取り、桜の前で微笑む2人の姿を撮る。楽しそうな人たちの、うれしそうな瞬間を撮るのが好きだ。できれば全てのグループ、全ての家族連れに声をかけて、写真を撮って周りたいくらいに。

大木戸門から出て、四谷を目指して新宿通りを歩く。四谷の少し手前を右折して細い道をしばらく歩くと銭湯「若葉湯」がある。のれんをくぐると下足場があり、左手の女湯の木戸を開けると通路があり右側に小さな箱のような番台がある。番台で450円払いその先の木戸を開けてやっと脱衣所に入る。脱衣所の天井は傾斜しており木の梁が見えている。山小屋のような印象だ。洗い場に入ると、正面の壁のモザイク画が目に入る。1センチ四方の小さなタイルで、逆立ちしているピエロ、馬に乗るお姫さまなのか騎士なのかピエロなのかよくわからない人、が描かれている。タイルの柔らかい優しい色使いがかわいらしい。その下の湯船は、ジェット付きの大きめの湯船、深めの小さめの湯船、の2つ。どちらもこれでもかと言うほど熱い。水をじゃばじゃばと入れて、ゆっくり足から体を沈めていく。湯につかりながらあちこち見回す。どこがどうと言えないが、やはり山小屋風だなと思う。銭湯の外にあるベンチに座り、ほてった体を少し冷やす。缶ビールを買い、歩きながらぐびぐびと飲む。うまい。銭湯のあとのビールはなぜこんなにうまいのか。

四谷まで歩き、外濠公園を飯田橋まで歩く。眼下には中央線とその向こうに江戸城の外濠が見える。お濠沿いには桜が植えられ、上を向いても下を向いても桜だらけの公園だ。ビニールシートを敷き、近くの大学のサークルが大宴会をしている。20代の頃は大学生の集まりを見ると、うるさい、暑苦しい、じゃま、と邪険にしていたのに、30代も半ばを越えると、ただただ若いなぁ、と静かに見つめることができる。さり気無さを装いながらも思いっきり口説いている君、がんばれ。口説かれながらも目は他の男を見ている君、がんばれ。桜なんか全く見ていない君たちにも幸多かれ。

飯田橋の手前を右に折れ、靖国神社を通り過ぎ、千鳥が淵公園に行く。ライトアップされた夜桜が有名なこの場所。毎年見に来ているが、今年はなんだか雰囲気が違う。公園が整備されたからか、ライトがLEDになったからか、なんだか桜が薄っぺらく見える。はじめてここの夜桜を見に来たのは、たぶん10代の終わりの頃。そのとき見た桜はこの世のものとは思えないくらい美しかった。20年経てば桜も老いるのか、それとも私が老いただけなのか。靖国神社の桜と縁日を冷やかしながら家路に着く。