m.r.factory

2009-06-21

[][][]先走りじゃない仙台4日目

昨晩買っておいた朝飯を食べる。ヨーグルトバナナ、パンにお茶。畳んだ布団に寄りかかりながらもぐもぐと食べる。食べているうちに目が覚めてくる。リコシェの豆ちゃんが、名前通りのマメさで、風呂場の排水溝に絡まる陰毛掃除をしている。この誰が誰だかわからない陰毛をU-SEN君のお土産に、タイトルは男女七人夏物語で、と朝とは思えない話題で盛り上がるが、陰毛はいつの間にか捨てられている。窓の外、昨晩遅く降り出した雨がまだ降り続いている。

今日の火星の庭の設営は雨シフトでおこなわれる。外に半分出し、店内にも半分出す。雨の2日目とあってお客さんの姿は少ない。

昼にはピザを食いに行く。メディアテーク向いの前野さんお薦めのピザ屋。マルゲリータとサラダ風マリナーラ、そして生ビール。チーズも生地もトマトソースも何もかもがうまい。そして塩とオイルの効き方が絶妙で唸る。今まで食べてきたものはいったい、とこの言葉、仙台に来てから何度つぶやいたことか。

火星の庭に戻り、店番をする。瀬戸さんと王子は、ブラザー軒、を見に行くという。ブラザー軒は、東一番丁に古くからある洋食屋で、宮城県出身詩人菅原克己が詩に書き、高田渡が唄にしたことで知られている。

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そのブラザー軒は、火星の庭から歩いて10分くらいの場所にある。

東一番丁、ブラザー軒
硝子簾がキラキラ波うち、
あたりいちめん 
氷を噛む音。

ブラザー軒でお茶をしてきた瀬戸さんと王子が戻ってくる。ブラザー軒のマッチをお土産にもらう。黄土色の地に、茶色の文字で「BROTHER KEN」と書いてある、普通のマッチをもらう。

王子と一番町の本にゃら堂そばにある銭湯「かしわ湯」へ行く。途中、ブラザー軒の前を通る。コンクリートの大きなビルで、壁面にはツタが絡まっている。このブラザー軒は、菅原克己が詩に書いたブラザー軒とは違う。キラキラ波うつ硝子簾もない。それでも、菅原克己の詩を読み、高田渡の唄を聞き、いいなと思ったとき、訪ねる場所があるのは素敵なことだと思う。

本にゃら堂の正面の路地を入る。魚屋の向いのビルの地下1階に銭湯「かしわ湯」はある。看板は出ているが、入るのを躊躇する入り口。ビルの地下に降りていく普通の階段。階段を降りきると、男湯、女湯、と分かれた普通のドアがある。右手の女湯のドアを開ける。番台があり、すぐ脱衣所がある。ドアを開ける瞬間、外から脱衣所が丸見えなのだが、そんなことは誰も気にしていない。小さな脱衣所に木のロッカーは20個ある。冬の厚着を仕舞うためか、ロッカーのサイズは東京よりも大きい。正面のガラス戸を開け、洗い場に入る。洗い場も小さく、カランの数は7つしかない。カランは左手から「く」の字型に並び、右手の大きな湯船にぶつかる。湯船は鉄の棒で大きめと小さめに区切られている。小さめの湯船には、とにかく何にでも効くらしい、脅威の鉱石ブラックシリカ、が入っている。湯船の上の壁面には、どこかの海の絵のタイル絵が貼られている。カランの色は赤と青で普通だが、それぞれが三角形なのは珍しい。湯と水のカランの場所が離れており、押すと中央に置いた桶に向かって斜めに水が出るのが面白い。桶は、黄色に赤い文字が浮かび、ケロリンかとよくよく見れば、赤い文字で、男のカツラ、と書かれていた。地下のはずなのに正面には大きなガラス窓がある。この窓からは光は入らず、天井には体育館で使うような大きな照明がひとつ付いている。

番台に座るおば様に話を聞く。かしわ湯は創業65年で、このビルになってからは40年経つ。地下水を汲み上げ、ボイラーで沸かしている。女湯のタイル絵は美保の松原で、男湯のタイル絵は頭に雪をかぶった富士山だという。男湯のほうが、タイルも洗い場も立派らしい。東京から来ました、と言うと、東京銭湯は立派でしょ、と何度も言われる。

階段を上がると1階のベンチで王子が待っている。コンビニ缶チューハイを買い、飲みながら火星の庭まで歩く。飲むとどうしてややこしい話がしたくなるんでしょうね、と王子が聞く。そう言えばどうしてだろうね、と考える。魚雷さんが「わめぞ」に王子を連れてきたのは昨年の5月。その1年後に「わめふり」が出て、そこに文章を書かせてもらえたことがとてもうれしかった、と王子が言う。

火星の庭に戻る。古本縁日は5時で終了。撤収作業に入る。本をまとめて車に積んでいく。車組みは、これから5時間の道のりを東京まで帰っていく。ブルゴーニュ岡島さんが、締めの挨拶をする。この旅行中、浮かれまくるわめぞ民の中で、唯一冷静さを保っていたのがこの人だ。面倒な仕事を黙々とこなし、いつものわめぞ古本市として成り立たせていた。どこにいてもブルはブルで、そんなところが格好いいと思う。

全員集合の記念写真を撮って、車組みは東京へ帰って行く。新幹線組みはまだ時間があるので、駅前の炉辺焼き屋へ行く。まだ食うのか、まだ飲むのか、と言われれば、まだ食うしまだ飲むのだ。新幹線組みと、前野さんちにもう1泊する魚雷さんと、前野さん一家で、テーブルを囲む。トロのような鮪の赤身も、ずんだチーズも、もう何を食べても美味いものは美味い。

健一さんに、ムトーさん来週は来ないんですか、と真顔で聞かれる。先走りの5月から本番の6月まで、前野さん、健一さん、メグたんには、迷惑しかかけてない。家に押しかけ、飯を食い、酒を飲み散らかし。それなのにそんな言葉を言ってもらえるとは、とまた口がぱくぱくする。この数日間、絵の展示、古本市、連日の打ち上げ、と疲れてないはずはないのに、前野さんも健一さんも、ずっと笑っていた。

9時40分発の新幹線に乗り、仙台を離れる。横に座るAさんが、仕事じゃない旅行に行くのは久しぶりだったありがとう、とうれしそうに言う。Aさんだけじゃなく、北海道のOさんも、東京堂の畠中さんも、晶文社のTさんも、コウノちゃんも、わめぞをキッカケにふらりと仙台まで遊びに来てくれた。こちらこそ、ありがとう。

仙台の皆さま、どうもありがとう。マゼランさん、どうもありがとう。火星の庭の前野さん健一さんメグたん、本当にどうもありがとう。「古本縁日 in 仙台」終了しました。